■ DPx Gear HEFT6 Assault (2012/12/23)



 今回は、イタリア産で聞いたことのない鋼材、買うべきか悩んだ末に購入した微妙なフィクスドブレードです。
 DPx Gear は SOG みたいな似非タクティカルナイフのメーカーだと思ってて、今まで避けてたんですよねえ。ところが結構まともなデザイン代物が出てきました。それが今回のHEFT6。イタリア産ということで Extrema Ratio っぽくて余計にイロモノ臭くなってしまいますね・・・。
 メーカーサイトによると、HEFT は Hostile Environment Field Tool の略とのこと。イタリアでそこそこ有名な刃物製造企業である LionSteel で製造されています。気になるのは鋼材。Sleipner tool steel という未知の合金です。スレイプニルと言えば、北欧神話の八脚の馬。ご存知の通り、僕はヴァイキングの文化にかなり詳しいと自負しているので、ここではナイフよりスレイプニルについてちょっと述べてみます。スレイプニルは「滑る(ように走る)者」の意味で、その出自を大雑把に端折ると、神々の砦アースガルドを守る城壁の建造を巨人に依頼した神々が、報酬を払いたくないばかりに城壁の完成直前に納期切れとなるよう使い走りのロキという神を雌馬に変身させ、城壁の材料を運ぶ巨人の馬スヴァディルファリを誘惑させるという作戦の結果、両者の間に生まれた馬です。ちなみに作戦は成功、納期切れ=無報酬確定でブチ切れた巨人をアースの神々はこれしたりと正当防衛を口実にトールのハンマーで一撃撲殺するという非情ぶりが、北欧神話らしくて素敵なエピソードです。このスレイプニルはオーディン(北欧神話最高神と思っている人が多いですが基本的に間違いです。説明すると長いですが、要は死神です)の愛馬となり、死者の世界(ニブルヘイム)と神々の世界(アースガルド)を最速で行き来する手段として使われます。なぜ八脚なのか、というのはこの死者の世界へ向かうということが理由です。人が死んだとき、その棺の四隅を四人で持って(つまり八本の足で)運ぶからだと言われています。英雄シグルドにオーディンが与えた駿馬グラニはスレイプニルの子らしいです。
 さてそんな名前を持つ鋼材ですが、本当に資料がない。DPx のサイトではクロム7%・バナジウム0.5%・モリブデン2.5%の合金で HRC は60、D2 鋼にとてもよく似た特性だとか。D2(SKD11)はクロム11-13%、バナジウム0.2-0.5%、モリブデン0.8-1.2%であるため、D2より錆びやすそうです。メーカーサイトでも刃持ちがいいのに研ぎやすいとアピールされており、耐食性には触れられておらず、錆には気をつけた方が良さそうです。
 ブレードの厚みは5mm、リカッソを除くエッジの長さは145mm。デザインは目玉のような穴からもスパイダルコぽく、ハンドルエンドは栓抜き?(外人て栓抜き好きですよねえ。何もかもペットボトルなのは日本だけなのかしらん)と思いましたがメーカーサイトではprybar、直訳するとバールだと書かれています・・・。ハンドル材はG10でキレイに仕上げられています。滑り止め処理が一切ないのはタクティカルナイフとしては大きな減点でしょう。
 近頃安いイロモノしか紹介していませんでしたが、これはややイロモノのくせに高くて、実売200ドルちょっとといったところです。






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