グロックが一般的になる前の時代を知っている世代にとって、代表的なハンドガンといえば、と問われれば大半の人が「ガバ」って言うんじゃないでしょうか。銃器設計の神様ジョン・M・ブローニングの基本設計から既に100年以上経過しても、色あせることなく使われている本当にすごい銃です。2011年の百年祭には各銃器雑誌が大々的な特集を組んだのも記憶に新しいです。
HCCPDガバを覚えていますか? 2001年WAガバをベースに僕が作ったカスタムモデルです。当時毎月行っていた射撃大会で僕がメインに使用していたものなので、当時からのおつきあいの方々はぼんやりご記憶されていると思います。残っている僅かな写真が左と右下、シリーズ70のHWスライドにOptima2000を載せるという今見ても惚れるほどドラスティックな代物でした。フレームはアルミフレーム、トリガーもアルミのスリーホール、スライドストップとサムセイフティはステンレスでキングスのナロウタイプ、ハンマーはスチールのオーバル、チェンバーとアウターバレルもスチールでBarstにコーンバレルの組み合わせ、これらパーツは全てシェリフ製。インナーバレルはノンホップの精密バレルでした。スタンダードなホルスターに収めることができるレースガンを目指した結果のカタチでした。ベースになったガバに特に名前がなかったため(シリーズ70なんで)、LAPD SWATのパロディ設定でHCCPD(HirakataCentralCityPoliceDepartment)の正式採用銃とか言ってみんなで笑いあったのもいい思い出です。
ただ残念なことにSCWメカが登場したころ、アルミフレームに亀裂が入り、気付いた直後に大破。その後いろいろ復活を画策するもアルミフレームの入手が困難で、KSC製のSTIで完全なレースガンに興味がシフトしてしまった時期でもあり、結局あきらめて月日が流れてしまいました。
今回は2011年のメモリアルイヤーということでHCCPDガバの完全復活を目論み、アルミフレームが入手できない以上、コンバージョンキットでスライドごとアルミにしてしまおうと考え、価格が高くなるのを覚悟の上で納得のいくガバメントを作ってみました。しかも衝動的に2丁も揃えることになってしまいました・・・。
ここでエアガンの外装としてのアルミに関して述べておきます。ハンドガンの外装を金属にする場合は白か黄色に着色し銃口を塞ぐ必要があります。銃刀法に明確な規定はないようですが、当局の指針として金属が表面積の50%以下であればお目こぼしとなるようです。なおライフルに関しては金属外装の制限はありません。個人的見解としてですが、ここで指す金属というのは高硬度金属と見なすべきだと思います。要は真鍮製改造モデルガンのように実銃を撃つに足る耐久性を持つことを防止するのが意図であるため、実弾発射の衝撃には当然耐えられないアルミは規制する意味がないと思うんですがね・・・。とりあえず怒られないように家に置いておくときはスライドとフレームは分けておきましょう。今回も写真撮ったらすぐスライドとフレームは別々にして保管していますよ、ホントですよ。
まず最初はオールシルバーの LAPD SWAT CUSTOM 2 です。スライド&フレームはPrime製で約60000円。スチール製前後サイトが付属しています。他外装は、忍者製コーンバレル、SD製チェンバーカバー、PDI製オーバルハンマー、Anvil製キンバータイプトリガーとナイトホークタイプスライドストップとヴィッカーズタイプマグウェル付メインスプリングハウジング、シェリフ製ビーバーテイルグリップセイフティとキングスのナロウタイプサムセイフティとマグキャッチ。これら外装は全てステンレス製。内部パーツはシェリフ製スチールシアとPDI製ペルソナイト6.01mmインナーバレル、あとCP製ファイアリングピンプレート。グリップはアルタモント製のKimberロゴ入りの黒い木グリでグリップスクリューはCP製。
シェリフはもうずいぶん以前にエアガン用パーツの製造をやめてしまっていて残念ですが、ここで使用しているものは大破したHCCPDガバで使用したものです。錆びるのがいやなのでスチールパーツは前後サイトのみです。PDIもWA用パーツの新規製造をやめてしまっているため、ハンマーやブッシングが入手困難です。Anvilや忍者と比較しても全く劣らない品質でありながらかなり安価のため、個人的には再生産および製造の継続を切に願っています。これらステンレス製外装パーツの価格だけでも本来50000円以上となりますが、手持ちの余りパーツを流用したので新規購入はAnvilのパーツとグリップくらいで30000円ほど、それでも合計は100000円程度というメモリアルイヤーでないと出せない金額になってしまいました。シェリフ製Rタイプ用のシアが入っているところからおわかりのように、メカニズムはSCW2です。WA純正内部パーツはいろいろ余っていたものを寄せ集め、足りなかったトリガーバーやシアスプリングをWAから取り寄せました。余談ですがいつもながらWAのパーツ注文ダイヤルの対応の冷たさは身が凍るほどです。
