■ Colt,H&K,S&W,Beretta,Browning 安物 (2009/03/12)


 さて以前の内容を大幅に加筆修正し、さらに2社加えた合計5社でご紹介します。メンツはColt、H&K、S&W、Beretta、Browningです。しかもちゃんとレギュレーションがあって、「購入価格が60ドル以下のタクティカルフォルダー」であること。ちなみに他にもレミントンやSIGなどもナイフブランドを持っていますが、タクティカルではなかったりデザインがあまりにもダサすぎる等の理由で購入を見送りました。

 ・Colt Cobra2 Tactical
 Coltのナイフは製品名に銃と同じ型式をつけたものが多く、M4やPythonなんかもあります。で、ウチにあるのはCobra。KingCobraじゃなくて?と思ってネットで検索してみたら、38Superのリボルバーが見つかりました。
 クリップポイントをモディファイして突き刺しやすくしたタントーという形状に、セレーション(鉄砲用語ではスライドの滑り止めや反射防止のための溝ですが、ナイフでは波刃のことを指します)もセレーションというか変な切り込みがMの字のように入っています。ブレードが90度付近(ちょうど真ん中あたり)まで開くと1カ所だけそこで抵抗があって止めることができるようになっています。つまりは開きかけでColtのロゴが見える状態のまま飾っておくことができるという案配です。ま、変な形のセレーションといい観賞用のギミックです。
 ブレードの鋼材は黒塗装の440C、ハンドルは黒染めの航空機用アルミ。そして安物のくせになんと Made in USA と誇らしげにブレードに書いてあります。意外にもしっかりした造りで、オーソドックスなライナーロックです。
 製造はユナイテッドカトラリー。ナイフ業界では有名なイロモノが得意なメーカーです。肉抜きの穴のあいたタクティカル(?)なブレードと洋風鍔にライトセーバーみたいなハンドルの日本刀「Samurai3000」、日本語でブラックドラゴンを意味する名をつけられた「YoruDragon」、同じくグリーンドラゴンの意味を持つ両刃の日本刀(!)「AoDragon」他にも「Rurousha」(日本語でノーマッドの意味;え〜!?)「Kogane」(日本語で黄金の意味;これは合ってる)「Shikyo」(日本語で死の意味;誰か漢字わかったら教えてください)、他にもイロモノキワモノがたくさんあると思うんですが、オフィシャルサイトからは現在プロダクト一覧が参照できなくなっており、残念ながら確認できません。他のメーカーと違って笑えるアイテムが目白押しのハズなだけに本当に残念です。
 リカッソを除く刃長は62mm、ハンドルの全長は102mmです。CRKTのカーソンフリッパーからアイデア拝借で、折りたたむとブレードのエッジ側ピボットの突起が少し飛び出す恰好となり、ここを押すことでブレードが起きて、スナップによるオープンができるようになります。

 ・S&W H.R.T. Urban Titanium Camo
 さて安くて暴走気味なデザインが多く、必要以上に殺傷力を高めているということで、数多くの事件に使用され、テレビの画面や新聞の紙面にその下品な出で立ちが登場することにより、今やSOGよりも昨今の刃物規制強化に貢献しており、まるで日本のTEC9みたいなものですね。ウチにあるものはアーバンカモのやや大柄でヘビーなもので、デザインとしてはおとなしめです。
 全体がチタニウムコートされた上に、都市迷彩のスプレー塗装が施されており、チープなタクティカルと見るか、アーバンなタクティカルと見るかは、人それぞれですね。僕個人としては嫌いじゃないけど、好きにもなれない微妙なところです。どちらにせよよく見るとなんとも安っぽいスプレー塗装なので、遠目に眺めて楽しむのがよろしいかと。
 ブレード左側には「Smith&Wesson H.R.T.」右にはSWロゴが印刷されており、どっちに向けてもS&Wを主張してくれます。ところでH.R.T.って確か Hostage Rescue Team ってFBIの特殊部隊にあたる人質救出班のことだったと思うんですが・・・。S&Wと何の関係が?。ガンマニアにはHRTといえばパラオーディナンスとかでお馴染みですね。
 ブレードの鋼材はこれも440C。ハンドルはステンレス。ブレードもハンドルもチタニウムコートされており、手触りはいい感じです。ハンドルがアルミやザイテルじゃないので、バランスがハンドル寄りになり全体的に重くなっています。バランスはよくないですが、この重量感はちょっといい感じです。メカニズムは大味なモノロック。ハンドルがゴツいんだから、普通にライナーロックにするべきだったでしょうね。
 製造はテイラーカトラリー。イロモノではなくちゃんとしたアウトドアナイフのメーカーのようです。日本での知名度は低く、テイラーのブランド名で取り扱っているお店は見あたりません。このS&Wブランド以外にタクティカルやミリタリーのプロダクトはないようです。
 リカッソを除く刃長は87mm、内セレーションは37mm、ハンドルの全長は130mmです。フォールディングナイフでは大型な部類です。ブレードには Hammer Forged Surgical China と刻印されており、回りくどい書き方ですが要は中国産です。S&Wはアメリカ生まれで現在は純アメリカ資本の企業となり、パワーオブユーエスエーと叫びながら500SWマグナムをぶっ放すユーザーを抱えているだけに、ここも米国産にこだわって欲しかったところですねえ。

