ガンマニアの傍ら、たまに買っちゃうタクティカルなナイフについてのコーナーです。


▼目次▼
最初に (2007/05/02)
Colt, S&W, H&K の安物比較(2007/05/05)
Emerson Commander-BTS (2007/05/24)
Spyderco Byrd : BY03,04,07 (2007/06/12)
Emerson CQC-8-BTS/CQC-15-BTS/CQC-11-SF (2007/07/03)
Ontario RAT-7 (2007/07/08)
Bladetech M.L.E.K. (2007/07/16)
Buck/Strider SBMF, Benchmade instigator (2007/07/24)
Master of Defence NightWing (2007/08/01)
Benchmade Fixed Presidio (2007/08/09)
Microtech Currahee Green Camo (2007/08/22)
Spyderco Military (2007/09/06)
Benchmade Nimravus (2007/09/14)
Emerson mini-Commander-BT (2007/10/10)
Benchmade LFK Plain/Silver (2007/11/20)
Benchmade Leopard (2008/01/27)
Benchmade Vex (2008/04/12)
Benchmade Skirmish (2008/05/01)
Benchmade Gamer (2008/05/06)
Bladetech Pro-Hunter Extreme (2008/06/01)
Buck Rush (2008/09/13)
CRKT M16-13M Military (2008/10/13)
Benchmade Mini-Skirmish (2008/11/24)
Colt,H&K,S&W,Beretta,Browning 安物 (2009/03/12)
Kershaw Shallot ZDP189 Composite (2009/03/05)
Bladetech MLEK Magnum Extreme (2009/03/25)
CRKT MAK-1 (2009/04/19)
Benchmade Mark.Lee "Glory" (2009/07/05)
Spyderco Hossom Forester (2010/01/16)
Mission MTK-Ti Titanium (2010/02/26)
Gerber LHR (2010/04/17)
ColdSteel GI-Tanto (2010/06/12)
Spyderco AquaSolt (2010/07/04)
ZeroTolerence ZT350 (2010/08/21)
ZeroTolerence ZT9 M4 Bayonet (2010/09/11)
Buck/TOPS CSAR-T (2011/02/07)
Benchmade Nim Cab II (2011/10/01)
CRKT M21 (2011/12/01)
S&W SpecialOps M-9 Bayonet (2012/04/20)
Ultimate Equipment M1911 Folding (2012/05/09)
DPx Gear HEFT6 Assault (2012/12/23)
Benchmade Lone Wolf Trask Folding (2013/01/11)
Benchmade Harley-Davidson Madcap (2013/09/01)

記述内容に間違いや勘違いがある場合は、遠慮なくご一報ください。まだまだ勉強中なもので・・・。特に断りなく内容は適宜訂正されることがありますのでご了承ください。

ナイフ関連用語集<とりあえず暫定>
ナイフの海外通販についてのまとめ
メンテナンスについて簡潔な説明











 ■ Benchmade Harley-Davidson Madcap Fixed 4.66



 Harley-Davidsonというともちろんアメリカのバイクメーカーです。そのハーレーブランドのナイフを Benchmade が作っていて、そのデザインに一目惚れしてしまいました。
 僕はバイクには興味がないので、詳しくはわからないんですけど、Harley-Davidsonのイメージは、1.袖無しのジージャンがユニフォーム 2.スチールウールみたいな髭を顎の下に伸ばす 3.グラサンにバンダナが必須 4.持つところ(ハンドル?)が高くワキ毛が風にそよぐ というものでしかないんですが間違っていますか?
 リカーブドブレードで黒染めの後にグラインドしているため、スウェッジとグラインド面がシルバーというツートンが珍しいナイフです。ハンドルは木材でこれも黒く染められています。鋼材は440C、ブレードの厚みは4mm、リカッソを除くエッジの長さは122mm。フルタングでハンドルエンドもかっこよく尖っています。
 デザインはかなり好みで、価格も110ドル前後、米国産という買わない理由がない代物です。贅沢を言えば、ブレードをあと1か2インチ長くしたうえで厚みを5mmにして、無関係なバイクメーカーのロゴを外せば、完璧だったんですがねえ。




 ■ Benchmade Lone Wolf Trask Folding



 孤高の狼ことLoneWolfブランドのナイフがBenchmadeからでましたよ。タクティカルじゃないですが、なかなか出来がよいです。
 LoneWolfと言えばそれなりにメジャーなナイフブランドですが、TOPSと同じくあまりいいデザインがなくそれでいて高価なため、ずっと倦厭していたんですよねえ。ところがそのLonewolfブランドのナイフをBenchmadeが製造、しかもデザインはタクティカルではないものの、ユーティリティナイフとしてはいいデザインのものが何点か出ています。喜ばしいことですが、これはコラボと言うよりはLoneWolfの経営難が原因であるように思えてしまって・・・。でもコスト最優先で中国や台湾での製造はLoneWolfブランドのプライドが許さなかったのか、米国製かつお手頃価格でしかもデザインもよく、結果オーライですよ。
 ブレードの鋼材はN680。安価かつ汎用的な特性で錆びにくいという、優れた刃物鋼材です。リカッソを除くエッジの長さは85mm、ブレードの厚みは3.2mm、デザインはスウェッジのないクリップポイントで、グラインドの後が残るシルバーの肌は、木製のハンドルと良く合っています。ハンドル材として木材は古来よりよく利用されていますが、G10等の樹脂に比べると脆いうえに火にも経年劣化にも弱く、滑り止め効果も低いとなると、現代においては木目の美しさ以外には取り柄がないと言えます。でもライナーロックのフォルダーで木製ハンドルはかなり少数派なので、その質感も含めてなんだか新鮮ですよ。
 タクティカルでは必須になるヒルトに該当する窪みもチョイルもなく、突き刺すなんてことは全く念頭にない、アウトドア用ユーティリティナイフですが、なかなか気に入りました。実売は70ドル前後と大変お買い得です。




 ■  DPx Gear HEFT6 Assault



 今回は、イタリア産で聞いたことのない鋼材、買うべきか悩んだ末に購入した微妙なフィクスドブレードです。
 DPx Gear は SOG みたいな似非タクティカルナイフのメーカーだと思ってて、今まで避けてたんですよねえ。ところが結構まともなデザイン代物が出てきました。それが今回のHEFT6。イタリア産ということで Extrema Ratio っぽくて余計にイロモノ臭くなってしまいますね・・・。
 メーカーサイトによると、HEFT は Hostile Environment Field Tool の略とのこと。イタリアでそこそこ有名な刃物製造企業である LionSteel で製造されています。気になるのは鋼材。Sleipner tool steel という未知の合金です。スレイプニルと言えば、北欧神話の八脚の馬。ご存知の通り、僕はヴァイキングの文化にかなり詳しいと自負しているので、ここではナイフよりスレイプニルについてちょっと述べてみます。スレイプニルは「滑る(ように走る)者」の意味で、その出自を大雑把に端折ると、神々の砦アースガルドを守る城壁の建造を巨人に依頼した神々が、報酬を払いたくないばかりに城壁の完成直前に納期切れとなるよう使い走りのロキという神を雌馬に変身させ、城壁の材料を運ぶ巨人の馬スヴァディルファリを誘惑させるという作戦の結果、両者の間に生まれた馬です。ちなみに作戦は成功、納期切れ=無報酬確定でブチ切れた巨人をアースの神々はこれしたりと正当防衛を口実にトールのハンマーで一撃撲殺するという非情ぶりが、北欧神話らしくて素敵なエピソードです。このスレイプニルはオーディン(北欧神話最高神と思っている人が多いですが基本的に間違いです。説明すると長いですが、要は死神です)の愛馬となり、死者の世界(ニブルヘイム)と神々の世界(アースガルド)を最速で行き来する手段として使われます。なぜ八脚なのか、というのはこの死者の世界へ向かうということが理由です。人が死んだとき、その棺の四隅を四人で持って(つまり八本の足で)運ぶからだと言われています。英雄シグルドにオーディンが与えた駿馬グラニはスレイプニルの子らしいです。
 さてそんな名前を持つ鋼材ですが、本当に資料がない。DPx のサイトではクロム7%・バナジウム0.5%・モリブデン2.5%の合金で HRC は60、D2 鋼にとてもよく似た特性だとか。D2(SKD11)はクロム11-13%、バナジウム0.2-0.5%、モリブデン0.8-1.2%であるため、D2より錆びやすそうです。メーカーサイトでも刃持ちがいいのに研ぎやすいとアピールされており、耐食性には触れられておらず、錆には気をつけた方が良さそうです。
 ブレードの厚みは5mm、リカッソを除くエッジの長さは145mm。デザインは目玉のような穴からもスパイダルコぽく、ハンドルエンドは栓抜き?(外人て栓抜き好きですよねえ。何もかもペットボトルなのは日本だけなのかしらん)と思いましたがメーカーサイトではprybar、直訳するとバールだと書かれています・・・。ハンドル材はG10でキレイに仕上げられています。滑り止め処理が一切ないのはタクティカルナイフとしては大きな減点でしょう。
 近頃安いイロモノしか紹介していませんでしたが、これはややイロモノのくせに高くて、実売200ドルちょっとといったところです。




 ■ Ultimate Equipment M1911 Standard Folding



 なんだかハンドルのごついフォルダーだなあ・・・、でもなんだろう、このハンドル幼い頃から慣れ親しんでいるような気がする・・・。
 ナイフのハンドル材をM1911のグリップパネルにしてしまった異色のナイフです。こういうアイデア、本家Coltから出て欲しかった。でもColtのナイフはUnitedCutlery、イロモノ専業でも方向性が違いすぎたか・・・。
 メーカーは Ultimate Equipment というところで、僕もこの製品で初めて知ったメーカーです。製品はナイフとしては珍しいカナダ製。本来ハンドルエンドは細く絞られるものですが、ご覧の通りM1911のグリップがそのまま貼り付いてるんでナイフとしては不細工な形です。製品に同梱されていたパンフレットによるとフィクスドブレードのモデルもあるようです。
 エッジの長さは8.6cm、ブレードの厚みは4mm、鋼材は440C。フォルダーとしては大柄ですが、ハンドルもごついのでバランスは悪くないです。オーソドックスなドロップポイントにホローグラインドというのも、奇を衒わない感じがガバに通じるものがあると感じなくもないです。ロッキングシステムはハンマーヘッドロックという聞いたことのないものですが、要はロックバックの変形バージョンです。ロックバックの場合、シーソーの動きをするロックバーを解除するときはハンドルエンドの方を押し下げることで、エッジ側のバーの端が持ち上がって解除される仕組みですが、ハンマーヘッドロックはロックバーのエッジ側を直接持ち上げることで解除します。しかしこのロックが固くて片手での解除はほぼ不可能、おまけに畳むときに手を挟みそうで危険という、いいとこなしのメカニズムです。解除用のレバーがマグキャッチみたいになっているのがガバっぽくていいんですが、それならいっそライナーロックにしてしまって、サムスタッドとしてマグキャッチと同型状のものをブレードに固定し、畳んだときにちょうどグリップのマグキャッチ用の切り欠きに填るようにすれば、最高にガバっぽくてよかったと思うんですがねえ・・・。
 購入したのはシルバーでローズウッドグリップ付属のもの。黒染めモデルは写真で見る限り非常に安っぽい仕上げに見えました。で、もちろんガンマニアなら一つ二つは絶対に余っているガバのグリップで着せ替えを楽しめます(左上写真)。でも注意が必要なのは、WA用などのスクリューの孔が細いグリップは広げないと填りません(下写真左)。ちょうどWAのSW1911PDに付属していたヘレッツ製のグリップが余っていたのでつけてみたところ、これが一番いい感じでした。下写真真ん中はそのグリップつけて閉じたところ。ちなみに下写真右端はガバのグリップと厚みを比較したもの。ナイフとしては分厚くてもガバと比べれば薄いので、握ったときに「これはまさしくガバだ」と感動することはまずありません。






 ■ S&W SpecialOps M-9 Bayonet



 センスの悪いSWのナイフ、今回は安かろう悪かろう、でもデザインはタクティカルっぽいバヨネットです。
 ZT9に続いて二本目のバヨネット(銃剣)です。しかしZT9と比べると天地の差がある安物なんですが・・・。購入価格は58ドル。何故か最近の実売価格が300ドル超になっているZT9と比べるのはZT9に失礼ですけどね。製造は他のSWブランドと同じくテイラーカトラリーで台湾製。
 鋼材は440C。この値段ならむしろ嬉しいくらいです。バヨネットは1095等のハイカーボンスチールで作られることが多く、ステンレス鋼は圧倒的少数派です。ブレードの厚みはなんと6mm。安いくせにかなり頼もしいブレードです。エッジの長さは173mm。かなりダルい刃付けで、普通のレジ袋ですらスムーズに切れません。スパインはソーバックのようになっていますが、ギザギザしているだけで鋸歯になっておらず、多少傾斜しているものの厚みが3mmもあります。バヨネットはサバイバルナイフとしても使えるように、ソーバックになっているものが多いですが、これは格好だけ真似てみたと言いたげな、いかにもSWナイフですねえ。
 左写真の一枚目、安っぽいナイロン製ハンドルを外したところです。初めてフルタングではないフィクスドブレードを買ってしまいました。しかもタングのように見えるハンドル内部の大半を占める円筒状の部分はブレードとは別パーツで、なんと接着剤で固定されています。M4にとってバヨネットは飾り、しかも当然軍用に使われるはずもないSWブランドとなれば、まあこんなものなんでしょうねえ・・・。
 ちなみに左写真二枚目はZT9と並べてみたもの。ZT9はパラコード巻いたままになってます(笑)。ブレードの厚みやサイズは殆ど同じですが、かたやバヨネットとしても普通のナイフとしても十分すぎる実用性と耐久性があり、もう片方はなんとかバヨネットとしては使える程度ものという感じで、ZT9の出来の良さを改めて見直すばかりですね。ただ下写真のようにM4に着剣してみると、意外にサマになっていて、やっぱりバヨネットって飾りなんだなあ、とつくづく思いました。





 ■ CRKT M21 (M2104)



 無性に新しいリカーブドブレードが欲しくなって、以前購入したM16の出来が予想以上によかったCRKTのM21を買ってみました。
 カーソンフリッパーという機構になっており、クローズ時にスパイン側に飛び出すヒルトを人差し指で押すことによって素早いオープンを可能にしているのはM16と全く同じ。AutoLAWKSというライナーが外れないようになっている(反面畳むのに手間がかかる)機構も全く同じ。M16と違って大型モデルにプレーンエッジのモデルがあるのはいいことだと思います。個人的にリカーブドでフォルダーでコンボエッジはEmerson以外しっくりこない気がするんですよねえ・・・。
 鋼材はAUS8、CRKTなのでもちろん台湾製。リカッソを除くエッジの長さは97mm、ブレードの厚みは3.5mm。手持ちのM16よりは一回り大きいものになります。M16シリーズは大中小(実際のプロダクトは3.3〜3.9インチ)とあり、手持ちのものはちょうど「中」サイズ。M21は3インチと4インチのラインアップがあり、今回購入したのは4インチモデル。3インチモデルはブレードの厚みも3mmとなり、M16に近いサイズになるようです。ハンドル材はG10モデルとアルミモデルがあり、品のないダブルヒルトのモデルもあります。
 全体的に大柄でフォルダーとしては3.5mmという厚めのリカーブドブレード、実売60ドル以下の製品としては作りも仕上げもよく、鋼材や製造国を気にしなければ非常にいいナイフだといえるでしょう。
 M16にM21、なぜかライフルの名前なんですが、なぜにM21なのか・・・(M21はM14のスナイパーカスタムで制式名はあるものの、かなりマイナーですよね)。ちなみに上の写真はM14どころか、7.62mmのライフルがなかったので、大昔のJAC製FALをリストアしたものと一緒に撮りました。FALすごい好きなんですが・・・WEあたりにガスブローバックで出して欲しいものです。




 ■ Benchmade Nim Cab II


 薄くて小さくて軽い、それでいてしっかりとしたタクティカルフィクスドブレード。ご存じNimravusのショートバージョンです。
 リカッソを除くブレード長は86mm、ブレードの厚みはNimravusと同じく3mm。左写真を見て頂ければわかるように、フルサイズのNimravusよりも一回り小さいです。しかしブレードの厚みはそのまま。元々Nimravusはブレードの大きさの割に厚みがないことが唯一の不満点でしたが、Cabのサイズだと適正な厚みに感じられます。
 Nimravus買ったときに、CabでATS-34のプレーンを探したが見つからなかったわけですが、このたび再生産されたのは鋼材が154CM。とはいえD2よりはずっといい鋼材なんで購入に踏み切りました。ハンドル材はG10。このハンドルはタングの処理と併せてフルサイズのほうが格好いいですね。
 実売価格は120ドル前後とフルサイズのNimravusと大して変わらないお値段です。Nimravusのバリエーションは個人的には厚みが5mmでフルサイズよりもう少し長い15cmオーバーのブレードのモデルがあればいいなあと思うんですがね・・・。




 ■ Buck/TOPS CSAR-T


 BuckがTOPSとのコラボレーションで発売したごついというかやたら分厚い重量級フォルダーです。
 TOPSはミリタリーカスタムナイフメーカーの老舗で、いまいち垢抜けないデザインで鋼材も440Cが中心なのにやたら高い値段のナイフが多くて全然気にしていなかったんですが、BuckとのコラボでなかなかいいデザインでATS-34で100ドル以下のお手頃価格というTOPSらしくないフォルダーが出たので、あっさり注文してみました。
 ブレードは丸みを帯びたタントポイントで、エッジの長さ8.9cm、ブレードの厚み4.4mm、ハンドルの厚み12.7mmという、僕のような軽くて薄いのがフォルダーの信条と思っている人を鼻で笑うような代物です。しかしながら昨今ファクトリーナイフでは殆ど見かけなくなったATS-34で4mm超というブレードは惚れ惚れします。
 最初の数ロットはプレミアムステンレスで、その後は値段を大幅に下げて安い鋼材に移行するというのが通例のBuckの販売スタイルですが、このナイフも既に420HCで厚みが3mm程度の廉価版(70ドル前後)が出ています。廉価版も米国製ではありますが、魅力は8割引といえるでしょう。





