■ KSC SIG PRO SP2009 GSG9 35周年記念モデル (2008/02/02)


 最近のKSCはアニメに登場する銃を中心に、実銃には存在しないモデルを発売しまくっており、ホントつまんないメーカーになってきたなあと心底嘆いた結果、我がガンラックにはWAの銃ばかりが増えていくという体たらく。そこに来て、2008年最初のモデルもやはり実銃には存在しないもの・・・、ちょっとまて、これは伝説のアレじゃないか、と行きつけのガンショップで即予約した、かなりプレミアな逸品が、SP2009のGSG9設立35周年記念モデルなわけです。
 まずは実銃の話を軽く。時計をはじめ精巧な機械工作で有名な国、スイスのSIGは日本でも有名なメーカーですね。Cz75が好きならP210が好きじゃないハズがないし、自衛隊をはじめ自動式拳銃を持つ日本の公的機関の多くがSIGの銃を使っています。スイスやスウェーデンといった永世中立国は、自国から戦争を遠ざけ平和を得るためには、自国の防衛力が何よりも肝心であるということをよく理解しており、口先だけで戦争放棄だ平和平和だと喚くクズばかりの日本とは違い、兵器を他国の技術や輸入に頼ることもなく、他国より侵攻を受けた際には全国民が国を守る兵士となる、まさに si vis pacem, para bellum (ラテン語で「平和を欲するなら、戦争に備えよ」の意;9mmパラベラム弾の語源)ということを体現している、素晴らしい国であることは皆さんもよくご存知だと思います。そのスイスの老舗ガンメーカーのSIGが、世界の流れに遅れに遅れ、1998年に漸く発表したSIG初のポリマーフレームがSIG PRO SP2340(.40SW)で、その9mm版がこのSP2009です。
 しかし残念なことに、注目すべき特徴や利点に欠け、レールを独自規格にしたことなどにより売り上げは不振、SIGはかねてよりスイスの武器輸出を制限する法律を回避するために提携していたドイツのSauerに銃器販売部門を売却、現在SIGといえばスイスのメーカーではなく、ドイツのSIG-Sauerを指すようになってしまいました。その後レールを一般的な20mmとするなど、いくつかの改良を施したSP2002が発売されていますが、SIGらしさを保ったポリマーフレームとしてそこそこ評価されているようです。またSauerではこのシリーズの名称からPROを省き、単にSIG SAUER SP2002としています。
 さて、ではエアガンの話を。KSCがSP2340を発売したのはSIGが実銃を発表した翌年1999年でした。当時、断面が丸ではなく板状になっているフラットリコイルスプリングやユニット化されたハンマーメカ等、外見だけではなく内部パーツも限界までリアルに作られたモデルとして話題になりました。僕個人的には当時コック&ロックができない銃にはあまり興味がなく、またガタイの大きさの割にバレルが短い等が気になって買わずにいましたが、2002年にKSCがオリジナルカスタムとしてGSG9設立30周年記念モデルを1000挺限定で発売すると自社サイトで発表しました。これがタクティカルデザインで完全に好みのスタイルだったため、行きつけのガンショップに予約に行ったら「KSCの限定カスタムはいつも売れ残るから、予約しなくても大丈夫だろう」みたいな話になって、結局予約しなかった訳ですが、コレがKSCの予想を上回る反応があり、1000挺全てが予約で完売、店頭には並ばずKSCも急遽雑誌広告等を差し替えるようなことになりました。そして僕は買い損ねて臍を噛む結果になってしまったわけです。
 今回はそれから5年、KSCが工場内のSP2340/2009のパーツを全て使い切るためにGSG9の35周年モデルを企画、年内間に合わず2008年1月の末に出荷された限定600挺あまりのモデルのうち、予約完売となったHWのSP2009を、今回はきちんと予約、漸く購入できました。関係者の話ではSP2009はKSCの発表通り300挺足らずの生産だと思われ、これまた店頭には並ばず、SP2340は若干数店頭販売が可能だったということです。KSCの取説にも限定品かつ再生産の予定もなく、修理は通常のSP2340/2009のパーツを使用することになるため、壊さないように大事に使ってね、と書かれています。
 実はこの銃、僕としては初めての点が二つあります。ひとつは、初めてのSIGなんです。自分でも意外でしたが、SIGの銃って今まで買ったことなかったんですよねえ。もうひとつは初めてKSCのHWです。KSCの製品はWAと比較して耐寒性が低く、動作性を求めるなら軽量スライドが必須になるため、今までKSCのHWには利点を感じなかったのですが、今回は限定品だしバカスカ撃つことはないだろうと思ってHWにしました。まず最初に驚いたのはスペアマグ付属なんですよ。しかもGSG9のレーザー刻印入ってるやつ。BB弾入れるのにローダーが必要なレーンレスでショートタイプのマグバンパーのものと、指でフォロアー下げれるレーンありでノーマルのマグバンパーのものがついてます。本体の至る所にGSG9の刻印があります。30周年モデルではWAのせいでトイガンにおける商標・固有名詞の無断刻印の訴訟が進行中だったため、Grenzschutzgruppeの文字も一部置き換えられていたようですが、今回の35周年モデルでは正しく刻印されています。アウターバレルにはガスポートが空き、それにあわせてスライドも肉抜きされています。フロントセレーションも入り、タクティカルぽさがぐんと上がっていますねえ。
 やはりこの真冬ではマガジンを暖めてやらないとまともに動作しません。マガジンを暖めてやると、HWらしいガツンとくるブローバックで撃ってて楽しい銃です。グルーピングは同じようにインナーバレルが固定されていないCz75と同じくらい、5mからの平均で5cmほどで及第点といえるでしょう。HWは質感がパーカライズド処理された金属ぽくていいのですが、SP2340/2009はポリマーフレームなので、フレームの金属ぽさがリアルさには逆効果ですねえ。またパーティングラインが目立ちすぎます。ポリマーフレームの実銃もパーティングラインは処理されていませんが、写真で見る限りここまでハッキリ見えません。スライド側も上手く隠してあるとはいえ、パーティングラインの処理は甘く、KSCらしくないなあと感じてしまいます。実銃にはセーフティがないので、エアガンとしてオリジナルのセーフティがトリガーに組み込まれているのですが、これがトリガーに不自然なピンがある理由なんですが、使いやすいとか使いにくいとか言う以前に、どうやっても説明書のとおりに機能しません。ま、デコッカーあるんで使うことはないのでどうでもいいんですが・・・。

 ちなみにGSG9とはドイツの特殊部隊のことで、SASに並ぶ世界有数の対テロ特殊部隊として有名です。1972年9月、ミュンヘンオリンピックでパレスチナのテロリストによってイスラエルの選手が拉致され、結果選手11名が死亡するという事件があり、対テロの特殊部隊の必要性を痛感した当時の西ドイツは、軍隊内に特殊部隊を作るとナチスの侵略にあった近隣諸国から抗議されるだろうと懸念し、警察管轄の国境警備隊に特殊部隊を設立、これが国境警備隊第9大隊こと Grenzschutzgruppe 9 、通称GSG9となりました。その後同じくパレスチナによるテロである1977年10月のルフトハンザ機ハイジャック事件では、機内突入10秒で犯人3名を射殺、1名を逮捕し5分経たずに機内の安全を確保、80名以上の人質を全員無傷で救出するという活躍を見せ、世界にその名を知られることになります。そんな憧れの特殊部隊であるGSG9がSP2340/2009を使用しているという話は聞きませんし、創立記念モデルなんてものは実銃では発売されていません。




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