 ・H&K 14440SB ALLY
 さて日本ではヘックラーかヘッケラーとコックかコッホのお好きな組み合わせで呼ばれているH&Kの穴あきナイフです。HKブランドのナイフはガンメーカーにしては珍しく、安物が少なく、実に堅実な印象がありますねえ。ま、ここにあるものはそんな中でも最も安物ですけど。
 ブレードの穴は指かけで、ワンハンドによるブレードのオープンがしやすいと言われています。確かにBladetechやSpydercoに比べると穴が大きく本当に開きやすそうですが、その穴の内側は縁のエッジが甘く、グローブをした手では滑って引っかからず、とても開きにくいです。しかもこれだけ大きい穴が空いてると、万が一何かに使うとき、この穴のところでブレード折れますよねえ、絶対。ハンドルにも大きな穴が三つ空いています。軽量化のためなのかもしれませんが、折りたたんだ時にこの穴からエッジの一部が見えるのはどうなのかなあと思います・・・。そんなわけでこれも完全な観賞用ナイフですねえ。いや、別にそれが目的なんでだからどうだと言うわけではありませんが(笑)。
 ブレードは黒の塗装です。HKのロゴも銀色の塗装です。ロゴの部分だけ塗装しないとか、塗装するならHKらしく赤にして欲しかったところです。ハンドルもぼったりとした黒塗装です。ハンドルのエンドには銀色の突起があります。コレなにかと思ったら、グラスブレーカーです。消防士が持つレスキューナイフによくついているもので、車内に閉じこめられた人を救出するために、叩きつけなくても強く押しつけるだけでガラスに亀裂を入れられる尖った円錐状の硬質金属です。このナイフ、意味もなくこのグラスブレーカー付きです。写真でも見えるとおり、ちっこくて短いので刺さりはしませんが、先がかなり尖ってるので指で押さえると結構痛いです。クリップ使わずにポケットにしまうとチクチク痛そうですねえ。これホントになんでつけたんだろう?
 ブレードの鋼材はAUS-8。これは日本が作った鋼材で440Cと近似の特性を持ちます。ハンドルはステンレスですが、ハンドル自体が細く肉抜きの穴もあって、とても軽く感じます。勿論小柄薄型ということでモノロックです。
 製造はなんとベンチメイド。ホントですよ。ベンチメイドです。それだけでこのヘンチクリンなナイフは立派なタクティカルナイフです。メーカーサイトのHKプロダクト一覧を見ると、他にもAXISロックのモデルとかもあり、HKのナイフに安物が少ないのはベンチメイドが製造しているからですね。ま、コレは安物なのでブレードにも一言、Taiwan と刻印されています。ベンチメイド製品としても最も安く買えるもののひとつだと思いますが、ベンチメイドらしさはないです。またプロダクトには本家HKと同じドイツのBokerが製造しているものもあり、デザイン的な善し悪しは別としても、同じ国の最も有名なファクトリーナイフメーカーを起用するあたり、やはり他のガンメーカーとはひと味違いますね。
 リカッソを除く刃長は62mm、内セレーションが27mm、ハンドルは105mmです。Coltのものとほぼ同サイズです。フォールディングナイフとしてはこのサイズが小型で扱いやすく、種類も多いようです。