 ■ ZeroTolerence ZT9 M4 Bayonet


 バヨネットです。ナイフを蒐集するガンマニアとしては意外なことに、バヨネットすなわち「銃剣」が今まで一つもなかったんですよねえ。今回はZeroToleranceとStriderのコラボで、M4に銃剣という「つけれるはずだけどつけたの見たことないなあ」という取り合わせです。
 バヨネットはライフルが槍の代替でもあった頃の遺物で、昨今子供向けのゲームでたまに見かける「剣に銃が組み込まれたらカッケーじゃん!ゲロゲロリ」みたいな発想というよりは、最終的に接近戦になったときには撃つより突き刺した方が手っ取り早い状況のための装備です。しかし銃剣が必須とされたのは塹壕が掘られた一次大戦時までで、それ以降は徐々に戦場では銃剣が必要になる状況が減少していき、現在では全く使われなくなってしまいました。しかしベトナム戦争時代に生まれたM16にはまだ伝統(?)が辛うじて残っていたため、バヨネットの取り付けが可能になっており、このM16から進化した現在の米軍制式ライフルであるM4にもそのままバヨネットが取り付けられます。
 左写真、一番上がM4に着剣した状態。実は手持ちのM16/AR15系のエアガンは全部で5丁ありますが、どれもバヨネットが取り付けられない。M203がついてるのが1丁、バレルが14インチ以下なのが3丁、延長レールでバヨネットラグが埋まってるのが1丁。そこで外装取り替えまくってセミの抜け殻のようにガワだけ形になるWAのM4のフロント部分に、10.5インチバレルを14インチバレルにするエアガンならではの延長バレルを取り付けて撮った写真というわけです。寸法が微妙に異なるので、実際は15インチほどになってしまっているようで、本来フラッシュハイダーの溝に填るはずのリングがフラッシュハイダーの付け根にきていますが、まあだいたいこんな感じになるということで。
 左写真上から2番目はハンドルエンドのバヨネットラグに噛み付く部分。スチール製(ODのハンドル材はG10)です。実は取り付けは僅かに寸法が合わず、取り付けようとしたWAのフロントサイトは樹脂製なので、削ってやって漸く入りました。WAの寸法が実銃とは違うのかもしれません。
 ハンドルは本来ナイフとして使うよりはバヨネットとしての機能を重視したものなので、取り外してパラコード巻きました。その際取り外した状態が左写真3番目。発射の衝撃に耐えられるように、各ネジの締め付けの固さは尋常じゃなく、分解にはかなり手間取りました。美しいまでにシンプルなフルタングですね。
 エッジの長さは160mm、うちセレーションは26mm、厚みは5mm。鋼材はS30V。表面はストーンウォッシュ仕上げで軍用ナイフという雰囲気を放つ肌です。左写真最下段ですが、このナイフには貝印の「KAI」ロゴがありません。セレーションなしモデルがない点もミリタリーナイフであると強調しているように感じられます。
 ちなみにZTはKenOnionとStriderがタイアップしたブランドだと言われている場合がありますが、ZTのサイトや海外の情報を見る限り、Striderが関係しているという記述は見当たりません。現在ZTでStriderとのコラボはこのZT9とコードカッターのみ、特にこのZT9は飽きのこないシンプルなデザインながら質実剛健、Striderデザインがあまり好きではない僕にも、実にグッとくる代物です。実売価格は200ドル超と、安いナイフではありませんが、まともな鋼材で卓越したデザインのバヨネットとしては唯一です。特にバヨネットはケーバーのような古くさく安っぽいものしかないため、M4好きなガンマニアにはたまらないアクセサリです。


タンのパラコードをStrider風に巻いてみた。実質ヒルトがないため重ねて巻くとバランスが悪くなったため下地の巻きはナシ。



 ■ ZeroTolerence ZT350


 タクティカルナイフブランドのニューフェイス、ZTが漸く手元にっ!
 ZTことZeroToleranceは貝印の米国法人KAI-USAがつい最近つくったタクティカルナイフブランドです。メインデザイナーは Ken Onion。あれ?それってKershawじゃ・・・。気を取り直して、この度チョイスしたZTは二本、アシストフォルダーのZT350とバヨネットのZT-9。今回はそのうち小さい方のZT350です。
 見た目はEmersonぽいですが、幅広のブレードはBenchmadeのSkirmishぽい。個人的には最高に「アリ」な組み合わせです。ブレードはドロップポイントでリカーブド、鋼材はS30V。ハンドルはG10。ライナーロックが分厚く、Emersonよりしっかりした作りですが、大きさの割に重量があります。アシストオープニングで、CRKTのカーソンフリッパーのようにして開きます。ブレードの厚みは3mm、エッジの長さは85mm。ハンドルの厚みは13mm程度。全体的なサイズはMini-Commanderと同じくらいです。個人的にKen Onionのデザインは特にハンドルがどうしようもなくダサいんで好きじゃないんですが、このZT350はZTのフォルダーの中でも唯一かっこいいハンドルです。ブレードの厚みが4mmになるZT301や302も悪くないんですが、トカゲの背中みたいなモールドの丸みを帯びたハンドルは萎えます(高いし)。Emersonタイプのハンドルがやはり最高です。
 実売110ドルとS30Vのまともなタクティカルナイフでは安い方です。ちなみにEl-maxという鋼材のモデルもあり、これはKershawみたいなコンポジットブレードです。聞いたことない鋼材ですがどうやら金型に使うステンレス鋼材で、HRCは60前後になるようです。


左上:ミニコマとの比較。小柄だが幅広。 右上:貝印のロゴ。Kershawと同じ。左下:反対側。 右下:畳んだ状態。




 ■ Spyderco AquaSolt


 錆びないナイフ・・・それは人類最大の夢の一つ(再び断言)。金属である以上、錆びは必ず発生しますが、今回はよくわからない理論で錆びないと断言されている新鋼材のナイフです。
 Spydercoによると「炭素の代わりに窒素を含有させたため錆びない」という胡散臭い鋼材がH1鋼です。チタンと違ってHRCも高く、60前後あると言われています。その上高価ではなく、このAquaSoltも実売70ドル前後です。錆びなく刃持ちもいい、Spydercoの主張通りだとすれば理想的なナイフ鋼材だと思うんですが・・・。
 たしかに、購入後半年以上オイルも塗らずに放置、後述のハンドルの取り外しのためにブレードも汗ばんだ手でベタベタ触りまくってるのに、錆びる気配はまるでなしです。錆びないかどうかは別としても、恐ろしく錆びに強いのは確かなようです。
 エッジの長さは115mm、厚みは3mm。タクティカルナイフではなく、ダイビングやアウトドア用のナイフなので頼りなさげでも十分でしょう。
 ハンドルはFRN(ファイバーグラス入りナイロン)で、ファスニングボルトで留められているわけではなく、タングに直接形成されているため取り外し不可能。このハンドルがあまりにかっこ悪かったのでなんとか取り外そうと苦労しました。最初は糸鋸でスパイン側に切れ目入れて開こうと思いましたが、FRNが意外と固くてうまくいかない。次にグラインダーで削ってみましたが、削れるより先に熱で溶けてしまいなかなか削れない。熱に弱いなら、と半田ごてで溶かしてはぎ取りました。
 右写真の上がオリジナルのハンドル状態。で、はぎ取ってタング露出した状態がその下。タングの細さに唖然としました。これじゃパラコード巻けない・・・。仕方ないので3mmのアクリル角材を買ってきて、ハンドルの形を整えるようにして中に入れて巻きました。なので、一番上の写真はパラコードで巻いていますが、中にはアクリルが仕込まれています。
 ちなみに日本産です。メンテナンスフリーで、ちゃんとしたナイフメーカーで日本製、激安ではないけど高価でもない、普通にアウトドア用のナイフとしては結構理想的ではないでしょうか。




 ■ ColdSteel GI-Tanto


 Striderもどきです。ハンドルもStriderを真似てパラコードで巻いた上、ブレードもプラモ用スプレーでストライプにして、とことんStriderもどきにしてみました。
 ColdSteelのGI-TantoはStriderデザインのコピーで中国産、何よりも実売20ドル前後という価格の安さ。鋼材は1095ハイカーボンスチールなので錆には弱いし、エッジの長さが145mmという大柄なブレードの厚みが4mmという微妙な感じも、安さ故に目をつぶろうかといったところです。
 ハンドルは安っぽい樹脂製ですが、タングが完全にまっすぐなので、パラコードの巻きやすいことと言ったら。個人的にはリカーブドブレードが好きなんで、Striderのデザインはあまりぐっとこないんですが、国内で5万円前後のStriderの雰囲気をお手軽に2千円ほどで味わうことができて、意外と満足ですよ。




 ■ Gerber LHR Combat Knife


 そういえばChrisReeveのナイフがまだですが、先にGerberのChrisReeveデザインを紹介しちゃいます。
 LHRは Larsen-Harsey-Reeve の略でこのプロダクトデザインを行った3人の頭文字です。Matt Larsen は軍教官、William Harsey と Chris Reeve は言わずもがなのナイフメーカーです。
 企業としてのChrisReeveの製品はカスタムナイフに近いものなので、どうしても価格が高くなります。このクラスのフィクスドブレードだと300ドル以上になるはずです。Gerberはパチくさいデザインの中国製ナイフばかり作っているアウトドアブランドのメーカーですが、その原点は高品質のナイフにあり、今年のShotshowでは少しその頃を思い出したのかまともなナイフを発表しました。それがこのLHRなんですが、Gerberなのにミリタリーデザインでアメリカ製、そしてGerberなので実売価格は120ドル前後とお買い得なお値段です。
 惜しむらくは鋼材。できるだけコストを抑えるためなのか420HCです。あと30ドル程度高くしてもいいので、せめて440C、できれば154CMあたりで作って欲しかったと悔やまれて仕方がないです。ブレードのデザインはリカーブドでもなく無難なコンボエッジのクリップポイントでChrisReeveのPacificに似ています。リカッソを除くエッジの長さは160mm、うちセレーションが30mm、ブレードの厚みは5mmで勿論フルタング。ちょっとヒルトが高すぎる気がしないでもないですが・・・。ハンドルはラバーコーティングされており、見た目のデザインはいまいちですが、持った感じは意外と手に馴染みます。
 BuckのStriderナイフのような感じで、いくつかGerberからChrisReeveなプロダクトが出てくれば買いやすくてうれしいなあと思いますが、今回限りのコラボレーションのようなので期待薄です。




 ■ Mission MTK-Ti Titanium Knife


 錆びないナイフ・・・それは人類最大の夢の一つ(断言)。金属である以上、錆びは必ず発生しますが、今回は5年以上海水に浸しても錆びないと言われている特殊鋼材のナイフです。
 Missionはチタニウムブレードで有名なメーカーですが、鋼材そのものが高価であるためナイフもかなり高額になってしまい、今まで手が出せずにおりました。
 チタンは刃物鋼には全く適さない金属です。50年前のSFでは超硬度の金属素材というイメージが定番でしたが、純チタンは硬くない金属です。50年前には産出地が旧共産圏に集中していることによる冷戦時代のアメリカにおける入手性の低さ故にそういった都市伝説が蔓延したようです。チタンにアルミやバナジウムを加えたベータチタニウム合金(Ti-6Al-4V)で漸く焼き入れ性を持ち、刃物鋼として使用できなくはない硬度を得ることができました。それでもHRCは50前後であり、決して刃物鋼としてはいいものではありません。しかしながらベータチタニウムは軽く(比重はエアクラフトアルミの約1.6倍、440等のステンレスの0.6倍)、錆びない(通常の錆びとは違い酸化皮膜が強固で内部への腐食を防ぐ)という大きな特徴があり、高級ダイバーズナイフや海軍特殊部隊向けのナイフの鋼材に利用されています。
 チタンの加工品はどれも高価ですが、ナイフもそれに漏れず、Missionのナイフは500ドル程度のものが多いなか、今回のMTK-Tiは実売250ドル前後というお値打ちもの。尤ももう少し安いチタニウムブレードもプロダクトにありますが、いかにもミリタリー然としたデザインであるこのMTK-Tiにした次第。典型的なタントポイントで厚みが6.4mmもあるベータチタニウムブレードは見た目よりずっと軽い。エッジの長さは126mm。ハンドルはパラコードで巻いてありますが、ストライダーとは違った巻き方で、裏側はちょっと寂しい感じ・・・。
 軽くて錆びない、それだけがメリットのベータチタニウムブレード、軽くはないが錆びずに刃持ちもいいH1鋼の方が魅力的ですが、登場間もないH1に比べての実績やチタンという響きだけで得られるこの充足感は格別ですなあ・・・。




 ■ Spyderco Hossom Forester


 鉈? いえいえナイフです。スパイダルコの9インチブレード。マジでかい。
 マシェットは余り好きじゃないんですよねえ。マシェット(マシェーテ)とはジャングルを進むときに下生えを薙ぎ払うために使う刃物で、薄く長いブレードにあまり鋭くないエッジを持ち、ナイフとは根本的に異なるものです。刃渡りは通常40cm程度の長さで1095ハイカーボンスチールのような安く粘りのある鋼材が使用されます。エッジさえシャープにすれば、刀のように使うこともできるので映画などでもよく見かけますが、形状が山刀としての範疇を外れるものは日本の法的にはかなり濃いグレーになる代物です。確かに武器としては迫力がありますが、手に持つと厚みが3mm程度しかないブレードの頼りなさは否めません。
 前回のMarkLeeもそうですが、ジャングル等でのサバイバルナイフとしてマシェット風のブレードデザインを持つナイフがあり、今回もそんなものの一つです。
 シリーズとして7インチや4インチもありますが、今回は男気を出して(?)9インチを注文してみました。エッジの長さは234mm、ブレードの厚みは5mm、ナイフと呼べる限界近い大きさです。鋼材は440Cに近い特性を持ちながらそれ以上に錆びにくいN690。ハンドル材は綺麗なグリーンのマイカルタ。全長は40cm近く、勿論フルタングで、マシェットのように振り回すには骨の折れる重さになります。ブレードはフラットグラインドで仕上げも美しく、実売120ドルにしてはかなり上質です。基本外注のスパイダルコとしても珍しいイタリア産です。
 左写真の下の方は大きさの比較のために、同じくN690ブレードでBanchmadeのGamerといつものEmarsonCommanderを並べたもの。バランスを取るためでしょうが、ハンドルまで大きいので、最初の写真のように単体では大きさが伝わりにくいんですね・・・。
 この大きさは結構迫力があって気には入りましたが、個人的にはフィクスドブレードは15cm前後が一番バランスがいいと思っています。ミリタリーデザインではないながらも、リカーブドなのに大人しく見えるのはなんともスパイダルコらしいですね。




 ■ Benchmade Marc.Lee "Glory" Commemorative Combat Knife


 この春にベンチメイドが久しぶりにミリタリーデザインを出したので、衝動買いしてしまいました。
 Mark.Leeというイラクとの戦争で戦死した海軍特殊部隊SEALsの隊員を追悼するプロダクトだということです。同じコンセプトで各社からいくつかナイフが発表されていますが、その中でも安物ではなく、かといって1000ドル超の高級品でもないまともなデザインのナイフはかなり限られます。
 ブレードはリカーブドでマシェット(鉈)のようなデザインになっており、鋼材は154CM、厚みは5mm、リカッソを除くエッジの長さは155mm。かなり大柄でありながら、しっかりとした厚みがあり、そのデザインからもかなりラフな扱いにも耐えられそうです。メーカーサイトには雑誌記事の抜粋が紹介されており、それを見る限りでは耐えられると断言してもよさそうですが・・・。勿論フルタングでハンドルの材質は公表なしですが、キシキシしていないので、G10ではなくザイテルじゃないかと思います。ハンドルは独特のモールドをしていますが、滑り止めとしての効果は薄く実用的ではありません。
 海外のサイトで見つけ次第衝動買いしてしまったためか、僕としては初めての「初回限定版」でした。FirstProductionとして251本限定のうち何番目かがブレードに記されています。これはSEALsの訓練のひとつ BUD/S (Basic Underwater Demolition/SEAL) でのMark.Leeのクラス番号251にちなんだもので、ブレードにもSEALsのロゴとともにそのクラス番号と、イラクにて戦死した日時がプリントされています。ファクトリーナイフでこのデザインなんでプレミアってものはないでしょうが、特別な感じがしてうれしいですね、コレ。
 日本国内でも販売しているところはあるようで、3万円前後するようです。海外通販でも200ドル以上するため、決して安いナイフではありませんが、大柄なブレードは他にないデザインで非常に存在感があり、タクティカル好きには逃せない一本だと思います。




