■ 東京マルイ SIG SAUER P226E2 (2012/02/16)


 久しぶりにマルイ銃を購入。あまりのディティールのショボさに早速アルミキットを購入し換装してしまいました。
 まずは軽く実銃の蘊蓄を。SIGのマスターピースと言えばもちろんP210。戦前のスイスの職人によって作られたこの銃は、スマートなルックスに高い精度を併せ持つ類い希な製品でした。しかし殆どのパーツが鋼材から削り出されて手作業で組み立てられる生産性の悪さ、すなわちコストの高さをSIGは戦後になって大きく問題視します。そこでスライドはプレス成型、フレームはアルミアーロイとすることによってコストを大幅に下げた新製品を開発、1975年にスイス軍に制式採用され、1976年に製品名P220として発売しました。今ではグロックなどでお馴染みのスライドのイジェクションポートにチェンバー上部をはめ込む構造でロッキングラグやバレルリンクを廃し、材質以外にもパーツ点数や工数の削減でコストと重量を大きく減らしましたが、銃に関しての固定観念の強いアメリカでは安っぽい外観の割に値段が高い等の理由で受け入れられるまでにかなりの時間を要してしまいます。1980年代に米軍がM1911A1に代わる次期制式拳銃のトライアルを開始します。ここに提出されたのがP220の近代改良版となるP226でした。ダブルカラムマガジンになり、P220のバリエーションモデル等で培われた改良点の集大成でもあり、米軍のトライアルでは最終的に採用とはならなかったものの、警察等の公的機関やその他各国の軍隊で数多く採用・利用されており、映画等でも頻繁に目にするメジャーモデルとなりました。バリエーションモデルも多く、今回のE2は2010年に発売されたばかりの新製品で、大幅にスリム化したグリップと速射に有利なSRTが特徴です。
 もうひとつ、大変ややこしく僕もきちんと理解していないことがありましたので、ちょっと調べた結果をここでまとめてみます。SIGとかSIG-SAUERとかメーカーは本当は何なの?ということです(笑)。SIGはスイスの工業メーカーで、結論から言うと今は銃は全く作っていません。正式名称はスイス工業会社(Schweizerische Industrie Gesellschaft)といい、列車の製造で1853年に創業、戦時中の他の国と同じく、工業を営む企業が軍需品の製造を行うことは当然の成り行きです。スイスは永世中立国、自衛のために必要な軍事力は当然持ちますが、戦争には関わらないと決めているためNATO等の軍事協定にも加わらず、武器の輸出輸入も原則禁止となっているため、国内の銃器産業は海外進出ができません。そのため1976年にドイツのSauer&Sohn社を買収、SIG製品をSIG-SAUERとしてドイツから輸出することで法律を回避します。他にもR93で有名なブレーザーや競技銃のヘンメリーも買収していたようです。1985年にはアメリカに現地法人となるSIGARMSを設立、アメリカ産のSIGが登場します。ところが世界的な銃業界の縮小により2000年頃に銃器に関する一切を売却し、SIGはガンメーカーではなくなってしまいます。SIGの銃器ブランドを買い取ったドイツの投資家がSWISSARMSを設立(本社はスイスにあるようです)、アメリカのSIGARMSを2007年にSIG-Sauerに改称し、以後P226やSP2022等はここから発売されています。そのため現在SIG-SAUERは、事実上アメリカのメーカーということになります。最後に読み方ですがドイツ系のガンメーカー名をなぜか日本人は独特に読むようです。SIGはそのまま「シグ」あるいは「スィグ」でいいんですが、SAUERはドイツでは「ザウアー」でアメリカでは「サワー」なのに日本では「ザウエル」です。他にもHKはドイツ「ヘックラー・ウント・コッホ」アメリカ「ヘッケラー・アンド・コック」なぜか日本は「ヘッケラー・アンド・コッホ」。ドイツ「ヴァルター」アメリカ「ウォルサー」日本「ワルサー」。
 で、マルイのP226E2です。どうもP226で好きになれなかったのがサムセイフティがない点とグリップが握りにくい点だったんですが、そのグリップが改良されたとのことなので買ってみた次第です。こういった改良は過去M92FのVertecがありましたが、P226E2はそれよりもさらに細くなっています。そこでトリガーガードの付け根下側から最も狭くなる位置の円周を細いひもを使って計測してみました。結果は下表です。9mmダブルカラムの中でも圧倒的に細いことがわかります。ただし握りやすさは数字だけで判断できるものではなく、1911は細い楕円形、Cz75やP226E2は円に近い形状になっていることが握りやすさの要因と言えます。同じく下表にあるのが、もう一つの特徴であるSRT(ショートリセットトリガー)です。トリガーのリセット距離というのは、トリガーを引いた後に再度発射可能にするためにトリガーを戻す必要がある距離で、競技の際の速射時や実戦でのタップ射撃に重要になるものです。より実射の状態に近づけるためにハンマーが落ちる位置ではなくトリガを引ききった位置から、トリガーとシアの接触が戻りリセットされるまでの位置を、トリガーの真ん中あたりで計測しました。ガバ系は本当に短い。それに比べてP226E2はかなり長いです。しかも通常のP226はさらに長いらしいので驚きます。ちなみにグリップ円周は概ね実銃にも当てはまる数値だと思いますが、トリガーのリセット距離はおそらく実銃とは大きく異なります。

