APS2は本当に昔から持っている銃なんですが、近年東京マルイのVSR10がボルトアクションのスタンダードになってしまい、APS2のパーツはどんどん入手困難になってきています。そんな中10年以上かけて漸く完成形にかなり近づいたと思えるAPS2を今回はしみじみと語って見たいと思います。
APSシリーズはマルゼンの精密射撃用途に特化した製品で、ご存じの通り命中精度とは無縁なマルゼンですが、特にAPS2は豊富なカスタムパーツのおかげで誰でも簡単にカスタマイズで精度を上げることができる、銃をいじる喜びを感じさせてくれる製品です。APS1はピストルで、発売当初はガバみたいな形をしていたらしい(不思議なことに僕は全く記憶にない)ですが、最終的にヘンメリーなどに見られる競技用エアピストルのような形になっており、普通のガンマニアには全く見向きのされない製品でした。その流れで言えばライフルのAPS2もアンシュッツやファインベルクバウといったエアライフルを模すのかと思いきや、ステアーSSG69というマイナーな狙撃銃のストックやボルトエンドを持つ普通のボルトアクションライフルでした。おかげでガンマニアにもよく受け入れられ、サバイバルゲームから射撃競技まで幅広く使用されるマスターピースになりました。15年近く続いたAPS2の天下も東京マルイが発売したVSR10に徐々にシェアを奪われ、現在は風前の灯火のような状態です。
APS2は発売当初は精密射撃のみをターゲットにしていたため当然ながらノンホップでしたが、サバイバルゲームに使用するユーザーからの声に応えて固定ホップを搭載しバレルを切り詰めたAPS2-SVが発売され、さらにその後、木製ストックになったマーク2やスポーターが発売されました。L96を模したAPS2-Type96やピストルグリップのSR2といった派生製品も登場しています。
そもそも最初にAPS2を購入したのはおそらく99年頃、行きつけのガンショップで強化スプリングやステンレスシリンダを組み込んだショップカスタムのAPS2-SV(スナイパーバージョン)でした。当時はエアコッキングのボルトアクションはタカトクSS9000の末裔であるマルコシのスーパー9からマルゼンのAPS2に世代交代が完了して暫く経っており、APS2のパーツ市場も成熟しつつある頃でした。
購入した当初はスコープで狙ったところに当たる快感に酔いしれていましたが、もっとグルーピングをタイトにしたい、と思い始めたのが長い長い旅路の始まりだったのです。カスタムパーツの構成は電動ガンのカスタムに明け暮れていた頃に何故か気に入っていたライラクスで揃えており、エアロチェンバーとPSG-1用の6.03mmバレルという組み合わせで、スプリングガイドやピストンもライラクス製になっています。チェンバーパッキンはPDI製のWホールドパッキンでシリンダは購入時のショップカスタムから変更していないので、メーカー名等不明ですが、ステンレス製の綺麗なシリンダです。アウターバレルはたぶんKM企画製だと思われるORサイズのものになっています。
今回はスポーターの後継でありながら、既に製造終了しているウッドストックバージョンの可変ホップモデルを新規購入しました。何故かというと、木製ストックが欲しかったからに他なりません。APS2のカスタムパーツはどんどん入手不可能になっており、かつていろいろあったサードパーティ製ストックはもはや全滅です。このウッドストックバージョンも市場から消えてしまえば、今後木製ストックの入手は絶望的になるかもしれないと思ったわけです。付属の木製ストックと引きやすい形のコッキングハンドルを10年来のカスタムアクションに移植したのが一番上の写真。
スコープはちょっと悩んで、マルイ製ショートズームスコープにしてみました。所詮20m以下の射撃しかしないエアガンで実銃用の10x以上のズームは不要だし、そもそも10m前後でフォーカスが合うスコープが欲しかったので、使い勝手はちょうどいい感じです。ただアイリリーフ調整すると後ろの方にマウントすることになり、バランスはやや悪い感じです。ちなみにマルゼンからはAPS用に8倍固定ながら最短7mでフォーカスの合うスコープが出ています。これは欲しい。いくら高性能の実銃用スコープでも、20m以下ではフォーカスが合わずにパララックス(視差)が大きくなる以上、やはりエアガンの用途には合わないと言わざるを得ません。10mでしっかりフォーカスが合う(=パララックスも少ない)スコープは本当に希少です。