 ■ CRKT MAK-1


 出刃包丁? いやいやベテランの消防士が設計したという最もカッコいいレスキューナイフですよ。
 独特のデザインを持つフィクスドブレードですが、自動車事故の際に必要な機能を詰め込んだかなり真面目なレスキューナイフです。
 まず真っ先に目を奪われる出刃包丁のようなポイントはエッジがついておらず、歪んで開かなくなったドアをこじ開けるための鏨(たがね;チゼル)になっています。それでもドアが開けられない場合、ガラスを粉砕するためにハンドルエンドにはカーバイドのグラスブレーカーが取り付けられており、さらに内部へのガラス飛散を最小限にする必要が有る場合は、捻ってガラスを引き剥がすように除去するための凹みも設けられています。この凹みは8mmのレンチも兼ねており、これは米国の一般的な自動車のバッテリーを取り外すためのものとのこと。派手なオレンジに光を反射する素材が編み込まれたランヤードは付属です。
 ベルトカッターがセットになったモデルや、黒染めされたモデルもあるんですが、このシルバーの単体が特価44ドルだったんで・・・。たいていは60ドル前後で販売されています。
 ブレードはフロントガラスを切開できる強靱さを得るために5mmの厚みを持ち、鋼材は3Cr13。中国産のため中国鋼材ですが、馴染みのある別名は420J。HRCは52〜55で、そんなに堅くないわけですが、自動車ってそんなに頑丈ではないらしいんで、むしろ粘りのほうが必要になるんでしょうね。エッジの長さは78mm。ハンドルは手に食い込むほど角の立ったG10。
 左写真上は真っ平らなブレード反対側。そのまんまチゼルグラインドなんで、こちらから見るとナイフとは思えません。左写真中央はフルタング構造がよくわかると思いますが、それ以上にこの大きさで5mm丁度の厚みはかなり頼りがいがあります。手に持った重量感もかなりのもので、アーバンタクティカルという囲いで考えても、かなり理にかなったデザインと言えるでしょう。左写真下はグラスブレーカーとレンチ部分。ガラスを割ることに三つ方法を用意しているナイフなんて見たことありません。ポイントで叩き割る、グラスブレーカーを押しつける、レンチ部分で剥ぎ取る。万が一の場合に備えて、自分の運転する車に常備しておきたい逸品ですが、日本では違法になるのでお家に置いておきましょう。そしてその万が一の場合は、車内に取り残されて死ぬまでの間ずっと銃刀法の不条理さを恨みましょう。




 ■ Bladetech MLEK Magnum Extreme


 この春は不況の影響で僕もすっかりお金がないのに、欲しいナイフが何本も流通し始めてしまい、結果1ヶ月に3回も国際小包が手元に届く羽目に・・・(笑)。
 MLEKです。2008年新モデルだったはずの Magnum シリーズですが、2009年になって漸く出回り始めましたので、前回のProHunterのときに気に入った、グリーンハンドルのExtremeモデルを買ってみました。ちなみに上の写真、グリーンフレームに交換して、ブラック&グリーンのミリタリーツートンになってるマルイグロック17と並べて写真撮ったんですが、殆ど写ってないですね・・・。
 鋼材がS30Vという点も含めて、サイズ等のプロファイルは初代MLEKと同じで、違いはブレード側面のグラインドですね。Magnumシリーズになって、ほぼ全面フラットグラインドになっており、非常にスマートな印象になっています。
 右写真上側は初代MLEKとのグラインド部の違いです。初代MLEKはExtremeではないため、銀無垢でちょっとわかりにくいですが、特徴的な恐竜の頭蓋骨の眼窩のようなサムホールあたりでグラインドの境界位置が違っています。
 右写真下側は、MLEKとProHunterと3本並べてみました。DLCコーティングは相変わらず地肌が透けるほど薄く、ムラがあります。ブレード側面のグラインドが大きい分、ブレードは軽量化されており、逆に言えば強度も下がっていると言えますが、ハンドルが薄く軽量であるため、こちらの方が全体的なバランスは良くなっています。オブバース側にあるデザイナーの Tim Wegner の名前が活字から本人のサインに変わっており、またMLEKのロゴもちょっとカッコ良くなっています。クリップやソングホールの金属部分は黒染めですが、ライナーだけはブラスト処理だけになっており、黒染めではありません。
 Magnumシリーズの登場と同時に、Classicというシリーズで旧型のデザインで鋼材を154CMにしたものがとてもリーズナブルなお値段で販売開始されています。台湾製になりますが、安くてまともな鋼材かつ理想的なデザインということで、アウトドアで気兼ねなく使えそうですねえ。Magnumシリーズが従来ものと同じく実売150〜180ドル程度、Classicは80ドル前後と概ね半額です。機会があれば買ってみようと思っています。余談ですが Rijback も去年末に注文してみたんですが、どうやら生産中止あるいは休止状態らしく、3ヶ月待っても入荷しなかったため、どうしても欲しいナイフでもないんでキャンセルしました。また今度見かけたら注文してみようかなあ・・・。


春のミリタリーナイフ祭り(笑)。上は Benchmade Marc.Lee Glory Commemorative Combat Knife で、下が Chris Reeve Neil Roberts Warrior Knife。
この二つの Navy SEALs の英雄追悼品については後日詳細をお届けしたいと思っています。




 ■ Kershaw Shallot ZDP189 Composite


 カーショウです。調子に乗ってまたもやアシストオープニングです。しかもコンポジットブレードとかいう構造です。
 カーショウは1974年にガーバーの役員が独立して興したメーカーです。製造は日本のカミソリで有名な貝印が行い、1978年頃にその貝印によって買収され、現在は貝印の米国法人の持つブランドの一つとなっています。貝印は日本最大の刃物メーカーですが、ファクトリーナイフという市場が殆ど存在しない日本ではナイフの販売は行っておらず、1996年からはナイフの生産をアメリカで行い、カーショウブランドは安くても高品質な米国産をウリにしてアメリカでの人気は結構高いようです。
 デザインが好みのものが少なく、僕としては殆ど注目していないのですが、鋼材がZDP189のコンポジットとのことで珍しいもの見たさで一つ買ってしまいました。注文してから気づいたのですが、BuckのRushとおなじくアシストオープニングです。今回もすんなり届いたので、グレーゾーンってことなんでしょうねえ。しかし両刃のナイフみたいに、いついきなり破棄しろとか法律改悪されそうで怖い・・・。クローズの状態から少し飛び出たヒルト(キリオン)を押して30度くらい開けばあとは一瞬でオープンします。不用意に開かないようにするロック機構のような安全装置の類はありませんが、30度という大きめのマージンで安全性を確保しているということにしておきましょう。
 このShallotはブレードの鋼材が多種多様で、標準では13C26という中国鋼材よりはマシ程度の鋼材ですが、ダマスカスや耐腐食性に優れたS110V等のレパートリーがあり、今回購入したのはZDP189と14CZNのコンポジット、つまり複合素材というやつです。写真で見た頂ければ一目瞭然、ブレードにある波目模様が接着剤で、エッジがZDP189でスパイン側が14CZNです。何かの拍子に接着剤のところで分離しそうで心配するのは当然で、これならクラッド構造にした方が良かったんじゃないかと思います。価格的にもブレード全体をZDP189にするのは無理だったんでしょうか・・・。価格は13C26のもので40ドル前後、ダマスカスとこのZDP189が80ドル前後、S110Vが120ドル前後になっています。また14CZNはいろいろ検索してみましたが、詳細がわからずおそらくナイフ用の鋼材ではなさそうです。ともあれ、異端の鋼材の一つZDP189がウチにもついにやってきたということを素直に喜んでおきます。ZDP189はHRC68前後というナイフ鋼材としては超硬度のもので、耐腐食性も440Cより若干優れていますが、粘りがなく欠けやすいという特性を持っています。
 ブレードは細身のリカーブドで、リカッソを除いた刃長は88mm。モノロック構造のハンドルは素材不明、長さは118mmです。ブレードの厚みは2.4mm、ハンドル部の厚みは8.2mmとスリムデザインとなっています。
 手頃な値段で無難なデザインのZDP189は現在このナイフくらいしか有りません。アシストオープニングはちょっとどうかなと思いますが、どうしたところであまりインパクトのあるナイフではないですね。




 ■ ガンメーカー5社のタクティカルナイフ


 さて以前の内容を大幅に加筆修正し、さらに2社加えた合計5社でご紹介します。メンツはColt、H&K、S&W、Beretta、Browningです。しかもちゃんとレギュレーションがあって、「購入価格が60ドル以下のタクティカルフォルダー」であること。ちなみに他にもレミントンやSIGなどもナイフブランドを持っていますが、タクティカルではなかったりデザインがあまりにもダサすぎる等の理由で購入を見送りました。

 ・Colt Cobra2 Tactical
 Coltのナイフは製品名に銃と同じ型式をつけたものが多く、M4やPythonなんかもあります。で、ウチにあるのはCobra。KingCobraじゃなくて?と思ってネットで検索してみたら、38Superのリボルバーが見つかりました。
 クリップポイントをモディファイして突き刺しやすくしたタントーという形状に、セレーション(鉄砲用語ではスライドの滑り止めや反射防止のための溝ですが、ナイフでは波刃のことを指します)もセレーションというか変な切り込みがMの字のように入っています。ブレードが90度付近(ちょうど真ん中あたり)まで開くと1カ所だけそこで抵抗があって止めることができるようになっています。つまりは開きかけでColtのロゴが見える状態のまま飾っておくことができるという案配です。ま、変な形のセレーションといい観賞用のギミックです。
 ブレードの鋼材は黒塗装の440C、ハンドルは黒染めの航空機用アルミ。そして安物のくせになんと Made in USA と誇らしげにブレードに書いてあります。意外にもしっかりした造りで、オーソドックスなライナーロックです。
 製造はユナイテッドカトラリー。ナイフ業界では有名なイロモノが得意なメーカーです。肉抜きの穴のあいたタクティカル(?)なブレードと洋風鍔にライトセーバーみたいなハンドルの日本刀「Samurai3000」、日本語でブラックドラゴンを意味する名をつけられた「YoruDragon」、同じくグリーンドラゴンの意味を持つ両刃の日本刀(!)「AoDragon」他にも「Rurousha」(日本語でノーマッドの意味;え〜!?)「Kogane」(日本語で黄金の意味;これは合ってる)「Shikyo」(日本語で死の意味;誰か漢字わかったら教えてください)、他にもイロモノキワモノがたくさんあると思うんですが、オフィシャルサイトからは現在プロダクト一覧が参照できなくなっており、残念ながら確認できません。他のメーカーと違って笑えるアイテムが目白押しのハズなだけに本当に残念です。
 リカッソを除く刃長は62mm、ハンドルの全長は102mmです。CRKTのカーソンフリッパーからアイデア拝借で、折りたたむとブレードのエッジ側ピボットの突起が少し飛び出す恰好となり、ここを押すことでブレードが起きて、スナップによるオープンができるようになります。

 ・S&W H.R.T. Urban Titanium Camo
 さて安くて暴走気味なデザインが多く、必要以上に殺傷力を高めているということで、数多くの事件に使用され、テレビの画面や新聞の紙面にその下品な出で立ちが登場することにより、今やSOGよりも昨今の刃物規制強化に貢献しており、まるで日本のTEC9みたいなものですね。ウチにあるものはアーバンカモのやや大柄でヘビーなもので、デザインとしてはおとなしめです。
 全体がチタニウムコートされた上に、都市迷彩のスプレー塗装が施されており、チープなタクティカルと見るか、アーバンなタクティカルと見るかは、人それぞれですね。僕個人としては嫌いじゃないけど、好きにもなれない微妙なところです。どちらにせよよく見るとなんとも安っぽいスプレー塗装なので、遠目に眺めて楽しむのがよろしいかと。
 ブレード左側には「Smith&Wesson H.R.T.」右にはSWロゴが印刷されており、どっちに向けてもS&Wを主張してくれます。ところでH.R.T.って確か Hostage Rescue Team ってFBIの特殊部隊にあたる人質救出班のことだったと思うんですが・・・。S&Wと何の関係が?。ガンマニアにはHRTといえばパラオーディナンスとかでお馴染みですね。
 ブレードの鋼材はこれも440C。ハンドルはステンレス。ブレードもハンドルもチタニウムコートされており、手触りはいい感じです。ハンドルがアルミやザイテルじゃないので、バランスがハンドル寄りになり全体的に重くなっています。バランスはよくないですが、この重量感はちょっといい感じです。メカニズムは大味なモノロック。ハンドルがゴツいんだから、普通にライナーロックにするべきだったでしょうね。
 製造はテイラーカトラリー。イロモノではなくちゃんとしたアウトドアナイフのメーカーのようです。日本での知名度は低く、テイラーのブランド名で取り扱っているお店は見あたりません。このS&Wブランド以外にタクティカルやミリタリーのプロダクトはないようです。
 リカッソを除く刃長は87mm、内セレーションは37mm、ハンドルの全長は130mmです。フォールディングナイフでは大型な部類です。ブレードには Hammer Forged Surgical China と刻印されており、回りくどい書き方ですが要は中国産です。S&Wはアメリカ生まれで現在は純アメリカ資本の企業となり、パワーオブユーエスエーと叫びながら500SWマグナムをぶっ放すユーザーを抱えているだけに、ここも米国産にこだわって欲しかったところですねえ。

 ・H&K 14440SB ALLY
 さて日本ではヘックラーかヘッケラーとコックかコッホのお好きな組み合わせで呼ばれているH&Kの穴あきナイフです。HKブランドのナイフはガンメーカーにしては珍しく、安物が少なく、実に堅実な印象がありますねえ。ま、ここにあるものはそんな中でも最も安物ですけど。
 ブレードの穴は指かけで、ワンハンドによるブレードのオープンがしやすいと言われています。確かにBladetechやSpydercoに比べると穴が大きく本当に開きやすそうですが、その穴の内側は縁のエッジが甘く、グローブをした手では滑って引っかからず、とても開きにくいです。しかもこれだけ大きい穴が空いてると、万が一何かに使うとき、この穴のところでブレード折れますよねえ、絶対。ハンドルにも大きな穴が三つ空いています。軽量化のためなのかもしれませんが、折りたたんだ時にこの穴からエッジの一部が見えるのはどうなのかなあと思います・・・。そんなわけでこれも完全な観賞用ナイフですねえ。いや、別にそれが目的なんでだからどうだと言うわけではありませんが(笑)。
 ブレードは黒の塗装です。HKのロゴも銀色の塗装です。ロゴの部分だけ塗装しないとか、塗装するならHKらしく赤にして欲しかったところです。ハンドルもぼったりとした黒塗装です。ハンドルのエンドには銀色の突起があります。コレなにかと思ったら、グラスブレーカーです。消防士が持つレスキューナイフによくついているもので、車内に閉じこめられた人を救出するために、叩きつけなくても強く押しつけるだけでガラスに亀裂を入れられる尖った円錐状の硬質金属です。このナイフ、意味もなくこのグラスブレーカー付きです。写真でも見えるとおり、ちっこくて短いので刺さりはしませんが、先がかなり尖ってるので指で押さえると結構痛いです。クリップ使わずにポケットにしまうとチクチク痛そうですねえ。これホントになんでつけたんだろう?
 ブレードの鋼材はAUS-8。これは日本が作った鋼材で440Cと近似の特性を持ちます。ハンドルはステンレスですが、ハンドル自体が細く肉抜きの穴もあって、とても軽く感じます。勿論小柄薄型ということでモノロックです。
 製造はなんとベンチメイド。ホントですよ。ベンチメイドです。それだけでこのヘンチクリンなナイフは立派なタクティカルナイフです。メーカーサイトのHKプロダクト一覧を見ると、他にもAXISロックのモデルとかもあり、HKのナイフに安物が少ないのはベンチメイドが製造しているからですね。ま、コレは安物なのでブレードにも一言、Taiwan と刻印されています。ベンチメイド製品としても最も安く買えるもののひとつだと思いますが、ベンチメイドらしさはないです。またプロダクトには本家HKと同じドイツのBokerが製造しているものもあり、デザイン的な善し悪しは別としても、同じ国の最も有名なファクトリーナイフメーカーを起用するあたり、やはり他のガンメーカーとはひと味違いますね。
 リカッソを除く刃長は62mm、内セレーションが27mm、ハンドルは105mmです。Coltのものとほぼ同サイズです。フォールディングナイフとしてはこのサイズが小型で扱いやすく、種類も多いようです。

 ・Beretta Airlight II Large
 ベレッタも古くからナイフブランドを持っており、安物から高級品まで幅広いラインナップがあります。しかもガンメーカーの中では唯一まともにヨーロピアンナイフを取り扱っており、結構好感が持てます。ウチにあるのはそんなベレッタ製品では最も安物のひとつです。
 はみ出したライナーが樹脂製ハンドルを縁取るようなデザインで、M92Fに代表されるベレッタオートのスライドのごとく大幅に肉抜きされたブレードと併せて、非常に薄くて軽量なナイフです。ブレードのグラインドも丁寧でエッジも鋭く、形状そのものは典型的なクリップポイントで十分アウトドア等の実用に耐えうるものです。樹脂部分の肌触りは非常に良く、滑り止め効果は一切期待できないですが、販売価格は40ドル程度なのに高級そうな品の良さを感じます。
 鋼材はAUS-8。しかも日本産。イタリアは世界的にもいいナイフ作る国なんですが(世界流通している高品質ナイフの製造国は米国、日本、ドイツ、イタリアくらいです)、これは日本の関で作られたものです。ちなみに次に紹介するブローニングのプロダクトを見ててびっくり、ブレードの肉抜き形状等が違うだけでロゴがBrowningになってるソックリさんを発見。それも日本産。つまり製造元は同じということなんでしょうなあ。
 リカッソを除いた刃長は92mm、ハンドルの全長は120mmです。S&Wと同様に大柄な数字ですが、軽量かつ薄型のため大柄な印象はありません。薄型軽量ですがライナーロックとなっており、強度よりも見た目と軽さを重視した設計です。

