■ KSC Ceska zbrojovka model 75 (2002/05/14)

 Cz75は旧共産圏だったチェコスロバキアで1975年に発表されたオートマチックピストルです。その初期生産型は1975年当時はまだ共産圏にあったチェコスロバキアで、共産圏ならではの生産費無視のマニュファクチャリングの産物です。口径9mmのダブルカラム、DA/SAメカニズムはコック&ロックもでき、他に例を見ない上質な鋼を高精度の技術で編み上げた、現代オートでも類い希な芸術的傑作です。しかし当時のアメリカに共産圏の銃を容易く輸入することはできず、幻の名銃となったという経緯があります。この銃のすごい点はいくつかあるのですが、まずそのハイブリッド的な「いいとこ取り」があげられます。Cz75はそのフォルムを見てもらえば二つの点において過去の二つの名銃の特徴を有していることがわかると思います。全体的なフォルムとダブルカラムでも握りやすいグリップ、これはブローニングの遺作、ハイパワーを踏襲しています。そしてフレームがスライドを包み込むカタチのレール、これは精密工業のメッカであるスイスが産んだ逸品、SIG-P210を踏襲しています。これによりハイパワーのファイアーパワーとP210の精度を併せ持つ銃となり得たのです。そして初弾はダブルアクション(ハンマーダウンからトリガーを引くとハンマーを起こすメカニズム、略してDA)で撃つこともでき、それでいてコック&ロック(ハンマーがフルコック状態でセイフティがかかる)も可能なデザインも高く評価されています。そして1980年までに製産された初期型はその形状から「ショートレイル」と呼ばれ超プレミアのつく、コレクター垂涎の名銃なのです。ショートレイルは材質にかなり良質な硬い鉄を用いており、かの名ガンスミスであり名シューターでもあったジム・ボーランドがスライドとフレームを打ち合わせて響く音に陶酔したという話もあります。またコンバットシューティングの開祖、ジェフ・クーパーはこの銃を最高のコンバットオートと評し、口径が45ではないことと熱ですぐ変形するプラグリップを除けばパーフェクトに理想的な拳銃であると絶賛しました。このショートレイル神話は日本では永田市郎氏によって作られたといっても過言ではありません。彼は日米のガンマニアの間では超有名人、アメリカ在住の写真家で、銃やナイフに関する知識は世界でもトップクラスという変わった日本人です。彼は数挺のショートレイルを所持しており、雑誌などを通じてショートレイルがどれほどすごい銃なのかを紹介しまくった結果、日本ではショートレイルが有名になった次第というわけです。
 ではKSCのCz75をみてみましょう。KSCはショートレイル、ノーマルと表面加工によってそれぞれ数種類のバリエーションを発売しています。左写真上から、ショートレイルつや消しモデル、ショートレイル「ディープブルーコーティング」モデル、ノーマルモデルとなっています。ノーマルモデルというのは、1980年に輸出増に伴う生産力向上のために材質のランクを落とし、結果損なわれる剛性を補うためにレールが延長されたモデルです。一言で言うなら「ショートレイルではないCz75」です。個人的には、どのみちショートレイルじゃないんなら、現行モデルである、日本名「フィフスバージョン」とかにすればよかったのに、と思います。エアガンの場合、ショートレイルか否かは只単に見た目の違いでしかなく、逆にグリップは世代を重ねる度に改良されてより握りやすくなっており、その点でも最新バージョンのモデル化ではないことが悔やまれます。
 つや消しのやつは、マルベリーフィールドのチェッカードウォールナットで、安くて見た目はイマイチですが、チェッカリングが手のひらに気持ちよくフィットして、銃のホールド感を高めてくれます。ハンマーもステンレスに換装してみましたが、あんまり意味無いですねえ。アウターバレルとチェンバーもステンレスにしてあるので、ウェイトバランスはかなりいい感じです。つやありの方は黒いのがキャロムのスムースブラックマイカルタです。表面がツルツルで銃とは思えない優しく心地よいフィーリングです。こちらもアウターバレルとチェンバーはステンレスにしてありますが、ハンマーは換装していません。
 さて、右の写真が初めてエアガン化されたショートレイルです。旧MGCの最後から2番目の銃です。MGC倒産後しばらくは旧MGCの販売代理業者であったタイトー商事から引き続き販売されていました。
 僕の持っているものはもう随所にガタがきており、動きはしますが、ストライカー(ファイアリングピンの機能を果たすパーツ)のレールが破損していたりして、いつ動作中にパーツが四散してもおかしくない状態だったりします(笑)。とはいえ、わりと手を加えたりしているので、昔の銃にしてはよく動くんですけどね。
 ハンマーがダウンした状態でマガジンを入れると、ストライカーが折れるという致命的な設計ミスを孕んでおり、随所に見られる設計の甘さが、晩年の旧MGCの仕事の荒さを物語っています。今回のKSCのものより間違いなくよい点は、ハンマーが美しい黒メッキ仕上げであることと、グリップがつや消し加工されている点です。






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