 ・Beretta Airlight II Large
 ベレッタも古くからナイフブランドを持っており、安物から高級品まで幅広いラインナップがあります。しかもガンメーカーの中では唯一まともにヨーロピアンナイフを取り扱っており、結構好感が持てます。ウチにあるのはそんなベレッタ製品では最も安物のひとつです。
 はみ出したライナーが樹脂製ハンドルを縁取るようなデザインで、M92Fに代表されるベレッタオートのスライドのごとく大幅に肉抜きされたブレードと併せて、非常に薄くて軽量なナイフです。ブレードのグラインドも丁寧でエッジも鋭く、形状そのものは典型的なクリップポイントで十分アウトドア等の実用に耐えうるものです。樹脂部分の肌触りは非常に良く、滑り止め効果は一切期待できないですが、販売価格は40ドル程度なのに高級そうな品の良さを感じます。
 鋼材はAUS-8。しかも日本産。イタリアは世界的にもいいナイフ作る国なんですが(世界流通している高品質ナイフの製造国は米国、日本、ドイツ、イタリアくらいです)、これは日本の関で作られたものです。ちなみに次に紹介するブローニングのプロダクトを見ててびっくり、ブレードの肉抜き形状等が違うだけでロゴがBrowningになってるソックリさんを発見。それも日本産。つまり製造元は同じということなんでしょうなあ。
 リカッソを除いた刃長は92mm、ハンドルの全長は120mmです。S&Wと同様に大柄な数字ですが、軽量かつ薄型のため大柄な印象はありません。薄型軽量ですがライナーロックとなっており、強度よりも見た目と軽さを重視した設計です。

 ・Browning Classic Eclipse Carbon Fiber
 欧州最大の軍産コングロマリット(笑)、FN傘下の歴史ある銃器メーカー、ブローニングもちゃんとナイフのブランド持ってます。実はガンメーカーの中でも最もまともなナイフを揃えているメーカーの一つです。ハンティングナイフが多いのですが、レミントンと違って、ハンティングナイフだけではなく、頑強なフィクスドブレード等のタクティカルぽいデザインも見られます。これはその中でもメーカー創始者であり、現代銃器の父とも呼ばれる人類史上最高の天才銃器設計者の筆頭、ジョン・モーゼス・ブローニングのサインが印刷されているカーボンファイバーハンドルの小粋な安物です。
 今回ご紹介のアンダー60ドル軍団では最も安物らしくない質感が特徴で、細身のリカーブドブレードの鋼材は440Cと平凡ながら、ブラックのコーティングはHKやColtと違って塗装然としておらず御大のサインもくっきり美しく、ボルスター(木製ハンドルによく見られるハンドルのブレード側終端の金属部分)のように見える部分はヘアライン処理にアルマイトで仕上げられ仄かに淡いグリーンを醸しハンドル内側を全面保持しています。そしてハンドルの樹脂部分は独特のテクスチャーを見せるカーボンファイバー素材で、滑り止め効果は全く期待できませんが見た目に違わぬ滑らかな手触りです。ライナーはアルミ部分に埋め込まれるようになっており、ハンドルそのものはBladeTechのMLEK程度の薄さと軽さにまとまっています。そして全体的になだらかな楕円を描くデザインになっていて、奇を衒いがちなガンメーカーのナイフ商品名としては、ネーミングセンスが抜群と言えるでしょう。写真では白く飛んじゃってますが、ピボットにはブローニングの「鹿」がプリントされています。
 リカッソを除くエッジの長さは82mm、ハンドルは117mmです。いくら質感も仕上げも値段以上とはいえ、やはり安物なので台湾製です。

 総評として簡単に印象をまとめると、ColtとSWといったビッグ2はナイフは完全に手抜き、あくまで銃で有名なメーカー名をキワモノメーカーや無名メーカーが利用しているだけの製品で、ナイフとしての価値は皆無です。HKはまともなナイフはベンチメイドの製品に蝶の代わりにHKロゴをつけているだけのものが多く、安物は残念な出来のものばかり。Berettaは清濁併せ呑むラインナップの深さは流石ですが、150ドル程度でChrisReeveで有名なW.Harseyデザインのフォルダー等もあり、日本のエアガンをオフィシャルレプリカと認定する度量がナイフにおいても発揮されていると思いました(BerettaのHarseyナイフ欲しい!)。Browningの他社より抜き出た品質は正直なところ意外でした。プロダクトを見ても結構良さそうなものがあり、やはりハンティングを生業とするメーカーは刃物にも優れていることを再認識しました。






[トップメニューに戻る] [一つ前に戻る]