 ・Browning Classic Eclipse Carbon Fiber
 欧州最大の軍産コングロマリット(笑)、FN傘下の歴史ある銃器メーカー、ブローニングもちゃんとナイフのブランド持ってます。実はガンメーカーの中でも最もまともなナイフを揃えているメーカーの一つです。ハンティングナイフが多いのですが、レミントンと違って、ハンティングナイフだけではなく、頑強なフィクスドブレード等のタクティカルぽいデザインも見られます。これはその中でもメーカー創始者であり、現代銃器の父とも呼ばれる人類史上最高の天才銃器設計者の筆頭、ジョン・モーゼス・ブローニングのサインが印刷されているカーボンファイバーハンドルの小粋な安物です。
 今回ご紹介のアンダー60ドル軍団では最も安物らしくない質感が特徴で、細身のリカーブドブレードの鋼材は440Cと平凡ながら、ブラックのコーティングはHKやColtと違って塗装然としておらず御大のサインもくっきり美しく、ボルスター(木製ハンドルによく見られるハンドルのブレード側終端の金属部分)のように見える部分はヘアライン処理にアルマイトで仕上げられ仄かに淡いグリーンを醸しハンドル内側を全面保持しています。そしてハンドルの樹脂部分は独特のテクスチャーを見せるカーボンファイバー素材で、滑り止め効果は全く期待できませんが見た目に違わぬ滑らかな手触りです。ライナーはアルミ部分に埋め込まれるようになっており、ハンドルそのものはBladeTechのMLEK程度の薄さと軽さにまとまっています。そして全体的になだらかな楕円を描くデザインになっていて、奇を衒いがちなガンメーカーのナイフ商品名としては、ネーミングセンスが抜群と言えるでしょう。写真では白く飛んじゃってますが、ピボットにはブローニングの「鹿」がプリントされています。
 リカッソを除くエッジの長さは82mm、ハンドルは117mmです。いくら質感も仕上げも値段以上とはいえ、やはり安物なので台湾製です。

 総評として簡単に印象をまとめると、ColtとSWといったビッグ2はナイフは完全に手抜き、あくまで銃で有名なメーカー名をキワモノメーカーや無名メーカーが利用しているだけの製品で、ナイフとしての価値は皆無です。HKはまともなナイフはベンチメイドの製品に蝶の代わりにHKロゴをつけているだけのものが多く、安物は残念な出来のものばかり。Berettaは清濁併せ呑むラインナップの深さは流石ですが、150ドル程度でChrisReeveで有名なW.Harseyデザインのフォルダー等もあり、日本のエアガンをオフィシャルレプリカと認定する度量がナイフにおいても発揮されていると思いました(BerettaのHarseyナイフ欲しい!)。Browningの他社より抜き出た品質は正直なところ意外でした。プロダクトを見ても結構良さそうなものがあり、やはりハンティングを生業とするメーカーは刃物にも優れていることを再認識しました。




 ■ Benchmade Mini Skirmish


 大柄なSkirmishを手頃な大きさにした「ミニスカ」、大きすぎるのが魅力のSkirmishを小さくするとどういうことになるのか、気になって購入してしまいました。
 まず比較写真がありますが、実際に手に持った感覚は写真よりもずっと「小さい!」。実測で、ブレードの厚さ3.5mm、エッジの長さ88mm、クローズ時の全長(ハンドル長)109mm。そしてフルサイズと同様にモノロックでチタン製のハンドル部分の厚みは11mm。参考にフルサイズの実測は、ブレードの厚み4.1mm、エッジ長110mm、ハンドル長132mm、ハンドル部分の厚み11.7mmでした。ミニサイズになっても相変わらず厚みのあるブレードにハンドルは薄めですが、ハンドル材の厚みはフルサイズと同じで、ブレードが薄くなった分だけしか全体も薄くなっていません。ブレードやハンドルの長さを見る限りオーソドックスなフォルダーのサイズですが、フルサイズのインパクトが大きい分、余計に小さく貧弱に見えてしまいます。元々そんなに大きく感じないCommanderを小さくした「ミニコマ」よりはずっと小さくなったという実感があります。
 鋼材はフルサイズと同じくS30V。ただし今回購入したのはシルバーモデルですが、表面加工のせいでくすんだような肌になっており、グラインドの地肌がギラギラするシルバーモデルの醍醐味(笑)はありません。ハンドルの装飾穴はなくなり、渦巻き模様がモールドされています。相変わらずソングホールはありません。
 小さくなったことで、携帯性は向上していますが、リカーブドブレードのため実用性は高いとは言えません。Skirmishはそのブレードの迫力とチタンハンドルの薄さと軽さが唯一無二の魅力であることを考えると、ミニサイズは正直に言って凡庸なナイフになってしまっています。勿論、デザインそのものは悪くなく、チタンハンドルのおかげでブレードの厚みとともに全体的に頑強かつ軽量というスタンスは揺らいでいません。あくまで個人的にはフルサイズがとても気に入ってしまったために、ミニサイズは魅力の半分以上をそぎ落としたように感じてしまっているということです。
 国内では25000円前後とフルサイズと大して変わらない価格で販売されていますが、定価および海外での販売価格も同じく殆ど差がなく、これも140ドルで購入しました。フルサイズと10〜20ドル程度しか差がありません。なおさら、Skirmishはフルサイズがオススメであると言えるでしょう。とはいえ、ハンドリングしやすい大きさになっているのは確実なので、逆に大きいフォルダーに抵抗がある人には頑強かつ軽量という点でいいかもしれませんね。





 ■ CRKT M16-13M Military


 CRKTは Columbia River Knife & Tool の略で、質のいいナイフを安価に提供しているメーカーです。プロダクトの中にはタクティカルデザインもいくつかありますが、高価なナイフを作る気がないので、デザインや仕上げがよくても、鋼材が440CやAUS8等の安いものばかりで、その殆どが台湾製です。
 CRKTのタクティカルナイフ代表作といえば、やはりM16シリーズです。Kit Carson というデザイナーの手によるもので、カーソンフリッパーと呼ばれるヒルトのような突起が特徴です。クローズ時にはピボットの上に突き出すようになり、これを指で押すとブレードがわずかに開く仕掛けです。つまり指を添えてスナップするだけで、オープンできる画期的なデザインです。その後の安物フォルダーが数多くこの仕組みをコピーしたことはいうまでもなく、CRKTの商品自体が高級品ではないのに中国産の粗悪な偽物(勿論CRKTロゴ入り)が出回るという騒動もありました。
 さらに AutoLAWKS(Lake And Walker Knife Safety)というメカニズムも組み込まれており、グリップを強く握り込む等で不用意にライナーを動かしてしまうことによりブレードのロックが外れてしまうことを防止するようになっています。右写真の赤い丸いレバーがそれで、クローズするときにはこのレバーを後ろへ下げないとライナーが動きません。つまりこのナイフはカーソンフリッパーとLAWKSの組み合わせで、開きやすいが閉じにくいという闘争心むき出しのデザインな訳です。右写真の真ん中、クローズの状態でのカーソンフリッパーとLAWKSです。
 今回購入したのはそんなM16シリーズの中でもタクティカルプロダクトの一つ、ミリタリーのミドルサイズです。鋼材はAUS8、ハンドルはエアクラフトアルミですが、表面仕上げ等はとてもきれいで最近の台湾製は侮れないなと改めて感じます。サイズはM16シリーズは大中小とあり、プレーンエッジは小のみ、タクティカルモデルの大はタントのみという、バリエーション増やすくらいならそこをなんとかしてくれよ、といいたくなるラインナップです。個人的にはタントじゃないラージモデルのプレーンエッジが欲しいと思うのですが、タクティカル以外でもM16シリーズにはそんな僕の希望を叶えてくれるものはありません。そんなわけで次善の策でミドルサイズにしたわけです。ちなみにバリエーションの中には僕が下品だと繰り返し断言しているダブルヒルトのものもあり、なんとも残念なデザインになっています。このミリタリーモデルもどこかの軍隊や部隊に制式採用されたとかいうことではなく、ただ単にブレードを黒くコーティングしているだけです。盾の中の1*ロゴですが、別に大きな意味があるわけではなく、元SWAT隊員のおっちゃんが湾岸戦争中に仲間から聞いた格言を元にした「かけがえのない大事なケツ(YOU HAVE ONLY ONE-ASS-TO-RISK)」という我々には理解できないアメリカンジョークのロゴだそうです。
 価格は46ドル。鋼材と生産国は仕方ないとして、このデザインと品質でこの価格はすばらしい。大中小と揃えたくなりますな。右写真下と真下の写真はM16コピーの中でも偽物以外で最も直球でコピーしているガーバーのEvoです。サイズもデザインもカーソンフリッパーも瓜二つ。鋼材は440(AかCかは不明)でハンドル材はアノダイズドアルミ、中国製です。海外旅行の土産にEvoJr.というこれのショートモデルを渡した人からお礼にといって貰ったものです。パチモンとはいえガーバー、そつない造りです。ガーバーは元々キッチンナイフのメーカーなので、総合アウトドアメーカーに転向した今、タクティカルを含めてナイフはどこかでみたようなデザインばかりで没個性的、もうちょっとがんばって欲しいところです。





 ■ Buck Rush


 さて、これよく税関通ったなあ、が第一印象。まず、するしないは別として携帯可能な6cm以下のエッジのナイフが欲しかったわけです。その他の条件は、まともな鋼材、ライナーロックであること、できれば中国や台湾製品でないこと、それなりのデザイン、使いつぶせる価格であること。やっと見つけたのがコレ、BuckのRush、ATS-34モデルです。
 Buckは基本的に米国製、どんだけ安くても米国製、鋼材は420という硬度は低くても粘りがあって研ぎやすいものが殆ど。その基本理念はまさにアメリカンなもので、荒野に一本提げて行くだけで、ライフルと並んで自らの両脇を固める、何とも頼りになる道具であること。ま、アクセサリーやコレクションがナイフの存在理由になってしまった昨今、Buckもその流れに片足乗っけてる訳ですが、その根底には相変わらず開拓時代から続くアメリカの魂が見えるといえるでしょう。
 Rushは刃が開きやすいようにスプリングを仕込んだ「アシストオープニング」型のナイフで、BuckではこのメカニズムをASAP(Advanced Spring Assisted Performance ; 可及的速やかを意味する As Soon As Possible との駄洒落)と呼んでパテント取っています。実際現物を見ないで買う以上、スプリングで「開刃補助」するといわれても、「45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛び出しナイフ」は銃刀法に触れるわけで、輸入可能なのかどうなのか判断できませんでしたが、検索するとあっさりオークションで見かけられるし(さすがに通信販売しているショップは殆どないですが)、万一没収となっても値段的にも55ドルとダメージが少ないので、チャレンジしてみました。結果、税関でしっかり開封検査されているわけですが、そのまま手元に届きました。BuckではAutomaticやSwitchBladeとは違うと主張しているわけで、実際は確かにスイッチで開刃するものではなく、あくまで開くときにスプリングの補助で開きやすいという苦しい言い訳がギリギリ可能なものかもしれません。スプリングのテンションがかかっているという事を除けば標準的なライナーロックです。ただ、本当にAutomaticと同じように、指先一つで軽く押してやるだけで一瞬で180度開きます。
 エッジの長さはジャスト6cm、厚みは2mmと実に小柄。左の写真はお馴染みEmersonのCommanderと並べた写真ですが、オープンでもクローズでもかなり小さいことがおわかり頂けるかと思います。鋼材は標準品は420ですが、このモデルはATS-34。ハンドルはスケルトンでちょっと趣味悪いですがエアクラフトアルミ。姉妹品にフルサイズ(8.3cm)のTempest、TempestのハンドルがスケルトンではないモデルのSirusがあります。Rushはデザイン的にBuckらしいドロップポイントのブレードで、ハンドルはスケルトンである事を除けば無難な造りです(手先が器用ならスケルトンの部分に木材とか加工してインレイはめ込むのもアリかも)。しかし残念ながらソングホールがない。携帯することを前提に考えるならストラップやパラコード通せるようにしておかないと・・・。
 ちなみにハンドルの背にぴょこんと飛び出しているものは、安全装置。サムセイフティみたいなもので、これを下げないとブレードが開かないようになっています(やっぱAutomaticじゃ・・・)。これがこのナイフ最大の問題点で、構造上単純かつ強度を維持し、確実な動作を求めればこの形になったのだとは思いますが、スライド式等の出っ張りを最小限にした構造の方がよっぽどよかったはずです。オープンして握ったときの違和感はかなりのものですし、解除のしにくさがASAPの特徴である素早いオープンを相殺しています。結局のところ、バネの力に頼らなくても、抜けばすぐオープンするEmersonのWaveフックがいかに優れているかを再認識させられるだけのものかもしれません。
 BuckはPaulBOSの熱処理(BOS Heat Treating)をブレードに施しており、これにより表面の硬度や粘り、耐腐食性が増しているとされています。殆どの他メーカーはブレードの表面がくすんだようになって美観を損ねることから、黒染めで同様の表面処理を行いますが(BenchmadeのBKやBP2コーティング、BladetechのDLC等)、Buckは実用第一お手頃価格がモットーなので(?)黒染めなんてありません。
 ちょっと小さすぎるので、実用性は低いです(扱いにくい)。スプリングが開く方にテンションかかっているので、閉じるときは抵抗があって普通のナイフほど素早くはできません。銃刀法的に携帯は可能な範囲ですが、大きさもメカニズムも法律ギリギリの線なので、やめといたほうがいいでしょう。




 ■ Bladetech Pro Hunter Extreme


 日本への発送が可能な米国の通販サイトではなかなか見つけることができなかったブレードテックのProHunterEx、漸く手元に届きました〜。
 MLEKのときはそうでもなかったんですが、ナイフに傾倒していくにつれ、ブレードテックのナイフがどんどんカッコよくみえてくるんですよ。ProHunterExが入手困難だった理由は、2008年の製品刷新を前に生産が終了したのが原因のようです。カタログによるとMLEKとProHunterにほぼ全面フラットグラインドの"Magnum"シリーズがメインとして追加されるようです。実は現行の最新モデルであるRIJBAKもかなり欲しいのですが、どのサイトに行っても見当たらなくて悔しい・・・。
 購入したモデルはセレーション付のグリーンハンドル。プレーンでグラスファイバーハンドルを注文したのですが、売り切れかつ再入荷見込みなしとの返信があり、代替品の提案をお願いしたらProHunterExはセレーション付のグリーンかオレンジしかないとのことで、グリーンハンドルにした次第です(1年もやってるのに英語力向上は僅少だわ・・・)。Magnumシリーズの発表により今年から通常のProHunterとMLEKはExtremeがカタログから消え、鋼材は154CMに変更になりハンドルカラーもブラックのみになっています。価格もぐっと安くなるようですが、恐らく台湾か中国製になると思われます。オフィシャルサイトで見る写真ではグリーンハンドルはとてもカッコいい色で写っていますが、実際に色はどうなんだろうかと半ば不安でした。結果杞憂でよかったです(笑)。
 ブレードはDLC(ダイヤモンドライクコーティング)と呼ばれるタングステンを含む黒いコーティングが施され、極めて高い防錆性を持っていると説明されています。通常の表面酸化や塗装と違って、多少のムラがあり地肌がうっすら透けて見えます。鋼材はS30VでハンドルはG-10とMLEKと同じで、サイズもMLEKと同じです。ブレードデザインはMLEKよりやや細身でドロップポイント、エッジはリカーブドではありません。スパインには滑り止めが追加されており、使い勝手はたいへんよさそうなデザインです。実際にデザイナーの Tim Wegner はこのナイフ1本で巨大なヘラジカを解体しており、薄型軽量で携帯の負担がなく実用性も高いという、ハンターによるハンティングのための最適なデザインとなっています。また黒染めは徹底されていて、ポケットクリップは当然ながら、ネジやソングホール部分、ライナーまで黒染めです。
 国内では3万円前後の高価なナイフですが、購入価格は146ドル。セレーションでグリーンハンドルという当初の予定とは違うものになってしまいましたが、結果はそこそこ満足です。特にグリーンハンドルは誤算ともいえるカッコよさで、黒いブレードとのマッチングもよく、カタログやオフィシャルサイトの写真もこのカラーが中心になっており、ハンドルは無条件で黒と思っていた自らの視野の狭さに気づかされました・・・。


左上:畳んだ状態。MLEKよりブレードの露出が少なくスマート。 右上:DLCコーティング。 左下:スパインの滑り止め。イカす。 右下:チョイルの滑り止め。ライナーまで黒染め。



 ■ Benchmade Gamer


 Perfumeのアルバム発売記念、というわけではありませんが、その時期にProHunterExと一緒に注文し、先日到着したベンチメイドの激安フィクスドブレード、Gamerです。ただ安いだけじゃない、アメリカのナイフ専門誌で2004年のBestBuyに選ばれた逸品です。
 台湾産のRedClassで、実はすでに生産中止(Discontinued)になっています。スマートなデザインが気に入ったのですが、なんと言っても価格が安い。カタログ定価では40ドル、購入価格は28ドルでした。デザインはオーソドックスなスウェッジを持つクリップポイントで、フルタングかつ薄型でまとまっています。リカッソを除いたブレード長は100mm、全長は220mm、ブレードの厚みは3.1mm、ハンドルの厚みは12mmとなっています。ブレードの厚みはNimravasと同じですが、ハンドルの厚みは半分以下で、付属の樹脂製シースからしても大型のネックナイフといった印象が強いです。カタログ表記の鋼材は440Cなのですが、初期生産分のみN690というものが使用されており、今回購入したものもN690でした。N690はオーストリアで開発された鋼材で、コバルト含有量が多く、HRCは58前後で粘りもあり、特性は440Cによく似ていますが、防錆性が高い440Cよりもさらに錆に強いといわれています。主にイタリア製ナイフに使用されることが多く、エクストリーマ・レティオのような下品なデザインの割りになぜか高価なメーカーが使用していることで有名です。440Cよりは若干高価な鋼材となるため、40ドルの製品に採用し続けることが困難になったのではないかと推測されます。ハンドル材はこれといった特徴のないザイテルで、モールドといいデザインはかなり悪いほうですね。表面も思ったよりスベスベで、滑り止め効果も皆無です。MODのNightWingのときも書いてますが、こういったデザインの気に食わないハンドルは、なんとか自分で気に入ったデザインのものが作れないか、悩むところです。
 ベンチメイド製で使いつぶせる価格かつ実用的なデザインのフィクスドブレードとしてお勧めですが、すでに製造終了なのは残念です。ハンドルはともかくブレードのデザインはよく、ハンドリングやシャープニングの練習に使いつぶすつもりで買ったのですが、入手したのは希少性がやや高いN690ブレードだし、どうしようかなあ・・・。