今回は初速をちゃんと調整しようと思いまして、PDI製の太径スプリングに13mm径のワッシャをホームセンターで買ってきてピストンにスペーサーとして仕込んでみました。枚数でパワーアジャストができるので便利です。最大値で1J超えないように調整して0.25g弾で10発平均が86.56m/s(0.94J/12℃/最大88.00/最小85.8)という結果になりました。このスペーサーがない状態だと平均0.69J、コッキングがギリギリできるまで詰め込むと平均1.2Jでした。
そして肝心のグルーピングですが、やっとここまでたどり着いたか、というのが正直な印象です。右が10mでのグルーピングです。5回計測しましたがスコープ調整と慣らしのために撃った最初の一回を除いてほぼこれと同じグルーピングでした。アクションそのものは過去の構成と大して変わっていないので、新しく導入したPDI製Wホールドパッキンが意外と効果があるのだと思われます。
箱出しの状態。バレルは短く太めのストックと相まってずんぐりした印象がある。 ストックのバットプレートは取り外せず樹脂性ストックのように長さ調節は不可。 |
ノーマルのシリンダとコッキングハンドル。シリンダは両端がかしめられており開けられない。 またボルトを引いたときにハンドルが動かないようにするギミックもオミットされてしまっている。 |
ノーマルのアウターバレルにあるシルク印刷。まあ妥当なものじゃないかなとは思う。 ちなみにマウントベースはウィーバーベースで一般的な20mmレール用のカバーは装着不可。 |
余ったノーマルのアクションとスチール製ボルトハンドルと樹脂性ストックを組みあわせたもの。 内部パーツがノーマルのみでガタ取りくらいの調整でどこまで精度が上がるか実験予定。 |
さてマルイのショートズームからノーベルアームズのSureHitに交換しました。
こないだも熱く語りましたが、エアガン用のスコープにおいて最も大事なポイントは、フォーカス距離であるということを今一度押さえておきます。エアガンの場合どんだけ頑張っても1円玉サイズを狙える限界の距離は15〜20mです。その短距離において光学機器の精度はそれほど大事なファクターにはなりません。しかし無焦点のダットサイトと違ってスコープは複数のレンズを通って拡大された像を結ぶため、焦点つまりフォーカスが合っていないと見えている像とレティクルが重なる位置がずれることになります。銃を動かさず、少し左右に目をずらしてスコープを覗いたときに、レティクルの中央がターゲットと重なったままであればフォーカスが合っています。フォーカスが合っていないと、スコープを覗く度に僅かな目の位置の違いでゼロインがズレます。メーカー不明の中華製スコープはそもそもフォーカス調整ができない(これわからないんですが、たぶん無限遠固定なのかな)ものが多く、フォーカス調整ノブがあってもただの飾りだったというのも実際に数多く見ています。まともにフォーカス調整ができるものや廉価な実銃用の場合も、最短フォーカス距離は20ヤード(約19m)であることが殆どで、エアガンの限界距離以遠でしか使うことができません。
今回購入したノーベルアームズの「SURE HIT 41650 TACTICAL SSTP」は僕がエアガン用スコープにとって理想的だと思うもので、実売23000円前後というエアガン用スコープにしては高価、高精度スコープにしては安価、という微妙な価格です。対物レンズ径が50mm、チューブ径が30mm、重量580gというかなり大柄な代物です。倍率は4〜16倍で、最短フォーカスは10mです。8倍程度では40mmのレンズで全く問題ありませんが、高倍率になると対物レンズ径が小さいと像が暗くなるため、16倍ともなると50mmはやっぱりほしいと思います。僕のAPS2自体がかなり大柄で、スコープも大柄のほうが似合うためサンシェードまでつけてあります。
実際の使用感としては、本当にいいスコープです。像も明るく、特徴的なレティクルも狙いやすく、10mでフォーカスもきちんと合うので、撃っていて本当に気持ちよく当たります。ツールレスの調整ノブはロック機能があり、不注意でズレてしまうこともありません。
100ヤードから1マイルといった長距離を狙う実銃の世界では、スコープには超精密な技術と強烈なリコイルに耐える耐久性が要求されるため、スコープの価格はとんでもなく高価になりますが、エアガン用には先述の通り精度は殆どいらないため、廉価なもので本当に充分です。SureHitは満足感はかなり高いですが、エアガン用にしては高価です。願わくば精度は多少甘くても、安価な短焦点のスコープが出ればいいと思うのですが、ボルトアクションの市場規模からすると、無理そうですね・・・。
せっかく銃のほうを納得いくまでカスタムしても、光学機器のせいでその力を発揮できないとしたらこんな寂しいことはありません。皆さんも精度を上げたボルトアクションには、よいスコープをつけてあげてください。