 P226E2/MaruiCz75-2nd/KSCUSP-Compact/KSCG17/MaruiM92F/WASP2009/KSCSVI/WAM1911A1/WA
グリップ円周142146146151152156156147
トリガーリセット距離6.74.05.43.63.54.01.02.2
 

ところでやはりマルイの銃と言えば、その外観のディティールのひどさが最大の特徴です。今回は並べて比較してみましょう。

 

左がノーマル、右がPrime製アルミキットに換装後です。全体のシルエットとしては違いはありません。アルミキットもあくまでマルイのスケールにあわせないと意味ないですからね。スライドの色はどちらも実銃に倣ってややグレーになっています。実はトリガー上にあるマイナスネジのようなピン、どちらもダミーですがノーマルはモールド、Primeのキットは裏からはめ込む別パーツです。このパーツはめ込む向き間違えて線が縦方向になってます。縦が間違っているのかどうかはわかりませんが、手元にあるP226E2の実銃の写真を見る限りはどれも横向きなんですよねえ・・・。

 違いがわかりやすいところをアップにしてみました。まず左側、フレーム先端の刻印はノーマルは100%ウソっこ刻印です。ちなみにバレルとリコイルスプリングガイドも交換済みなのでノーマルと色が違います。右側がフレーム下側。ノーマルはあり得ないほどくっきりとパーティングラインが残ったままです。ここまで堂々と見せられるとむしろ清々しささえ感じてしまいます。ちなみに前後サイトはDetonatorのスチール製。トリジコンタイプで、シルバーのリング内に蓄光材が入っており、昼間でも夜間でもサイティングできる優れものです。
 内部パーツはインナーバレルをPDI製01バレル(実はグロック用。SIG用が売り切れていたので・・・。形状は100%同じで互換性アリです)、同じくPDI製の冬用ピストンヘッド(耐寒性を少しでも高めようと・・・。効果は「?」です)、あとはLaylaxのベアリングリコイルスプリングガイド。このリコイルスプリングガイドは要注意です。パッケージの組み込み説明には、付属のスプリングを使用するとショートストロークになるためスライドストップが機能しなくなる、スライドストップを有効にしたい場合はノーマルスプリングを使用するようにと書かれています。まず、スライドストップの要不要に関わらず付属のスプリングを使用するべきではありません。スプリングが縮みきった状態でスライドが下がりきっていないということは、リコイルの衝撃はスライド前面のマズル下に集中します。言うまでもなく、スライドの寿命を縮めます。しかも問題なのが、かといってノーマルスプリングを使用すると折角のベアリングが機能しなくなる点です。この製品はテフロンコートのシャフトの潤滑性を最大限に発揮させるために、スライド側にステンレスかPOM樹脂製のプラグをはめ込んでそこにスプリングガイドを通す造りになっているんですが、このプラグのためにシャフトの直径がノーマルより少し細く、付属スプリングも含めて全てその細さにあわせて作られています。そのためシャフト根本に取り付けられている肝心のベアリングワッシャの直径も小さく、ノーマルスプリングの内径とぴたり同じなのです。そのため一工夫が必要です。不幸中の幸いというか、この製品には先に述べたスライドにはめ込むプラグが2種類付属しています。ステンレスとPOM樹脂のものです。このうち使わない方をベアリングワッシャとスプリングの間に通しておけば解決です。右写真なんですがカタチも大きさもちょうどいい(笑)。僅かにスプリングテンションを強くしてしまうことになりますが、動作上何の問題もありません。
  (2012/07/06追記) トリガーとマグキャッチ、テイクダウンレバーをスチール製に交換し、グルーピング計測を行ってみました。ノーマルのダイキャストはすぐ色が禿げて白っぽくなってしまい、本当にみっともない。しかしスチールパーツは錆が怖い。そんなわけでしっかり脱脂してから錆止めにメタルプライマー吹き付けてありますが、いつまで保つやら・・・。グルーピングはなかなかいい感じです。いつものターゲットで中心の黒いエリアは直径4cm、軽くレストして3回計測したもののベストでもワーストでもないものですが、どれも殆ど同じグルーピングでした。






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