 ■ Benchmade Skirmish


 去年末から更新頻度が落ちていることでわかるとおり、手の届く価格で欲しいナイフが本当になくなってきたわけです。タクティカルデザインで200ドル以下で販売されている高品質のもの・・・、思いつく中でとりあえず買っておきたいのはBladeTechのProHunterExとベンチメイドのSkirmish、どちらも年末より探しており、漸く見つけて注文してありますが、Skirmishが先に届いたのでご紹介いたします(ProHunterExはバックオーダーになった模様)。
 国内の販売店でもついこの間まで見かけなかったのですが、海外通販サイトとほぼ同時期に取扱店が増えていますので、ベンチメイドでの生産に問題があったのかもしれません。国内での販売価格は25000円以上しますが、海外通販では160ドル前後で販売されています。数量限定生産のモデルもありますが、国内外の通販サイトでは見かけたことがありません。通常品はシルバーとブラックのブレードがあり、それぞれハンドルのカラーリングが違います。シルバーブレードのほうは全体的に派手で、ブラックブレードは落ち着いた印象があります。ブラックは断然タクティカルぽくて、ずっと探していたわけです。因みに、タクティカルぽいデザインですが、BlackClassではなくBlueClassなので実用性よりもデザインを重視したモデルとなっています。
 デザイナーは Neil Blackwood。検索すれば一発でカスタムナイフのオフィシャルサイトみつかりますが、実にいいデザインのナイフを作っています。カスタムナイフとしてもSkirmishがあり、これのマスプロダクションがベンチメイドのこのナイフのようです。ブレードのデザインは装飾をかねたサムホールをもつリカーブドで、大柄で厚みがあり実に頼もしい印象があります。鋼材はこのクラスでは一般的になったS30V。きれいに黒染めされています。ハンドルはなんとチタン。軽量かつ強靭という点ではエアクラフトアルミ以上の材質で、S&WやSTIが銃のフレームに使っているほど、軽さと丈夫さを兼ね備えた金属ですが、いかんせん高価なので一般的ではありません。またこのチタンの強靭さを活かして、メカニズムはモノロックになっています(右写真上)。ライナーロックに似ていますが、ハンドル材がライナーを兼ねるもので、以前紹介したH&KやS&Wのナイフと同じ構造です。エッジの長さは110mm、ハンドルの長さは132mmとフォルダーにしては大きなブレードを持っており、ハンドルの終端にある三つの穴はデザイン上の装飾でソングホールではなく、ブレードを閉じると塞がってしまいます(右写真中)。ブレードの厚みは4.1mmもあり、フィクスドブレード並みの頼もしさです。そしてハンドルの厚みは11.7mmしかなく、しかもチタンなので軽い。MLEKのときにコマンダーと厚みの比較をしていますが、ハンドルはその中間の厚みでブレードは双方より25%も厚いわけです(右写真下)。コレは実にいいナイフですね。ハンドル材はG10がベストだと思いますが、局地で使うことのないアーバンタクティカルというジャンルで考えた場合、強靭かつ軽量のチタンは十分にアリかも知れませんね。ブレードが1インチ短く、全体的に小ぶりに纏まったMini-Skirmishもあり、ナイフとしてのバランスはこちらのほうが上かもしれませんが、フルサイズのこれほどの頼もしさは得がたいものがあります。
 ハンドルの銀色の丸いものは写真ではなにかビーズのようなものが埋め込まれているように見えますが、実際は半球の凹みできれいにポリッシュされています。ただデザインとしてはちょっと残念な印象がありますね。ちなみにシルバーブレードのモデルはこの穴に色がつけられているようで、かなり悪趣味なケバケバしさとなっています。ピボットピン以外に、両側の強靭なチタンハンドルを結ぶものは細いピン2本のみで、アウトドアで使用したあともメンテナンスがかなり楽ですね。問題はアウトドアで使うようなナイフではないということだけで・・・。




 ■ Benchmade Vex


 ベンチメイドの安いけど実用的なナイフです。台湾産ですらない中国産のRedClass、国内での実売価格は8000円前後、海外通販では40ドル前後で買えます。
 手軽にベンチメイドのナイフを手に入れるにはうってつけの1本ですが、ベンチメイドらしさはあまり感じられないかもしれません。鋼材は8Cr14MoVという、AUS8のチャイナコピーでHRCは57前後、中国産安物ナイフにはよく使われる鋼材です。構造はれっきとしたライナーロックで、ハンドルはなんとG10。耐熱性、耐腐食性に優れた樹脂なので、アウトドア用途にはかなり向いてそうです。左写真上、畳むとコンパクトにまとまるので携帯性もよく、サムホールはスパイダルコみたいなまん丸で、ワンハンドオープンも容易でますますアウトドア向きな感じです。
 ただしブレードはかなり薄く、おまけにサムホールは大きく開いていますので、ラフな扱いには耐えられないかもしれません。左写真一番下はエマーソンのコマンダーとの比較。コマンダーは3.2mmありますがVexは2.8mmしかありません。ハンドルの厚みは同じくらいです。ブレードのエッジ長は83mm、ハンドルの長さは111mm。ブレードのデザインは結構いいほうですが、やはりもう少し厚みがほしかったところ。ブレードのスパイン側は丸められており、畳んだときにはかなりやさしい持ち心地になっています。ハンドルのデザインはかなりよく、握ったときに人差し指が収まる箇所がきちんと抉られており、頑丈なブレードさえついていたらタクティカルフォルダーとして十分通用するものです。
 40ドル前後で購入できるちゃんとしたベンチメイドのフォルダーとして、かなりお勧めできますが、中国産なので「いいもの持ってるわ〜」という自己満足度はかなり低めですね。ただ実用的に使いつぶしても構わない価格なので、ベンチメイド好きでアウトドアやってる人は重宝するかもしれませんね。







 ■ Benchmade Leopard


 資料が乏しく、貧弱な英語力で調べた限りだと、現在総合ナイフメーカーとして世界で最も有名なベンチメイドは、二度その名前を変えています。1979年にバタフライナイフで成功したロズウェルのBali-Songは、1983年にハリウッドに移りPacific Cutleryとなり、1988年にハリウッドの別場所で現在のBenchmadeとなったようです。その後Benchmadeは1990年にカリフォルニアを離れオレゴンのクラカマスに、1996年から現在のビーバークリークに移ったようです。今回のブツは、これまた資料がなくてはっきりしないのですが、パッケージにクラカマスの住所があるところから、1995年前後に発売されたと思われるベンチメイドのデザイナーシリーズ、#625 Leopard です。現在ベンチメイドのサイトではDiscontinued(製造終了品)の中にも登録されておらず、骨董品と呼んでも差し障りないでしょう。
 「ベンチメイド初期の逸品、在庫限り」の看板にちょっと騙されたような気がしないでもないですが、ベンチメイドが著名なカスタムナイフメーカーにデザインを依頼して、マスプロダクションを製作するという現在のスタイルを確立しはじめた頃のプロダクトだと思われます。パッケージには DESIGNER SERIES と書かれており、デザインしたのは Pat Crawford という人です。検索してみると、オフィシャルサイトが一発で見つかりますが、なかなか下品なデザインが好みのようですね・・・。10年以上前の製品とはいえ、日本国内でもアメリカでも、流通在庫が結構あるようで、特に希少価値のある骨董品というわけではないようです。
 デザインはカスタムナイフによくみられるオーソドックスなキリオンのない鋭いドロップポイントで、ブレードもカスタムナイフっぽく全面フラットグラインドとなっています。で、このナイフを悩みながらも買った理由がズバリ、鋼材です。かつて理想的なナイフ鋼材と名高かったATS-34が使われています。HRCは60以上ありながら粘りを持ち、440C並に錆びにくいというバランスの良さが特徴です。近年は粉末鋼S30Vの台頭でなかなか見かけなくなってきていますので、まだ市場にあるうちにベンチメイドあたりでATS-34のナイフが欲しいなあと思っていたわけです。ハンドル材は 6061 T-6 というハンドル材としては一般的なエアクラフトアルミです。ハンドルに穴がたくさん空いていますが、バリソンのハンドルを連想させるもので、デザイン上のアクセントとしては悪くない感じです。ハンドルの色はブラックとグレーがあったようで、現在入手可能なものはグレーのみです。表面仕上げがアノダイズド(薄膜酸化処理:パーカライズドと同じく、薬品につけて表面を酸化、変質させて硬度と耐腐食性を高める。表面はザラつく)なので、汚れがつきやすく落ちにくいのが欠点です。当然新品を買ったわけですが、ハンドルのフチは全て黒ずんだ汚れがついており、オイルを染みこませた布で拭いてもとれない状態でした。仕方ないのでバラバラに分解して、ハンドルだけ中性洗剤につけ込んでブラシで洗って、やっとキレイになりました。不幸中の幸いというか、このときに感じたのは、分解組み立ての容易さです。三本のネジを外すだけで、完全分解ができて組み立ても簡単という、高いメンテナンス性はアウトドアナイフとしては大きな利点でしょう。しかも工具は六角棒レンチ一本。現在はベンチメイドでもトルクスを使うものが多いため、一般的で小さな工具ひとつで事足りるのは珍しいです(なおインチ基準のサイズなので、日本のレンチではサイズが合いません。米国基準のレンチも日本のホームセンター等で売られています)。
 オーソドックスなライナーロックですが、ハンドル材も金属で剛性は十分なためライナーは片方にしかついていません。またこれもカスタムナイフぽいデザインですが、サムスタッドが片方にしかなく、畳んだ状態ではブレードの露出が少なく、とてもスマートな印象があります。反面左手でのワンハンドオープンは難しくなっています。
 オブバースに入る蝶々のロゴはまだBali-Songとなっており(現在はBenchmade)、サイズも大きめです。裏面にデザイナーを示すロゴが入るのは現在と同じ。ソングホールはなく、ハンドルの穴にパラコードを通してもエッジに当たるので切れてしまうと思います。エッジの長さは82mm、ハンドルの長さは120mmと一般的な大きさで、エッジが1cm程度短い小型版の Leopard Cub という製品も存在していたようです。1997年カタログでの価格は130ドル、現在海外通販で販売されている価格は140〜199ドル程度です。
 タクティカルナイフとしては物足りないデザインですが、明るい色のハンドルにスマートな印象、なによりも憧れだったATS-34ということで、とりあえず満足です。


左:片方にしかないライナー  右:畳むとブレードの露出は少なくなるが、ハンドルの穴からエッジが見える



 ■ Benchmade LFK


 ベンチメイドがオモシロナイフを作りましたよ〜。見たことないほどデカいフォルダーですよ〜。さて半年前のこのページの「最初に」の冒頭に、ベンチメイドの新作を予約したとの記述がありますが、なんとその新作、半年遅れで発売されてやっと届きましたよ・・・。
 ベンチメイドの普及品カテゴリにあたるレッドクラスの新製品、10100LFKです。このシリーズはハンドルに収まりきらないほど長いブレードが特徴で、先発の10110Sは7インチ(約15.5cm)のフィレナイフ(肉や魚をスライスするのに適した細身でやや反ったブレードを持つナイフ)でした。折りたたんだ際に、ハンドル内部からカバーが飛び出し、ハンドルからはみ出たブレードのエッジを保護する構造になっています。10110Sとそのショートバージョン10115はカバーを手動で引き出す方式でしたが、10100LFKでは折りたたむ際のブレードの動きに連動してカバーが出てくるようになっており、普通のフォールディングナイフと全く同じ要領で操作できるようになっています。ただ全体的に大柄で、カバーがハンドルの内側に収納されるため、ワンハンド(片手のみ)でのブレードの開閉は困難です。
 ブレードの鋼材は440C。ハンドル材はカタログに明記されてませんが、強化樹脂にグレーのラバーを組み合わせたもので、滑りにくくなっています。クリップポイントのブレードの長さは、エッジ部分のみで130mmもあり、対してハンドルの長さは125mmと一般的な大きさです。ブレードの厚みは3mmですが、ブレードに連動してカバーを開くギミックが内蔵されているためか、ハンドル部の厚みは16mmもあり、重量も190g(EmersonのCommanderは139g)とハンドリングはフィクスドブレードそのものといった感じです。ハンドルデザインは非常に残念な出来で、厚みも幅もあるためこんな握りにくいフォルダーは初めてです。とはいえ、ナイフとしてあり得ないというほど握りにくい訳でもなく、外人さんのように手が大きければ特に問題ないでしょう。わかりやすく例えると、普通のフォルダーを9mmのダブルカラムだとすると、これはちょうど45ACPのハイキャパのような感覚ですね(全然わかりやすくない?)。またインレイのようにハンドルに組み合わされているラバーの感触がイマイチで、これが価格相応の材質なのでしょうが、G10やザイテルの採用が無理なら、ハンドルは強化ナイロン樹脂のみでもよかったと感じます。
 下に写真をまとめておきましたが、Nimravusよりデカいんですよ、このフォルダー。折りたたんだ状態でのカバーを含めた全長は165mmとなり、ハンドル自体の大きさと相まってコンパクトという言葉の対極に位置する印象です。ポケットに入れて持ち運べないことを考慮して専用のナイロンケースが付属しており、ベルトに通して携帯できるようになっています。同じようにケース付き(こちらは革製)のフォルダーであるバックの110と並べたのが左上の写真。バックの110は10年ほど前のもらい物なんですが、未だにリアロックバックが怖くてまともに触れない(笑)うえ、ハンドルのブラスにすぐ青錆が出るので、ガンラックの乾燥剤の真上に何年も置きっぱなしです・・・。ケース自体は一回り大きい程度ですが、中身のブレードは倍近く大きいですね。
 一般的なライナーロックのメカニズムを持ち、ライナーにブレードの開閉に伴って前後に動くバーが仕込まれており、これがハンドル後方のカバーを動かしています(下写真参照)。面白いナイフですが、ベンチメイドとしても半ば「キワモノ」扱いのようで、安価な素材を使い台湾で製造するという、レッドクラスの製品になっています。しかしそのカバーのギミックに手こずったのか、今年の春に発売予定だったものが、半年も遅れて発売されました。国内では14000円程で販売されており、ハーフセレーションのブラックブレードもあり、こちらは2ヶ月ほど先行して流通していました。
 返す返すも残念なのはやはりハンドルデザイン。ここがもっとマシだったら、ただのキワモノではなかったハズ。しかしながら、全体の作りはベンチメイドらしくしっかりしており、ブレードはデザインも良く仕上げもキレイで、レッドクラスとはいえ100ドルを超える製品であると納得できます。


写真左上:Commanderとの比較。ハンドルの長さは殆ど同じ。中上:Nimrabusとの比較。ハンドルの幅が広い。右上:キワモノでもバリソン。
写真下:左よりブレードを折りたたむとカバーが出てきて、エッジだけはきちんとガード。カバーはハンドルと同じ樹脂製。



 ■ Emerson mini Commander


 いよいよ手の届く価格で欲しいナイフがなくなってきた秋本番ですが、今回はエマーソンのミニコマンダー。どこがミニやねん、と外国人でもつっこみたくなる逸品です。
 エマーソンのCommanderといえば、マイベストタクティカルフォルダーとしてしつこいくらい繰り返しご紹介しとるわけですが、そのミニサイズ版としてあんまり人気ない感じのMini-Commanderを海外通販の特価で105ドルで買った訳です。エマーソンのシルバーはサテン仕上げがちょっと好みじゃないので、今回はブラック、そしてセレーションなしにしてみました。しかしながらセレーション入ってないと、なんかエマーソンぽく感じないのは僕だけでしょうか・・・。
 で、スペックシート見て誰もが思うことですが、いったいどこがミニなのか、実際に計測してみましょう。まずはCommanderの実測。エッジの直線距離は92mmでハンドルの最長部分が132mmです。Mini-Commanderの実測はエッジの直線距離が84mmでハンドルの最長部分が119mm。ブレード及びハンドルの厚みは全く同じです。エッジの長さで8mm(9.1%)、ハンドルの長さで13mm(10%)と、概ね1割ほど小さくなっています。同じ1割でも5インチのガバが4.5インチのコマンダーになるのとは随分印象が違いますねえ(右写真上)。まあ、ミニとか言ってもこの程度なので、当然銃刀法から日本では携帯不可です。
 ただ日本人の小さい手には、Mini-Commanderのほうが手のひらにしっくりきます。ちょうとハンドルの終端に向かうアールの部分が手のひらの窪みにフィットする感じで、フォールディングナイフとしては異例の握りやすさです。
 たぶんですね、コンパクトに持ち運びがしやすいようにとかいう理由で短くしたんじゃないと思うんですよ、これ。一般的なアウトドアナイフの場合、フォールディングナイフは本格的に使用しても果物の皮むきや川魚の解体調理程度で、実際にブレードはそんなに大きさが必要ではないため、携帯性を重視してショートバージョンが製作されることがあります。しかしこのMini-Commanderはブレードの形状がリカーブドというアウトドア用途には適さないものであるうえ、1センチ程度の短縮ではたいして携帯性の向上とはなりません(右写真下)。ナイフコンバットにおいて、ブレードのリーチよりもハンドルが如何に手になじむかの方が重要だという考えのもとで製作されたものだと感じました。


