ついに出ましたね、Entry-1。KSCの製品名はEntry-A1ですが、そんな名前の銃は知らないのでここではEntry-1と呼びます。
そもそもは永田市郎氏が所有するカスタムガンです。当時KSCがSTIシリーズを製品化するとのことで、永田市郎氏もそれに協力していたようです。そして発売を記念するように氏がマーク・モリスというガンスミスに依頼して作成したのがEntry-1です。EDGEと同じ5インチにフルレングスのダストカバーを持つスタイルですが、スライドは3.9インチしかなく、1インチちょっとのコンプがダストカバー先端に固定されており、スライドを引いたときのシルエットの斬新さに当時は憧れたものです。永田市郎氏はこの銃に「KSC#1」というシリアルを打刻しており、ここまでされたらKSCもとっととモデル化するしかないだろうな、と思っていたのですが・・・。
前評判に反してKSCのSTIは酷評され、売り上げは全く伸びませんでした。僕も真っ先に飛びついてEDGEを購入したので覚えています。トイガン業界の悪性腫瘍とも言えるWAが、「KSCのSTIは構造がリアルすぎ、金属製(アルミ)のバレルをモデルガンに組み込めば実弾を発射できるように改造できる可能性がある」と、とんでもないイチャモンをつけ発売が延期になるという事件もあり、漸く発売されたSTIは内部構造をリアルにしすぎたため動作も命中精度も著しく悪く、先行していたWAのハイキャパと全く勝負にならない有様でした。確かにエアガンでガバメント系のバレルリンクをあれほどリアルに再現したモデルは現在までも存在しておらず、試みとしては非常に評価できるものの、真夏の気温で漸くスライドストップがかかるというブローバックの調子の悪さは期待外れと評されて然るべきものでした。
KSCはその後STIのバージョンアップを行います。従来のモデルを「リアルメカバージョン」と呼び、新たに内部構造のリアルさを殺して動作性能を底上げしたものを「レースメカバージョン」として発売しました。このレースメカバージョンは確かに動作性能が大きく改善されており、命中精度も十分に満足のいくものでした。しかしながら改善されたとはいえ耐寒性やリコイルの大きさはWAにはかなわず、東京マルイがハイキャパを発売し爆発的に売れる頃になっても、小手先だましのバリエーション展開のみでメカニズムの更新は全くなしというKSCのダメダメぶり。しかし個人的には今手持ちの銃で命中精度という一点において全幅の信頼を寄せているのがSTIのレースメカバージョンで限定発売されたハイブリッドリミテッド2000をカスタムしたものなので、ポテンシャルは非常に高い銃だとは思っているんですが・・・。
2011年、STIのフレームに刻印された「1911の100年後」がやってきたとき、KSCはSystem7というメカニズムを漸くSTIに適用し、STIシリーズも最新の動作性能を得ることができたのですが、思えばSystem7というのは2007年の「07HK」メカの改称に過ぎず、System11とか12とかもっと積極的にアップデートして欲しいものです。
そして忘れられていたEntry-1、漸くSystem7メカで製品化です。ドーベルマンの時も言ってますが、このスタイルが本当に好きなんで、漸くのモデル化かつSystem7ということで久しぶりに発売を楽しみに待った製品です。
しかしSystem7となるとマガジンを含めて殆どのパーツが過去製品と互換性がなくなります。しかも今回はチェンバーもより命中精度を高めるために変更されており、インナーバレルといった基本パーツでさえカスタムパーツが存在しません。トイガン業界の恥部ともいえるWAでさえ、最新のSCW3においても過去のRタイプメカからマガジンの互換性は確保しているというのに。
細部にわたって確かにKSCのSTIシリーズの進化を感じることができます。左写真上の方はハンマーを起こしてブリーチエンドを見えるようにして並べたものです。左からWAのSCW3、WAのSCW1、KSCレースメカバージョン、そして今回のEntry-1。ファイアリングピンを押さえるプレートが再現されていないのはレースメカバージョンのみ、しかもファイアリングピンすらなくビスがあります。しかしEntry-1ではダミーとはいえファイアリングピンが別体でペコペコ稼働するようになり、雰囲気としては最もリアルです。エアガンとしてのファイアリングピンが唯一露出していないのがSCW3、しかしファイアリングピンはハンマーの真ん中に仕込まれているため、シルバーのハンマーだと不自然に目立ちます。