結果外から見えるパーツでWA純正のものはリコイルスプリングガイドとプラグ、ハンマーピンとシアピンの両端、ファイアリングピンとイジェクターのそれぞれダミーとなるブリーチ一部のみとなってしまいました。
各パーツのすりあわせは苦労の連続でした。Prime製のパーツは寸法があまりにもかっちりしすぎていて、スライドとフレームのかみ合わせは少しずつペーパーかけてフリクションがなくガタもない状態にするのに気を遣いました。結果動作はスムーズながら手持ちのガバでは一番遊びのないスライドの動きになり満足です。
お次がツートーンの CUSTOM TLE RL 2 です。スライド&フレームはCreation製で約30000円。Primeの半額です(笑)。ダイキャスト製の前後サイトが付属しています。他外装は、忍者製ストレートバレル、SD製チェンバーカバー、PDI製アルミスリーホールトリガーとブッシングとプラグ、Anvil製キンバータイプハンマーとウィルソンタイプスライドストップとスプリングフィールドアーモリータイプマグウェル付メインスプリングハウジング、ZEKE製アルミビーバーテイルグリップセイフティ、シェリフ製スチールのキングスナロウタイプサムセイフティ。グリップはアルタモント製のローズウッド調。インナーバレルはPDI製6.01mm。それとCP製ファイアリングピンプレート。
ちょっとアルミパーツを使用し、リコイルスプリングガイドもなしにすることで、銀色の方と形状の差別化と軽量化を図りました。内部そのものは既にある程度カスタム済みだったMEUピストルを流用し、グリップスクリューはWAのカスタムパーツですが、悔しいのはマグキャッチがWA純正の亜鉛ダイキャスト製というところです。あの小さなパーツに9000円は出せない(涙)。既に他の外装パーツでやはり40000円程度かかっているので、完全に予算オーバーです。自分に対しての言い訳でもありますが、そもそも外装パーツの換装はWA純正パーツが染めだとすぐ変色し塗装だと荒いため嫌だという理由からなんですが、マグキャッチは小さくて荒も目立たないので妥協できるかと。
そのためこちらは外から見えるWAパーツはマグキャッチとグリップスクリュー、あとは銀色の方と同じくピン2本とブリーチの一部となります。
Creation製のキットはほどよい遊びがあり、すりあわせは殆ど不要でしたが、WA純正パーツでガタが完全になくなるように作られており、ブッシングがPDI製もAnvil製もギリギリ入らず、構造上加工しやすかったPDI製をグラインダーで削ってはめ込みました。またディスコネクタとシアをフレームに入れると両者の間に大きな隙間ができて噛み合わず、シアがハーフコック位置で止まるためハンマーが完全に落ちないというトラブルがあり、フレームとディスクコネクタの間に電動ガン用のシムワッシャを仕込んで解決しました。MEUからの流用のためこちらのメカニズムはSCW3です。AnvilのハンマーにはSCW3用のスチール製シアが付属しているので助かりました。
一応実射。比較用にはWAノーマルパーツのみで構成されているデルタエリート。計測はレストせず速射、寒かったのでそれぞれ1回のみです。LAPD SWAT 2 はフロントサイトがリコイルで左右に動いてしまったので、フライヤーが出ています。フロントサイトの固定策を現在思案中です。TLE RL 2 はそもそもサイトにホワイトドットも入っていないので狙いにくかったです。計測後ドリルでドットを入れましたが、再計測は暖かくなってからにします(笑)。リコイルは気温が10度もない真冬でマガジンは人肌で暖めた程度ですが、TLE RL 2 > LAPD SWAT 2 > デルタエリートの順で強く、ノーマルのデルタエリートも含めいずれも満足のいくリコイルでした。
今回のフルカスタムモデルの挑戦で本当に痛感したことは、もはやハンドガン、特にガバメントにおいてもシェアはマルイが握ってしまっているんだな、ということでした。マルイ対応パーツはWA用に比べ種類も潤沢で価格も安く、何ら妥協なく好みのガバが作れる状況です。まあそんな中マルイ製ガバを買わないほどWAが好きなのかと言われれば全力否定するしかないんですが、WA用ガバのパーツならマガジンも含めてたくさん余っているのと、やはり作動性能の高さはWAが頭一つ抜きん出ているのがWAをイヤイヤながらも選ぶ理由ですねえ。同じ理由でKSCのガバにも手を出していないわけです。
WAの製品はどれも出来はいいんですが、適正価格は定価の半額だと本気で思っています。カスタムモデルは高くなるのは仕方ないにしても、外装は一般的なHW材と質の低い塗装のダイキャストパーツであるうえ、内部パーツや基本メカニズムは全部使い回しで、特筆すべき点が特にないガバの定価が4万円超になる理由は見当も付きません。KSCもリニューアル製品しか製造できないほど弱体化している現在、マルイと中国・台湾メーカーの躍進は止まりそうにありませんねえ。