で、これがCommanderとMini-Commanderを並べた写真。殆ど差がない。



 ■ Benchmade Nimravus


 国内で最も有名なタクティカルフィクスドブレードといえばやっぱりニムラヴァス。バリソン蝶々のロゴはバタフライナイフのブランドとして有名になりましたが、ベンチメイドは昔から限定生産品にプレミア価格がつくほど人気の高いファクトリーナイフメーカーです。
 Nimravusとは古代哺乳類の名前。猫科の祖先として1000万年前に欧州を中心に生息していたとされるマカイロドゥス(サーベルタイガー)の一種(Machairodus aphanistus)で、化石がフランスと北米の一部で発掘されています。ベンチメイドのNimravusはAllen Elishewitzデザインの典型的タクティカルシースナイフで、ドロップポイント(ベンチメイドのカタログではモディファイドタントとされています)モデルのセレーション付きが米軍採用となっています。陸軍?海兵隊?わかんなかったんで調べてみたんですが、どうやらNSN取得して、兵士が装備品として選択できるようになっているようで、標準装備品として一律支給されるものではないようです。NSNとはナショナル・ストック・ナンバーといって米政府発行の備品管理番号のことで、兵士等が装備に選択して調達する際に利用するものです(NimravusはNSN#1095-01-466-8569)。
 リカッソを除くブレード長はプレーンで116mm、セレーション付きが112mm(内セレーションが24mm)。ブレードの厚みは3mmと薄め。ブレードの鋼材はD2、ハンドルはエアクラフトアルミ。Nimravusの鋼材はいくつかあるようで、旧モデルは154CMがスタンダードで今はD2に変わっています(ハンドル材も旧型はG10でツルツル、微妙にハンドルデザインも違う)。他にもM2ハイス鋼やATS-34を使ったものもあるようです。実はこのNimravusのショートバージョンNimravusCubのATS-34プレーンがかなり欲しかったんですが、国内外どこにも売ってないので諦めました。セレーション付きなら割と見つかるんですが・・・。NimravusCub自体がベンチメイドでは現在廃盤となっているので、もう入手は絶望的です。またこのNimravusについても比較的錆びやすいD2よりは154CMの旧型を探したんですが、見つかるのは国内の在庫で2万円以上の高いものばかり。仕方なく、新型のD2を海外通販で105ドルで購入しました。
 タントモデルは華奢なアーミーナイフといった感じですが、ドロップポイントの方はこれぞナイフといった形をしていて、やや小振りながらも非常に頼もしいデザインです。ドロップポイントモデルはタクティカルナイフとしては珍しく、普通にアウトドアでも使える実用的な形状をしています。ハンドルはFixedPresidioと同じくエアクラフトアルミに前後で向きの違う滑り止めが掘られていて、手のひらにしっかりと食いついてきます。好みが分かれるのはサブヒルトというかフィンガーチャネルの部分ですが、あくまで人差し指のサポートのみとなっているし、個人的には握りやすくていいと思います。鉄砲で言えば、ホーグ等のフィンガーチャネル付きグリップは許せないんですが、M16/AR15系ではM16A2以降の一つだけフィンガーチャネルがついたグリップが大好きというのと同じ感覚ですね。上の写真、そう思ってJACのM16A2引っ張り出してきて写真撮ったんですが、肝心のグリップ切れてますね・・・。
 付属のナイロンシースはなんとEagle製。ナイフ本体と揃って米国製です。今まで買ったシースナイフに付属のものでは抜群の出来です。ま、ミリタリーウェア着込んでウヘウヘする趣味はないので、シースはあまり重視しないんですけども。アウトドアで使うこと考えれば、ナイフそのものと併せて「いいもの」を身につけてるという満足感はバッチリ得られそうですよ。


出来がよく、デザインもよく、価格も割と手頃、シースもよく、なんといってもベンチメイド。タクティカルなフィクスブレードはまずコレから、と言っても良さそうな逸品ですよ、やっぱり。



 ■ Spyderco Military


 海外通販で特価品というものを頼むと、日本国内に比べてビックリするほど安く買うことができます。そんな中で今回はまともなスパイダルコのナイフをご紹介します。
 スパイダルコはByrdナイフのときにタクティカルのプロダクトがないとか書いてますが、実は二つだけあるんです。それがこのMilitaryです(もう一つはMilitaryのショートバージョンPara-Military)。スパイダルコ製品としては異例なもので、大柄でライナーロックとなっています。リカッソを除くブレード長は95mm、フォールディングナイフとしてはブレードが長いためハンドルが140mmと長くなっています。
 スパイダルコのナイフは日本のGサカイで製造されるものが多く、その場合はブレード鋼材にVG-10という特殊鋼が使われますが、これはアメリカ製で粉末鋼S30Vです。硬度も高く、粘りもあり、なにより錆に強いということで、アメリカ製タクティカルナイフでは完全に154CMに取って代わったと言えるでしょう。ハンドルはG10で、ライナーはエアクラフトアルミ。デザインは全く違いますが、素材やライナーの埋め込み方はブレードテックのMLEKと同じです。右写真一番上はブレードの刻印、スパイダルコの所在地なんですが、USAのあと、地球って書いてあるんですよ。いいですねえ。SF好きにはたまりません。右写真2番目は折りたたんだ状態です。構造はMLEKと同じですが、長さがあるためハンドルを薄くして強度を落とすことを避けたのか、ハンドルの厚みは11.5mmとCommanderとMLEKのちょうど中間になっています。
 デザインはイマイチかなあと思うのですが、このブレードはなぜこうも大人しく見えてしまうのか? まん丸のサムホールもその要因ですが、ブレードをよく見てください。ブレード全体が完全なフラットグラインドなんですよ。エマーソンのCommander等、殆どのナイフはブレード半ばからグラインドされエッジに向かってテーパーがつけられます。このナイフはスパインからエッジまでが完全に平面という全面フラットグラインドになっています。しかもその傾斜はポイントに向かっても同様で、ブレード面に立体的な特徴が見られません。これがこのナイフのブレードの印象を柔らかくしており、アウトドアやアクセサリ型のナイフでスパイダルコの人気が高い理由でもあります。右写真上から3番目がスパインから見たブレードで、完全なフラットグラインドであることがわかります。こういう全面フラットグラインドは高い工作技術が要求されるうえ、工作機械の摩耗が激しいためスパイダルコ以外のメーカーでは殆ど見られません。
 キリオンに該当する部位が低く、ミリタリーといいながらもナイフコンバットには向いていないデザインとなっています。本来は姉妹品のようにパラミリタリー用途、パラシュートのパラコード切断等やサバイバルナイフのような用途を想定しているのかもしれません。スパイダルコのオンラインカタログでは「あなたの息子が軍に入隊するとき、どのようなナイフを持たせて彼を送り出すか」という質問への回答として、スパイダルコ社長がミリタリーユースに最適な材料でデザインしたとあります。どこかの軍隊の要請に応じて作られたとか制式採用を狙ったトライアルに出したとか、タクティカルナイフのカタログに大抵のメーカーが書くようなことは一切なく、スパイダルコデザインをミリタリーに対応させただけのようです。チョイルにグルーブがあり、長いブレードと相まってアウトドアでは結構使えそうです(使いませんが)。キリオンがなくてもこのチョイルのグルーブのおかげで突き刺すような用途でも指が滑らないとスパイダルコは言ってますが、どうでしょうか、僕は滑りまくりだと思いますよ。勿論、人を突き刺したことなんてないので、確かなことは言えませんが。
 右写真一番下は大きさの比較。わかりにくい写真で申し訳ない・・・。上から Spyderco Military、Bladetech MLEK、Emerson Commander。細身なので小さく見えますが、エッジは一番長いです(95mm;MLEK85mm、Commander92mm)。
 日本国内では20,000〜25,000円前後で販売されていますが、海外通販で特価105ドルで買いました。いつも何本かまとめて買うので送料や関税を含めても13,000円ほどですね。お買い得でした。




 ■ Microtech Currahee Green Camo


 マイクロテックのナイフでは数少ない、そのまま日本で所持可能なナイフのひとつ、カラヒーのグリーンカモ、ハーフセレーションです。
 カラヒー!って叫ぶ兵隊さんの物語を知ってますか? 戦争映画や海外ドラマが好きな方ならご存知、Band of Brothers ですね。その第一話目のサブタイトルが「Currahee(和訳では『翼のために』)」です。ドラマはD-Dayの前夜にノルマンディーに降下し、上陸作戦を成功に導く大きな役目を全うした陸軍101空挺師団506連隊の結成直後(1942年)から終戦直前のイーグルネストまでにおける、第2大隊E中隊を追う実話に基づくもので、98年に大ヒットしたアカデミー賞5部門受賞の名作、Saving Prv.Ryan で主演したトム・ハンクスが自ら2匹目のドジョウを求めて、製作総指揮として参加したため日本でも大きく話題になりました。しかし前評判や撮影規模の割に内容が地味で、良くも悪くもリアルな戦争の風景を描きながら、TVドラマという制約からか映画に見られるような残虐な戦闘シーンも少なく、さらに日本の視聴者はWWIIにおける欧州の歴史の基礎知識が乏しいために内容が理解できない者も多く、日本ではイマイチ盛り上がらなかった不憫なドラマです。このドラマの主人公たち506連隊が結成直後に駐屯していたジョージア州トコアの基地で、毎日肉体教練のために走って登っていた山をカラヒーマウンテンといい、彼らは鬨の声として劇中に幾度かこの山の名前を叫びます。おっと余談長すぎた。
 で、そんなドラマや506連隊とは何の関係もないのになぜかこんな名前のナイフなんですが、海軍のボートチームに納入するために少数生産されたものをベースにしたマスプロダクションです。米軍特殊部隊BoatTeam20とかいう記述をたまに見かけますが、そんな特殊部隊はなく、マイクロテックが自社サイトで海軍のボートチームの一つを指して誇大している部分を誤解している人が多いようです。
 比較的錆びやすいD2鋼なんで、海軍でプルーフ済みなんて笑い話でしかないんですが、厚さ5.05mmで幅は最も広いところで5cmというブレードは頼りがいがありそうです。ブレードの長さは110mm程度と比較的短く、個人的には寸胴で物足りないイメージがあります。できればブレードはあと1インチほど長ければもっといいデザインになったのではないかと思います。ハンドルはキャンバスマイカルタで勿論フルタングです。ソングホールが円形ではなく細長く空いているんですが、ハンドルエンドで何か叩き割るときの強度を考えると良いとはいえないデザインです。またファスニングボルトが独自の冶具でないと開閉できないという愚劣の極みです。
 価格は国内では3万円以下で販売されているところは滅多にない高級ナイフです。MoDのNightwingと同じく、高い理由が全然わかんないナイフです。ヒルトのキリオンをもう少し低めにして、チョイルに指がかけられるようにし、ファスニングボルトを普通のレンチに対応させれば、アウトドアで大活躍しそうな感じなんですけどねえ。




 ■ Benchmade Fixed Presidio


 ベンチメイドがニムラヴァスの大ヒット後、その面影を色濃く残して作り上げた隠れた名作がこのフィクスドプレシディオです。共通のデザインを持つフォルダーに同じくプレシディオシリーズがあり、そのフィクスドブレード版としての製品名のようです。特徴はなんと言っても150mmのエッジと85mmのフォールスエッジです。基本はクリップポイントですがフォールスエッジを長くすることでスピアポイントに優るほど「突き刺す」ことに有利になっています。ハーフセレーションのモデルもありますが、その場合フォールスエッジにもセレーションが入るので、スマートさが完全に損なわれてしまって、別物の印象を受けます。デザインはベンチメイドの筆頭デザイナーの一人、Warren Osborne で、先にも挙げたフォルダーバージョンはまた別のデザイナーが手がけています。オズボーンデザインのナイフはハンティングを視野に入れたものが多く、タクティカルなものは殆どありません。そんな中でコイツは別格で、ニムラヴァスと並んでベンチメイドでも最もタクティカルなナイフの一つになっています。
 特徴的なフォールスエッジ以外にも良い点がたくさんあります。ハンドルデザインは中程とエンドのふくらみのおかげで絶妙のグリップ感を得ることが出来、フィンガーグルーブのように持ち方を強制することもなく、ヒルトのキリオンもちょうどいい大きさで、ニムラヴァスと同じく手のひらによくフィットします。ソングホールはハンドルから露出せず、ハンドルエンドには何かを叩き割るときのためにタングが僅かに突出しています。このクラスでは当然のアメリカ製ですが、シースは中国製。
 ブレードの鋼材は154CM。ハンドル材はエアクラフトアルミ。エッジの長さは153mm、折り返してフォールスエッジが85mmあります。ブレードの厚みは5mmですが、幅が狭いために細長く見えます。長さは殆ど一緒のRAT-7と比べると、右上の写真のとおり華奢な印象さえ持ってしまいます。アウトドアナイフとしては無駄に長いブレードに手を添えることもできない鋭いフォールスエッジと、使い物にならない要素ばかりですが、ライフルと並べた際の銃との相性はバッチリですねえ。
 余談ですが、ベンチメイドとエマーソンは新品の状態でホントにエッジが鋭いです。今回の写真撮ってるときに指の先にポイントが当たったんですが、刺さった感じが全然しなかったので気にせずライフル置いてナイフ並べてしてたら、あちこちに血痕が見つかってティッシュで拭いてたら拭き取った量より明らかにティッシュが赤い(笑)。よく見たらティッシュ持ってる指からどんどん出血してる始末。こないだもエマーソンのフォルダー閉じるときに人差し指をエッジとハンドルで挟んで、軽く当たった程度だと思ってたらぱっくり切れてました。で、どちらにしても、切った時も切った後も、全然痛くないんですよ。鋭すぎて痛みを感じない、というマンガみたいな表現もあながちウソじゃないみたいですよ。




 ■ MoD Night Wing


 今回は高いだけでダメナイフっぽいなあと思いながらも買っちゃって、案の定、ハンドルデザインの品のなさに閉口しちゃった「プロフェッショナルによるプロフェッショナルのための」ナイフです。
 Masters of Defence、通称MoDのNightWingです。国内では3万円以下で売られてるところはなかなかない、高いナイフです。MoDのナイフはデザインがどれもイロモノくさくて(Unitedほどじゃないけど)、全然好きじゃないんですが、その中で唯一許せるデザインなのがこのNightWing(ノーマルスパイン)なわけです。それもそのはず、これデザインしたのは Allen Elishewitz というカスタムナイフメーカー(企業じゃなく職人さん)で、彼の代表作といえば・・・そうです、ベンチメイド#140、Nimravusですね。ブレード長はリカッソ除いて130mm、デザインはニムラヴァスをシャープにしたような感じのクリップポイントで、とってもいいのですが、ハンドルが駄目すぎて実にもったいない!  写真を見て貰えばわかるとおり、ハンドル中央が盛り上がっているデザインで、かなりダサくて多少違和感があるものの、まあ握りにくくはないです。しかしインレイよろしくわざわざモールド掘って貼り付けてあるゾウリムシ型の滑り止めシールがあまりにもショボい。質感はホームセンターで売ってる、玄関の軒先の段差に貼る滑り止めシールです。昔、錆びたUZIのグリップを誤魔化すために貼ったことがあるので、間違いありません。そのまんまです。これが素手だと滑り止めというより、目の粗い紙ヤスリなので、痛いんです。それに何より、これの裏のノリが甘くて、端っこがすぐ浮いてくる。ラバーシートか何かで作り直して、張り直そうと思いました。本気で。
 ラインナップには同じモデルでスパインにエッジがついてるものとセレーションがついてるものがあるんですが・・・。実用性はもとより求めちゃいませんが、それでもスパインにエッジってなんのために?って感じです。格好良くもないし。それならこの長めのスウェッジに刃つけて長めのフォールスエッジにした方がデザイン的にもすっきりしたと思うんですが・・・。まあ、何にせよ、ノーマルスパインのものがMoDで唯一カッコいいデザインなのですよ。
 ブレード鋼材はS30V。勿論タクティカルナイフとして必須条件のフルタング。このナイフでデザイン以外に感心した唯一の点が、スパインやチョイル、タングの縁が丸めてあるところです。S30VのHRCは60程度なので、たかがこんな処理でもバカにならないコストがかかるハズです。手に痛い滑り止めシールとは矛盾している点ですが・・・。ハンドルは強化ナイロンともG10とも言われてますが、メーカーサイトがダウンしているようで調べられません。ただG10独特のパサパサ感というかキシキシ感がなくて、肌触りからすると強化ナイロンだと思います。リカッソに空いてる二つの穴はなんなんでしょうね。滑り止めシールでショボくなったハンドルを外してパラコードを巻けるようにしてあるのかな、とも思いましたがこの湾曲したタングに巻くのはちょっとしんどいかなあ。
 あまりのダサさに写真は載っけられませんが、外箱のデザインはアメリカンなオモチャっぽくてビックリしました。しかもそのままディスプレイ台に加工できるというギミックもあって、そんなんで部屋に飾っておくと、日本では誰も3万円クラスのナイフだと信じてくれないこと間違いなしですよ。


因みにMoDのキャッチコピーは、「FOR PROFESSIONALS, BY PROFESSIONALS」。もう笑うしかないですよ。なを、左上写真のトロにゃんはオイルでスタンプしたもの。



 ■ 有名ブランドだけど安物な2本


 さて高級ナイフのブランドなのに、妙に安いというのがたまに見かけられます。今回はそんな中で思わず買っちゃった二つをご紹介します。
 最初はBuckがStriderとコラボレーションで作ったフォルダーのひとつ、Model 889OD SBMFです。Buckといえばアウトドア用のフォールディングナイフでは世界的にメジャーなブランドで、Striderといえばミリタリーカスタムナイフの分野では他の追従を許さないトップブランドです。Striderのナイフが欲しいけど、1本400ドルなんて出せないよう、という人々のためにStriderデザインでBuckが製造販売しているシリーズの一つになります。殆ど同じ形をしたStrider製造のフォルダーは300〜480ドルですが、このBuckのやつは84ドル(いずれもメーカーサイトの通販価格)となっています。鋼材もStrider製はS30VにG10ハンドルですが、Buckのは420HCと強化ナイロンと数ランク下の材料で作られています。420HCは440Cの下で炭素量の低いステンレス420の含有炭素量を多くしたもののようですが、HRCは57程度と440Cよりも若干低く、お世辞にも良い鋼材とは言えません。Buckのナイフではスタンダードな鋼材ですが、他の有名メーカーが使っているのは見たことがありません。驚いたのはブレードのブラックコーティングで、めちゃめちゃムラがあって汚い。買うときにお店で見せてもらって一番マシなものを貰いましたが、それでもこんなに表面加工が汚いナイフは見たことがないです。持って帰ってからオイルで表面を何度も拭いて随分キレイになりましたが、ホント酷い有様でした。エッジもかなり鈍く、何かに使ったわけでもないのにシャープナーかけました。一応ブレードにはStriderのエンブレムがあり、ハンドルにはBuckのロゴが入っています。アメリカ製だと表記されていますが、材料は全て中国製で組み立てのみ米国内で行っているようです。ナイロンハンドルの質感といい、ブレードの汚さといい、持った感じもStriderの雰囲気を味わうのは難しい出来で、正直Striderもこんな粗悪品にブランド名を貸すのをよく許したなあと思います。
 次はBenchmadeのネックナイフ、instigator(意味は「扇動者」)です。ネックナイフはカイデックス等の簡単なロックしかないようなシースで首から提げるものですが、このinstigatorはかなり大柄なので、スリングやベルトに挟むのが妥当でしょう。Benchmadeの普及品カテゴリになるRedクラスなので、定価は50ドルとベンチメイド製フィクスドブレードではたぶん最安値かと。鋼材はAUS8です。ネックナイフなのでハンドルはありません。ブレードはチゼルグラインドで、チゼル(たがね)のようにグラインドは片方にしかなくエッジは直線です。この価格帯のベンチメイド製品では当然のごとく、台湾製です。
 どちらも国内では8000円前後で販売されています。しかしBuck/Striderは全然オススメできない品質なので、どうしても欲しい場合は通販ではなく現物確認のできる店頭で選ばせて貰いましょう。instigatorはベンチメイドらしい堅実なナイフで、シンプルなカタチもグロックなんかと並べるとかなりしっくりくるんで、今まで買った安物のナイフの中ではベストです。


エッジ等の赤い色は フォトショップで色調補正 横に置いてあるRedクラスを示す真っ赤な外箱が写り込んでいるため。



 ■ Bladetech M.L.E.K.