僕はマルイのガバは一挺も持ってないので、マルイ製品のこのあたりの再現性がどうなのかはわかりませんが、ネットで調べるとレースメカバージョンと同じくビスが見えるようですね。またスライドのスライドストップ用切り欠きに変形防止用のスチールプレートが仕込まれています。マルイが行ってから各社真似していることですが、これが全く意味なく、数回ホールドオープンしただけで切り欠きが変形しました。ナイフ使って整形して誤魔化しましたが、こんな簡単な細工が上手くできないなんてKSCの技術力には疑問を感じずにはいられません。そういえば、購入時も最初に手にしたモデルは店頭での試射でトリガーリセットに問題があって、ちゃんと動作するものを選んで買ってきました。まあこういうことがあるんで、できるだけネット通販よりは僅かに高くても信頼のある店頭で買うんですがね・・・。
肝心のリコイルと命中精度です。やっとSTIでここまで気持ちいいリコイルが味わえるようになったか、と感無量です。スライドが短い上にABSなのでリコイルも重くありませんが、短いトリガーとシアやハンマーを燒結金属にしているためか小気味良いクリスプなトリガーフィーリングと相まって、速射がとても気持ちいいです。命中精度は比較対象として、左写真下の二挺を用意しました。全くノーマルのレースメカバージョンとしてタイタン、きちんとカスタムしたレースメカバージョンとしてハイブリッドリミテッド2000カスタム。結果は下。
ノーマルのレースメカバージョンとそんなに変わりません・・・。ただ撃ってるときの気持ちよさは格段にEntry-1の方が上です。強すぎるリコイルは競技では不利なため、射撃競技にはレースメカバージョンの方が向いてるな、と思えるほどです。どこも出してくれそうにないですが、アルミのスライドやチェンバーやアウターバレルが欲しくてたまらなくなります。
いよいよ次はM945のSystem7化か、と期待していますが、どうなんでしょうねえ・・・。
2017年も末になって、KSCまさかの3.9インチ穴あきスライド第2弾、VIP Exhaust です。 今回はKSCオリジナルカスタムと見ていいでしょう。STIのカスタム銃は米国にごまんと溢れており、これと同じ銃あるいは原形となったカスタムがあったとしても、僕にはもうわかりません・・・。
3.9インチ、つまりオフィサーズサイズのスライドを持つ2011です。目を引く軽量化ポートが側面に二つあり、競技銃をイメージしたチタンゴールドのアウターバレルが覗く様は雰囲気バッチリです。スクエアハンマーもゴールドに仕上げられており、前作のシューマッハエグゾーストと同じく、レースガンなのかキャリーガンなのか目的が不明なモデルになっています。
さて、System7になって本当に文句のない動作性能を見せるようになったKSCの製品ですので、年末の極寒の中でもマガジン握って温めてあげれば、見事に動作してくれます。今作で強く思ったのは、マルイおよびその中華コピーと明確な区別化のために、KSCがHW素材を使うことは賢明だということです。実は当然Cz75ショートレイルもSystem7のHWを購入済みですが、System7はHWであっても十分動作させる性能があり、ABSやアルミより重く鉄に近い比重のHWの良さを改めて感じました。HWであれば、アルミに換装したいとはあまり思わなくなるので、法的にフルメタルが(限りなく黒に近い)グレーな日本ではとてもいい選択と言えます。そんな中KSCのSTIには本当に残念な点が一つあります。それはEntry-1のときも嘆いているスライドストップの切り欠きです。摩耗防止のためにWAをはじめマルイの真似をして切り欠き部分に鉄板を仕込んでいるのですが、ただでさえ薄いスライド側面に鉄板を押し込んであるため、外から鉄板部分がわずかに盛り上がって見えています。マルイは早々に改善した点にも関わらず、KSCもWAも相変わらずの状態でガッカリです。ちなみに僕はシューマッハエグゾーストには自分で真鍮棒を仕込みましたが、その違いはこの後写真でご確認ください。あと実射性能の計測は暖かくなってからで・・・。
右側面。ゴールドが目立つ。アウターバレルはプラだが、 チタンコーティングの質感をメッキで見事に再現している。 |
ホールドオープン。ショートスライドだと迫力が出る。 前作と違ってこの状態でも向こう側は見えない(笑)。 |
非System7のシューマッハエグゾーストとの右側面比較。 スライド以外にもトリガーまわり、グリップボトムに違いが。 |
切り欠き部の拡大。わかりにくいがVIPは少し盛り上がっている。 シューマッハは自分で真鍮棒を入れてあり、変形は全くなし。 |