 後でちらりと触れますが、ホーニング(研ぎ)もまともにできない人間にナイフについて語る資格なし、ということでバカでも研げるホーニングセットを買ったんですが、それ買うついでにMLEK買っちゃいました。本当はMLEK-Extremeのハーフセレーションが欲しかったんですが、なかなかない上に国内では3万円もするので、妥協しときました・・・。
 Bladetechといえば、カイデックスのホルスターでガンマニアにはお馴染みですねえ。といっても他のカイデックスホルスターよりもちょっと高いので、僕も欲しいと思いながらもひとつも持ってないんですが・・・。
 そんなメーカーなのでさぞタクティカルナイフもたくさん作ってるんだろうな、と思ってたら、タクティカルナイフのプロダクトは1つで3SKUのみ。MLEKとその廉価版MLEK-LiteとブラックコーティングのMLEK-Extreme。あとは全部(といっても大きく分けてあと3種類)ハンティングナイフとなっています。リードデザイナーの Tim Wegner が熱心なハンターなのがその原因のようです。で、今回のはそのMLEKです。
 MLEKとは「Military Law Enforcement Knives」の略で、軍及び法執行用のナイフって意味ですね。これまたガンマニアにはおなじみの言葉、Military and Law Enforcement use only 〜ってブレイディ法有効時のダブルカラムマガジンとかに刻印されてましたねえ。
 原型になっているのは Pro Hunters シリーズで、このナイフのポイントにスウェッジをつけて尖らせ、ブレードをやや幅広にしてあります。これはハンティングナイフではあまり想定されない「突き刺す」という用途に対応させるためです。
 刃長はエッジのみで86mm、ハンドルは123mm。ブレードの厚みは3.2mm。ブレードの鋼材は最近の高級ナイフで採用例が急増中の新型粉末鋼CPM-S30Vで、ハンドルはエマーソンと同じG10。右写真一番上は刻印のアップ。写真では影になってて見えませんが、サムホールの内側は仕上げがされておらず、かなり汚いです。特徴的なのはハンドルの方で、ライナーの上にハンドル材を重ねるというオーソドックスな方式ではなく、ハンドル材の内側にライナーを埋め込むようにして、横から見てもハンドル材しか見えないようになっていることです。このため、ハンドルがとても薄くなっています。右写真二つめはハンドルの厚みをEmersonのCommander(下)と比較したものです。ブレードの厚みはどちらも同じく3.2mmですが、ハンドルの厚みはMLEKが10.2mmでCommanderは13.0mmです。強いて例えるなら、MLEKはシングルカラムのガバ、CommanderはダブルカラムのCz75といった感じです。Commanderをはじめ、フォールディングナイフでハンドルが厚くて持ちにくいと感じたものは今までありませんが、もし携帯することを想定すればハンドルは薄いに超したことはありません。ただハンドルのデザインは工夫がなくてつまんないですね。ハンドルは全体的にクセのない丸みを帯びたデザインで、ヒルト(キリオン)が低く、人差し指の保護が頼りないですが、チョイルにもグルーブがあり、様々な持ち方に対応できるあたり、出自がハンティングナイフにあることを主張しています。また右の比較写真でもわかるようにオープン時にはハンドル内部はネジを覆う円筒形のスペーサー以外に何もなく、全く塞がっていないためメンテナンスの容易さをアピールしていますが、頑丈さというか堅牢さではハンドル自体の薄さも相まって決して万全とは言えません。タクティカルナイフは都市災害時におけるサバイバルナイフの役割もあり、ハンドルでガラスを割る等の用途も考えられる以上、ハンドルの強度もそれなりに重要だと思うんですが・・・。
 さて、最初に触れましたホーニングの件ですが、中古で買った方のCommenderを段ボールの開梱や山奥行くとき持ってって変な木の実切ったりしてたら、どんどん刃が鈍ってきて棒状のダイヤモンドシャープナーではもはや対応できなくなってましたので、自称アウトドア詩人の友人にホーニングを頼んだところ、ホーニングもまともにできない人間は2万円のナイフ買うより100円ショップのゴミナイフ200本買っとけとか屈辱的な言葉を浴びせられ、じゃあ自分でやってみるわと砥石借りてその場で頑張ったんですが、いやあ、全然刃がつきませんでした。後日あれこれ探してみつけたのが、スパイダルコのTriangle Sharpmaker というやつです。使ってみると値段も手頃で誰でもカンタンという評判は本当でした。要はホーニングの際に砥石とエッジの角度を適切かつ一定にするのが難しいわけで、砥石をその適切な角度に傾けておけばエッジは垂直に摺り下ろすだけという理屈ですね。僕のCommenderの場合、新品の状態を100とすればこれで95くらいまでは戻せました。ちょっと感動しましたよ。使い方解説のDVDが付属してるんですが、当然英語のみで字幕は一切なし(リージョン0なのがせめてもの救い)。言葉は全部わからなくても言いたいことはわかるんで一通り見てましたら、ホローグラインドやフラットグラインドとか説明してるところで、「イッツジャパニーズほにゃららハマグリバー」とか言ってて蛤刃ってそのまま英語で通じるんだとビックリしましたよ。




 ■ Ontario RAT-7


 お、初めてシースナイフ出てきましたよ。しかもオンタリオRAT-7。蝶々の2本はまだかいな、というご意見いただきましたが、もうちょっと待ってください。ご意見といえば、ここばかりかなりの頻度で更新されてますが、僕自身かなりヒマなのと、意外にも評判がいいみたいなので、ついつい・・・。おまえのご託は正直どうでもいいから写真をデカくもっと載っけろという大変ありがたいご意見も頂戴いたしましたので、前回の記事は大幅に書き直しておきました・・・。
 オンタリオはSPEC-Plusシリーズが米軍制式採用なので、ガンマニアにも名の知れたメーカーです。ただ個人的に、そのシリーズはカタチが100%アーミーナイフという感じで全然好きになれないんですねえ・・・。ダブルヒルトっって品がない。やっぱりフルタングでハンドルは左右から挟むっていうのがいいと思いません?
 RATっていうのは Randall's Adventure&Training の略で、ランドールさんていうミリタリーなおっちゃんが南米ペルーの山奥でやってる、訓練施設のことだそうです。そのRATとコラボレーションでオンタリオが作ったのがこのシリーズで、ブレードの長さ等によって数種類のラインナップになっています。で、コレはその中でもたぶん2番目に長いブレードのRAT-7です。標準的なブレード長はRAT-5やTAK-1の12cmほどですが、ブレード幅があるので長い方がバランスがいいなあと思い、RAT-7を買ってみました。リカッソを除くブレード長は160mm。RATシリーズ最長のRTAKは250mmくらいですが、そこまでいくと長すぎてバランスが悪いんで、このサイズが限界ですねえ。(RTAKって Randall's Training&Adventure Knife の略だったハズ・・・。じゃRATじゃなくてホントはRTAなの??)
 ブレードの鋼材は高炭素鋼、1095ハイカーボンスチール。個人的かつ不完全な調査によると(なんじゃそりゃ)数値の大きい方が硬く耐摩耗性に優れるらしいですが、欠けやすくなるためエッジの角度を大きめにし、ブレードに厚みを持たせる必要があり、また硬度が高くてホーニング(研ぎ)が難しいので一般的なナイフには使用されません。耐摩耗性が高いので、いちいち研いでられないような用途、ペルーの山奥でアドベンチャーなトレーニングをするような場合は向いていると言えるでしょう。1055や1095ハイカーボンスチールは一般的にマシェット(マシェーテ;藪を切り開くための60〜90cmのブレード)によく使われる鋼材です。D2と同じくステンレスじゃないので、錆や酸には弱いようです。オンタリオのサイト見てみると、RAT-7にもD2バージョンがあるようですね(D2の方にはブレードにRATのゲリラみたいなトライアングルロゴ入ってますね。)ハンドル材はマイカルタ。マイカルタは樹脂と他素材を高圧で固めたもので、他素材として何を使うかで色や質感に大きな差が出ます。このRAT-7のはキャンバスマイカルタで、麻の布地がベースのため表面は粗めで手が滑りにくくなっています。付属のナイロンシースは特徴のない作りです。
 シースナイフの醍醐味(?)といえばフルタング。ブレードの鋼材がそのままハンドルエンドまで形作る構造で、高い強度を得ることができます。反面重量が嵩むわけですが、シースナイフはデカいので、フォールディングナイフと違って携帯性と軽量化よりも、その両方は諦めて強度とメンテナンスの容易さを重視するわけです。特にこのRAT-7くらいになるとマシェットのような使い方から、重量を生かして小枝から小さな薪を作ったり、動物の解体時には細い骨なら叩き切ることもでき、泥や血で汚れたらハンドル外して丸洗いという手入れの簡単さ、フォールディングナイフには真似のできないヘビーデューティなアウトドアナイフというよりはもはやサバイバルナイフですね。ま、こちとら鉄砲と並べて眺めて楽しむだけですが。


エッジはベンチメイドなどに比べると鈍め。用途や材質からすると妥当だけど・・・。リカッソにある刻印のとおり勿論米国製。気分の問題ですが、中国や台湾製のナイフはもう欲しくない。




 ■ Emerson CQC-8-BTS CQC-15-BTS CQC-11-SF


CQC-11。サテンフィニッシュでセレーションなし。リカーブドなブレードは写真で見るより実際は表面がザラついており、派手に反射したりはしない。


 またエマーソンです。CQC-8と15のBTS、そして11のSFですね。11と15は海外通販で買ったやつです。
 エマーソンにはCQCシリーズというものがありまして、現在エマーソンのサイトではCQC-7から15まで9以外が確認できます。元々はカスタムナイフのラインだったようで、検索したらCQC-4から6と9はEmerson社長直々の手によるカスタムナイフとして紹介されています。現在Emersonはカスタムの受注を停止しているようなので、プレミアなお値段がついているようです。
 で、このシリーズの中で僕の琴線にビシビシ触れたのが、ここにある8と11と15です。エマーソンのサイトとかで各製品の写真を見てもらえばわかると思いますが、他はちょっと好みじゃないんですよねえ。7はハンドルの形状が気に食わず、10はサムホールが気に食わず、12はAKのバヨネットなので意味がなく、13はボウイなブレードが気に食わず、14は小さいんで格好良くない、という塩梅でして・・・(12だけなんで値段高いんでしょう?)。エマーソンでは少数派のリカーブドではない7と8には元々Wave(例のフック)なしだったようですが、今はWaveありのほうしか製造していないようです。今回のCQC-8は勿論Waveありで、細身のブレードと鋭いポイントが特徴です。ハンドル自体も他のエマーソンの製品よりは若干薄くなっています。CQC-15は現在Emersonの最新作で、国内で取り扱っているお店はかなり少ないようです。ドロップポイントとタントの中間的なポイントを持ち、ハンドルの形状と合わせて、CQCシリーズでは一番好みのスタイルです。CQC-11は典型的なドロップポイントでコマンダーをおとなしいカタチにしたようなブレードです。写真でみたとき、BTS(ブレードが黒くて波刃付き)よりもSF(サテンフィニッシュ波刃なし)のほうが格好良く見えたので、らしからぬチョイスをしてみました。シルバーなエマーソンは個人的にはちょっと新鮮かも。できればサムスタッドもシルバーにして欲しかった・・・。どれも材質はCommanderと同じく、154CMのブレードとG-10のハンドルとエアクラフトアルミのライナーです。ブレードの長さも殆ど同じで、面倒なので計ってませんが(!)、CQC-11が他より若干長いです。
 右写真、上は、Commander、CQC-8、CQC-15、CQC-11、の順に並べての比較、下は折りたたんだ状態ですが順番はバラバラ。どれがどれかクイズ気分で見ちゃってください。
 これでエマーソンで欲しかったナイフは手元に揃ったことになります。他は安かったりすれば衝動的に買うかもしれませんが、エマーソンはこれで一段落、と。今欲しいフォールディングナイフは、BladetechのMLEKですね。国内ではこれのセレーションモデルが見あたらないので、ちょっと困ってるんですよねえ・・・。今回唯一利用できた海外通販のところでは、Bladetech扱ってないし・・・。ま、これも気長に探すことにします。


CQC-8。他と比べてスリムというか華奢というか・・・。ポイントがかなり鋭く、コマンダーと違って「刺す」ことを重視してる感じ。人差し指のグルーブも一番深いし。


CQC-15。タントポイントをここまでスマートにまとめたブレードは他にはないと思う。このナイフが欲しいがために個人輸入まで始めた記念すべき1本(笑)。




 ■ スパイダルコ バード三つ


 有名どころなのに、「最初に」の代表的ナイフメーカーで漏れてた(というよりタクティカルっぽいナイフがないので外してた)もののひとつにスパイダルコ(Spyderco)があります。今回は安さと、洗練されつつもエマーソンと対極を為すデザインに食指が動いてしまい、クモのロゴも入ってない安物を3本ご紹介します。
 スパイダルコはアウトドアやレスキューナイフではたいへん有名なメーカーです。ガーバーやバックよりはタクティカル寄りなデザインではありますが、ブレードに空いたサムホール(片手でブレードをオープンする際に親指を当てる穴)がまん丸で、リカッソからピボットあたりが細身で、個人的に好きになれないんですよねえ。そんなスパイダルコの新しいプロダクトラインがバード(Byrd)シリーズで、基本デザインはブレードもハンドルも銀ピカというものです。で、これがスパイダルコ製品でも比較的好みなデザインだなあ、と思っていたら、何度か利用している通販のお店で03と04の2本セットが5000円だというので、買ってしまいました。レンチ付きなどの特殊モデルを除き、オールシルバーのもので通常5000円前後で販売されています。日本国内でも取り扱いは多く、入手は容易です。またスパイダルコ製品はOEMとして日本の刃物メーカーが一部製造しているようですが、この安物シリーズは須く中国製です。
 スパイダルコはこのナイフを独立したByrdKnifeブランドで販売したいらしく、ブレードにもハンドルにもどこにもクモのロゴはおろかSpydercoの文字もなしです。BY07の外箱にも、表に Designed by Spyderco 裏には A division of Spyderco とそれぞれ小さく印刷されているだけで、ここにもクモのロゴはなしです。エマーソンのハードウェアナイフシリーズのような位置づけにしたいようです。ちなみにエマーソンのハードウェアは1万円前後で販売されていますが、日本の関にあるメーカーが作ってるようです。
 最初の写真、上から、BY03"Cara Cara"、BY04"Meadowlark"、BY07"Crossbill"です。実はByrdでも好みのデザインだと感じたのは、BY05"Flight"と07だったんです。07はたまたま立ち寄ったお店で見つけましたが、05はオーソドックスなドロップポイントのデザインで、そのうち見つけたら買います(わざわざこれだけ通販で頼むほどではないかな、と)。
 同シリーズには他にBY06"Pelican"、BY08"Raven"、BY09"Crow"、BY10"Robin"、BY11"Finch"、等があります。全部写真付きでスパイダルコのサイトにカタログありますので、一度ご覧になってください。なるほど05が・・・と思っていただければ、アナタもナイフの趣味は悪い方ということです(笑)。スパイダルコといえばまん丸のサムホールが特徴でしたが、このByrdは勾玉みたいな形で、ちょうどブレードテックにそっくりです。だから割とかっこよく見えるんでしょうね。シリーズはそれぞれ鳥の名前がつけられてますが、ペリカン、カケス、カラス、フィンチくらいしかわかりません(笑)。フィンチはダーウィンの進化論絡みで有名な鳥ですね。他はわかんないので、ちょっと調べてみました。カラカラは南アメリカのハヤブサで、猛禽類のくせに屍肉を啄むらしいです。メドウラークは和名ではマキバドリいって、アメリカ全土でよく見かける小鳥だそうです。クロスビルはイスカのことで、ユーラシアに広く分布する赤い色をしたスズメです。
 07のようなブレードが湾曲したデザインをカランビットと呼びます。07はちょうどイスカのあの特徴的な嘴が名の由来でしょう。このByrdのような安物の場合、カランビットと呼ぶのは憚られますが、このデザインはコンバットナイフの中でも純粋なセルフディフェンス用、つまりは対人戦闘用として位置づけられているものになります。ククリやペルシアンなどと同じで、ある地方や民族が伝統的に使用していたナイフのデザインをベースに、ひとつのカテゴリーとなったものの一つです。段ボールの梱包を解くのに便利なデザインだそうですが、基本的にものを切るには適していない形状をしており、これは格闘時に相手へのダメージを大きくする以外に何の役にも立ちません。カランビットはエマーソンのようなタクティカルナイフを専門にするメーカーなら勿論、どう見ても子供向けの粗悪なゴミナイフの中にも見かけることがあります。また似たような湾曲したブレードでも、ポイントを丸く落とし(刺さらないように)エッジがほぼ全面セレーションのものは、ロープやベルトの切断に絶大な効果があり、レスキューナイフという別カテゴリーになります。スパイダルコのレスキューナイフはワンハンドオープンが容易で軽量なフォルダーなので登山家に愛用者が多いと聞きます。
 ハンドル部の仕上げは中国製の安物とは思えないほどキレイです。勿論ツルツルだし、ライナーがないので内側のフチが鋭く、おまけに重量は無駄に重い。タクティカルナイフじゃないんで、タクティカルナイフに要求されるあれやこれやはどれも満たしていませんが、安物のくせに素人目にはそうは見えないという魔法がかかっています。ロットの差異だと思いますが、購入した03と04のセットはどちらも白箱、07は気持ち悪い鳥の絵がいっぱい書かれたBY07専用の箱でした。安いのに意外と見栄えがいいのでプレゼント向きですが、外箱に安物ぽさがベチョベチョ滲み出ているので注意しましょう。ちなみに今まで買ったメーカーの中で外箱の見栄えが突出していいのは、やはりベンチメイドでした。
 機構はロックバック。エマーソンのようなライナーロックではなく、ハンドル背面にあるレバーでロックするもので、昔からアウトドアナイフはこの形式が一般的です。正しくはバックロックというようです。レバーの位置は製品によってまちまちですが、バック(Buck:老舗ナイフメーカー)のようにハンドル後端にあるものが多いようです(だからバックロックっていうのかな?ナゾ)。このByrdはハンドル中程にあり、ハンドルを握り込むとロックが外れるというトラブルのために倦厭される位置ですが、レバーにくぼみを設けることでこれを防いでいると、スパイダルコは説明しています。尤もブレードを閉じる際にはこの位置にある方がずっと閉じやすく安全です。ライナーロックより部品点数が増加するため、重量が増え、軸のある回転部も増えるのでタクティカルナイフには使えない機構ですが、確実なロックと解除方法のわかりやすさ故にやはりアウトドアナイフには最適です。
 ブレードの鋼材は、8Cr13MoVとなっています。聞き慣れない素材ですので、ちょっと検索とかしてみましたが、正体不明です。カーボンスチール(炭素鋼)にクローム、モリブデン、バナジウムを含有した合金工具鋼であることは間違いなさそうですが、その数字は含有の割合を示しているのではないかと推測します。ちなみに、鉄に炭素を添加すると硬度が増し、クロームを添加すると焼き入れの際に空冷で十分な強度を得られるため生産性が向上し、モリブデンは粘りが強くなるため刃が欠けにくくなり、バナジウムは耐摩耗性を高める効果があるようです。スパイダルコのオンラインカタログではこの合金か440Cを使用しているとのことなので、品質や特性としては440Cと同程度だと見てよさそうです。ただステンレスではないので、錆には弱そうですねえ・・・(ちなみに錆や酸に対する耐腐食性はナイフ鋼材の中では440Cが圧倒的に高いです)。
 右上の写真を上から軽く説明しておきます。一番上はロックバック部分ですが、まるで削り出しのように継ぎ目が見えず、可動部でさえもきちっと収まっており、中国製でもまともなメーカーが作るといいものが作れるということですかねえ。その下が07のカランビットスタイルのブレード。本来のカランビットはもうちょっと大きく湾曲しています。3番目はそれぞれをクローズした状態。07はエッジがギリギリハンドルに隠れているという程度でかさばる上に安全性に問題がありそうです。一番下は03とエマーソンのコマンダーとの比較。大きさは殆ど同じですね。アウトドアナイフとタクティカルナイフのデザイン上の相違点がよくわかってもらえると思います。



右端に写ってるのがBuckのダイヤモンドシャープナー。Buckのナイフも一応持ってますよ(もらい物ですが)。




 ■ エマーソン コマンダー


 エマーソンのコマンダーです。これは初めて買ったまともなメーカーのまともなタクティカルナイフだったりします。そしてこいつのスタイルに惚れて、本格的にこの趣味に凝り出したと言ってもいいです。ガンマニアにとってはコマンダーといえば4.3インチの(以下略)。
 Emerson Knivesはベンチメイド社のデザイナーだったアーネスト・エマーソンが1997年に独立して作ったメーカーで、タクティカルナイフというジャンルを確立した上に常に牽引してきたスゴイところです。元特殊部隊員でマッチョマンな社長さんは、ナイフを使った護身術のセミナーを開催したり、トレーニング用のDVD作ったりしてます。彼の自らの経験による理論に裏打ちされた、ナイフコンバットのためのデザインはタクティカルナイフの粋と言える格好良さがあって、たまりませんなあ。フィクスドブレードは一部の特殊モデルのみで、殆どの製品がフォールディングナイフです。
 数々の優れたナイフを発売していますが、その中でも最初期に発売されながらも現在に至るまでエマーソンといえばコレというほど売れ続けている代表作が、このコマンダーとなります。エマーソンではブレードのスタイルによって製品名の後にBT(ブラックテフロン)、BTS(ブラックテフロン+セレーション)、SF(サテンフィニッシュ)、SFS(サテンフィニッシュ+セレーション)という4種類の分類がつけられることが多く、当然ながら最もタクティカルぽくて人気があるのが、BTSとなります。
 ブレードの鋼材は154CM。価格と特性において最もバランスのとれたナイフ用鋼材のひとつですね。440Cよりも硬度が高いため、和包丁用の砥石ではなかなか刃がつかないようです。くどいようですが、鑑賞用なので、砥石とか気にしないですけどね。ハンドルはグラスファイバー入りのエポキシ樹脂の一種であるG-10。ABS等のプラスチック樹脂よりも軽量で摩耗しにくい特殊樹脂です。一般的にまともなタクティカルナイフのハンドルに用いられる樹脂はこのエポキシ系のG-10かナイロン系のザイテルが多いです。どうして樹脂のハンドルにするかというと、寒冷地での使用においてアルミを含む金属のハンドルではグローブをしていても凍結して張り付くことがあり、木製のハンドルは経年劣化に弱く温度差によるひび割れや腐食があるためです。ただ強化樹脂であっても強度は絶対的に不足するうえ、ブレード固定の板バネも必要なため、ライナーという金属板がハンドルの内側にあって二重構造となっています。このライナーは航空機用素材、エアクラフトアルミです。エアクラフトアルミといっても様々ありますが、詳細な型番等は公開されていないようです。でもこれ、安物のナイフと違ってすごいエアクラフトアルミ使ってますよ。
 実はこのコマンダー、2本持ってるんですよ。2本目は中古で安く売ってたのでついつい買っちゃったもので、外箱の傷み以外には目立ったキズがなかったのですが、ブレードの開閉が緩すぎるのと、オープンでロックされた時にほんの僅かながら上下に遊びがありました。修繕すべく分解して、結果完璧に仕上がってますが、このときに驚いたのがライナーのエアクラフトアルミです。要はこの板バネの起きる角度が浅すぎるために、オープン時に遊びがあるわけで、板バネをぐいと起こして曲げてクセをつけてやると改善することは明らかです。分解して取り出すと、これホンマに金属かいなと疑うほど軽く、模型用のプラ板よりも軽く、G-10のハンドルとあわせて厚紙でできてるんじゃないかと思うほどです。それでいて、ラジオペンチで板バネを摘んで思い切り引き起こしましたが、折れるどころか曲がりもせず、それどころかクセをつけるのも一苦労という塩梅で、空を舞う翼とはこれほどのものかと改めて感心した次第です。
 デザインはなんとも実戦的で、飾りのないシンプルなスタイルですが、そのシンプルさが武骨ながらスマートというバランスを生み出しており、飽きのこない、それでいて非の打ち所のない頼れるウェポンとしての存在感を内包する傑作たらしめていると言えます。典型的なドロップポイントよりやや大きく湾曲したエッジは、格闘時に相手の四肢の内側にある動脈を切断するために理想的とされ、タクティカルナイフの中でもコンバットフォルダーと呼ばれる製品にはよく見られますが、先鞭はこのコマンダーだったようです。リカッソのバック側にあるのがエマーソンの最大の特徴であるフック、通称「WAVE」です。ポケット等から勢いよく引き抜けばこのフックが引っかかり、ブレイド開いてロックされた状態で取り出せるため、オートマチック(自動開刃)やスイッチブレード(飛び出し刃)よりも早く戦闘態勢に入れるというデザインだそうです。その先にあるサムスタッドは円盤状でバックにネジ止めというまた独特なスタイルです。エマーソンのデザインの中では唯一カッコいいとは思えないところですが、一般的なサムスタッドに比べてグローブをした指でもブレードのオープンが容易であることは一目瞭然です。またブレードに最大限の強度を持たせるために横から穴を貫通させたくなかったのかなと思いますが、このサムスタッドの形状についての説明がエマーソンのサイト等ではちょっと見あたらないので憶測止まりです。ハンドルのデザインもとてもよく、通常のナイフでは突き出したときに握っている手が滑って自分の指の内側を切ることが多く、それを防止するためハンドルの人差し指があたるところは大きく抉られており、これはフックを使わずにサムスタッドでブレードをオープンする際の操作性の向上にも役立っています。
 デザインの点で余談ですが、僕は他にも趣味として熱帯魚を飼っています。これは鉄砲と同じくらい長い趣味で20年以上続けてますが、子供の頃から熱帯魚飼ってると誰もが通る道として古代魚にハマった時期がありました。中学生の頃だったかな、安いシルバーアロワナを40cmほどまで育てたとき、エアポンプの故障に気づかずに死なせてしまうという悲劇をきっかけにコリドラス好きに転向してしまったのですが、そのときに一緒に飼っていたのが安い古代魚のもうひとつの定番、ナイフフィッシュです。名前の由来は形がナイフみたいだから、という図鑑の説明に当時は全く納得できませんでした。当時の僕の中でのナイフのイメージというと、とあるゲームで、上半身裸で吊りベルトだけのマッチョな市長が、拾うやいなやモヒカンに投げつけるアレが代表的で、相方見習えよ投げずに普通に使えよこの筋肉バカ、という誰もが抱く疑問のアレはアーミーナイフというか大型のボウイナイフなので、どう見てもナイフフィッシュの形にはなりませんね。今Wikipediaで調べて知ったんですが、別名フェザーバック、天使の翼っていうらしいですよ、あのガンメタルでギョロ目でナマズじゃないくせにナギナタナマズなんて和名つけられている肉食魚が。大きく話題それましたが、エマーソンのコマンダーをしげしげと見てて気づいたのは、なるほどあれは確かにナイフフィッシュだ、ということです。フックは背鰭だし、波打つ腹から尾まで繋がった鰭はセレーションの入ったエッジだし。
 以前、特に欲しいナイフは今のところない、とか言ってましたが、嘘です。エマーソンのナイフで欲しいものが少なくとも二つあります。日本では取り扱いが少なく、あってもぼったくりもいいところなので、海外から個人輸入を画策しています。すでにメール等でいくつかコンタクトとってるんですが、国際注文を受け付けると明記してあるところでも、注文フォームに不備があったりして、問い合わせても原因を調査して返答するという返信があってからずっと音沙汰なしとかなので、こりゃ長丁場を覚悟しないと・・・といった感じです。例えばエマーソンの最新モデルCQC-15の場合、エマーソンのサイトでは220ドル程度の定価となっていますが、専門店では150〜180ドル前後で販売されています。これを日本で通販やってるお店を調べると32000〜35000円、ドルに直すと280ドル程度となります。国際送料が80ドル前後だと考えると、2本以上まとめて買うなら個人輸入の方が関税まで考えても安くすみそうなので、引き続き挑戦してみます。上手くいけば、ここでご紹介できると思います。


上写真左より:実戦的なカーブのエッジ、強靱かつ軽量なエアクラフトアルミのライナー、特徴的なバックのフックとサムスタッド






 ■ ガンメーカー3社


 さて前回もさらりと触れましたが、ナイフに興味を持ったきっかけは海外旅行の記念に買ってきたColtのナイフでした。おみやげに数人分買ってきてたので、そういやもらったなあって人もいると思います(笑)。ガンメーカーの本物が手元にあると思うと、なんだかうれしくて、ガンラックのガバの横に刃を開いて置いてみたら結構サマになってるやんかー、で、ナイフも案外いいかも、と思うようになったわけです。
  → 改めてベレッタとブローニングを含めて再評価しました。こちらをご覧ください。





 ■ 最初に


 ナイフについては、正直あまり好きではなかったんですが、ちょうど1年前にグアムに旅行に行った時、記念に買ったColtのナイフから、ちょっとこの道に入りかけているわけです。
 20年来のガンマニア歴に比べて、まだまだ浅く知識も全然ないわけですが、何卒おつきあいくださいませ。とりあえず、1年目、手元にあるナイフは7本。機会を見て、一つずつご紹介できれば、と思っております。気に入ったデザインのものを見つければ買っていくつもりですが、現在コレ買うという予定はありませんねえ。漠然とシースナイフをあと1〜2本欲しいかな(1本しか持ってないんで)、と思う程度で。そういえば、ベンチメイドの新作予約してあったんだっけ。今月中には手に入ると思います。
 芸術的とか希少価値とかそんなんは例のごとく興味ありません。キャンピングやハンティングといったワイルドな趣味もありません(実際にそれらを趣味にしていても、実際はナイフの出番なんて殆どないそうです)。要は、鉄砲と並べて似合うアイテムとしての恰好よさだけが興味の対象な訳ですが、個人的嗜好からも自ずからタクティカルなものが中心になってます。
 簡単に今のところ把握している簡単な基礎知識について書いておきます。
 まず、エアガンと違って本物です。それに当然ながらめちゃくちゃ鋭い刃がついているので、取り扱いを間違えれば怪我やそれ以上の問題への原因となりかねません。例のごとく銃刀法で規制されているのですが、その範疇にナイフが含まれるかどうかは曖昧なようです。銃刀法では「刃渡り15cm以上の刀・剣・槍・長刀」は特別な理由及び許可がない限り所持が禁止されていますが、ナイフは定義されておらず、過去の判例によって一般的には30cm以上は違法と判断されるようです。ちなみに刃渡りとは、日本刀のような反り返った刀身の長さを表す言葉で、刃の先端と峰(刀身の刃がついていないほう)の根本の直線距離のことだそうです。ナイフ等の場合は単純にブレードの先端(ポイント)からブレードとハンドルの境界(ヒルト)までの直線距離になるようです。
 同じくもうひとつ銃刀法で大事な条項は、「業務等の正当な理由がない限り刃体の長さが6cm以上の刃物は携帯禁止」というものです。折りたたみナイフは対象外とされているとの話も聞きますが、一般的なフォールディングナイフが例外となるのかあやふやです。とはいえ、タクティカルナイフなんて、日本では観賞用以外用途があるわけでもなし、お店で買って持って帰ったら、ガンラックや飾り棚にしまっておきましょう。
 タクティカルナイフには形態によって大きく2種類に分かれます。ひとつは折りたたんで簡単に携帯ができるもので、フォールディングナイフと呼ばれています。閉じた状態ではブレードはハンドル内に収まり、かさばらず安全に持ち運びができます。開いた状態でブレードをロックする機構は殆どのものがハンドルと一体になった板バネとなっていますが、一部には片手で安全簡単にロック解除ができるような特殊なものもあります(ちなみにまたもや銃刀法で、自動で刃が開く機能を持つフォールディングナイフは飛び出しナイフと同じく所持禁止になっています)。一方、折りたたむ仕組みを持たずに鞘(シース)に入れて持ち運ぶナイフをシースナイフあるいはフィクスドブレードと呼びます。中空になったハンドル内にサバイバルに必要な釣り用具や医療用具が入っているものもあるようです。一般的にフォールディングナイフは折りたたむという機構からブレードが短く、概ね6〜8cmとなり10cmを超えるものは通常ありません(10cmを超えるとハンドルも長くしないと折りたたんで収納できないので、全体の大きさが非実用的になってしまう)。逆にシースナイフは10cm以上のものが殆どで、12〜15cmが一般的なようです。なを、タクティカルナイフの範疇を外れればハンティングナイフやバタフライナイフ等この二つに当てはまらない形状のものも数多くあります。
 刃の材料、即ち鋼材については現在勉強中です。といっても、何かに使うわけでもなし、あまり気にしても仕方がないところです。一般的にはとても錆びにくいが持ちはあまりよくないステンレス440CとAUS-8(8A)、錆びにくく持ちもいいバランスのとれた154CM、さらに切れはよくなるが錆には弱くなるD2スチールとハイカーボンスチール、高価で採用例は少ないながらも理想的なナイフ鋼材ATS-34とATS-55、といったものがあるようです。鋼材についてはネットで検索すると特徴一覧や成分表が比較的簡単に見つかりますので、興味のある方は検索して参照してください。観賞用と割り切っているなら、鋼材は特にこだわらなくてもいいと思いますが、雰囲気や気分もこういうものには必要ですからねえ・・・。D2やハイカーボンは値段が高い割に錆びやすいらしいので、エアガンのスチール製外装パーツの錆に悩まされている身としては避けようと思っています。ノーブランドの3000円以下で売られている粗悪なミリタリーナイフには440Aどころか420とか、AUS-8の下であるAUS-6(6A)が使われていることが多いようです。







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